正直、なんで好きになったのか分からない。
こんなことを言い出したらどんな目に遭わされるか分かったものじゃないから、もちろん口には出さないけれど。
まぁ、外見がカッコいいのは認める。そりゃあもう、嫌みなくらいに。
いつもサングラスをかけっぱなしだけれど、それでもはっきり分かるくらいに彼の顔は端正で。無駄に背は高いけれど、筋骨隆々…というか、襟からのぞいたたくましい胸板を見ると、やっぱり彼は大人の男だと認識せざるを得ない。
服の趣味が多少残念かもしれないが、ある意味で彼だから着こなせるとも言える。……撤回、奇抜なのは絶対たしか。ムリヤリ褒め称えてどうするのだ。
この(奇抜な)外見、もとい外面と、王下七武海という地位に目が眩みすぎて、うっかり惚れる女は星の数。確信犯となれば最早数え切れまい。
…いずれにせよ、すぐ逃げ出すか、或いはいなくなるかのどちらかに終わるのが大抵なのだが。
「なにジロジロ眺めてやがる」
「別に……貴方のほうがたまたま私の視界に入ってるだけよ」
「言うようになったじゃねェか、このおれに! フッフッフ!」
独特の嗤い。傲岸不遜極まりない態度。とりあえず他人は自分の小道具。
ドンキホーテ・ドフラミンゴという奴はそういう男。
「ちょっと……能力は使わないでっていつも言ってる、のにっ!」
「素直じゃねェ女は損だぜ? マリア」
マリアの体は勝手にソファから立ち上がり、実に楽しげに嗤うドフラミンゴの膝の上に乗ってしまう。
何の能力なのかは知らないし、知りたいともマリアは思わないが(想像するに代償がでかすぎる)、まるで誘う女のようにしなだれかかる自分の体が呪わしかった。
「えらく大胆じゃねェか、フフッ!!」
「貴方が勝手にやらせてるだけでしょ…!!」
悪態をついてみても、触れ合う肌の熱さに胸が疼いた。
なんで好きになったのか真面目に考えていたはずが、肉体のほうは無条件に彼を求めてやまないなんて。
余計に腹が立って、唯一自由が利く口元で、彼の首に軽く噛みついてやった。
「いい度胸だなァ? マリア……」
引き剥がされ、文字通りかぶりつくような口づけが降ってくる。
鳥みたいな奴のくせに……こういうときはまるで猛獣。
呼吸を奪い尽くすような唇と乱暴な舌使いに、このまま酔いしれてしまいたくなったが、さっきまでの迷いが鎌首をもたげて、ぎりぎり踏みとどまる。
このままでは……まるで体だけの、男と女のようで。
体の自由は利くようになっていたけれど、ドフラミンゴの首に縋るように抱きついた。
途端、ドフラミンゴが、蹂躙していた唇を離してしまう。
ああ、面倒な女だとでも思われたか。
「おい」
「……なあに?」
「余計なこと考えてんじゃねェ」
「バレた? ていうかよく分かったわね」
「ナメてんのか?」
「まさか」
かぷりと首筋を噛まれ、腰を大きな手が撫で下ろす。マリアの体は素直にびくりと跳ねる。
「お前ェを一番分かってんのは誰だ? なぁマリア」
体の芯まで震わせる低い声。
その一言で、何となく答えは見えたような気がした。
好きになるのに理由なんて無いけれど、原因は間違いなく彼だった。
好きにさせる才能
「ねぇ……」
「あん?」
「好きって言ってもいい?」
「何度でも言わせてやるぜ、フフッ!!」
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