お鬼畜なエブリデイ
唇と言ったのに、彼は聞こえぬ素振りで唇だけを外したキスをする。
もうやめて欲しいと懇願しても彼はベッドの中から離してくれず、何度も壊れる寸前を経験した。
泣きながら。別れようと何度も。
けれどその度に、
優しく髪を撫でる指に、また。
優しい人は好き。好きな人が優しいなら尚幸せで。
意地悪な人は嫌い。なのに、
「嘘はいけませんね」
「嘘じゃない」
「その割に悦んで、」
「ないないない! 絶対有り得ないッ」
好きな人が意地悪なら。
最悪、最低、別れようと思うのに、何故。
「絶対などと言う言葉を無闇に使っては、」
「うっさい」
「絶対、つまり100%なんて言葉は、それこそ有り得ない」
「説教言う奴嫌い」
「へぇ、」
嘘吐き呼ばわりは酷い。
お説教は嫌い。聞くなら愛の言葉だけがいい。
嫌いだけど好き、好きなのに、
嫌い、に。なってしまう。
「嫌いな相手に抱かれて、よくあそこまで喘げましたね」
「っ!」
すぐに、そんな意地悪が。
「それも四発も。野球ならフォアボールですよ」
「き…、」
さっきまであんなに優しくキスしてくれたのに。
髪を撫でてくれて。
いいこいいこって、撫でてくれて。
愛してるって。
可愛いって。
離したくないって。
言ったのに。
言ったのに。言ったのに。
「貴方がピッチャーなら負けますね、一回表でコールド負けでしょうねぇ」
意地悪な人。
「嫌い…! お前なんて、嫌いだっ!」
泣くもんかって、思うのに。
馬鹿にされるって、知ってるのに。
「…また、そう不貞腐れるつもりですか」
ほら、呆れられるって、だから我慢しようって、こんなに。
こんなにこんなに必死に、耐えてるのに。
「っ、ふぇ…、」
ぽろって、1個零れるともう、駄目。
「っく、う、ぇん」
「泣けば済むと?」
ウザイと表情が伝えてくる。
本当に、真剣に別れようと何度も考えて考えて。
全部が全部、嫌いになれたなら楽なのに。
どうしてこんなに、好きなんだろう。自分ばかり。
「ほら」
名前を呼ぶ声が好き。でも意地悪は悲しい。
「泣く事で黙り込む、それは貴方の悪い癖ですよ」
「も、俺が邪魔に、なったな、らぁ…っ、捨てればっ、いいだろぉ!」
「それが本意ですか」
「何がっ!」
「貴方の」
「俺の、じゃなくてお前の、だろ! 俺なんか要らない癖に!」
好きの感情が暴走すると卑屈になる。こんな事が言いたいのではなくて、言葉をもっと。
もっともっと、上手に使えたなら、
「いつ、私がそんな戯れ言を言いました?」
「毎日! 意地悪ばっかする」
「貴方が素直じゃないからですよ。私はいつも貴方を離したくないと、実際に伝えていますね」
「それが何だ」
「けれどすぐに私から逃げようとする。寸前まで愛し合っていても、今の様に」
「それは、俺がやめてって言ってもやめてくんねーから、」
「私は、」
優しい指が。髪を、撫でて。
「貴方を愛しているのです」
たった一言で、また。
流される様に、恋をした。
PCサイトのものを改編。独占欲溺愛攻め×溺愛受け、結局ラブラブ痴話喧嘩。
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