■ 臆病×臆病=

名前変換なし



ぎしり、とベッドの軋む音が静かな部屋に響いた。
目の前の彼は、とても苦しそうな顔で私を見つめてくる。

「チハ…」
「呼ばないで」

そう言って彼は荒々しく私にキスをした。

私たちは付き合っているわけではない。
だけど、友達と言うには些か度が過ぎている。
所謂、友達以上恋人未満。
でも、彼は時折私たちが互いに引いた曖昧な線をぷつりと切って踏み込んでくる。
その時の彼は決まって苦しそうで、私は何も言えなくなってしまう。

ゆっくりと時間をかけて互いの唇が離れる
少し赤みを帯びた彼の顔は先程と同じく苦しそうで、何かを言おうとする度にまた口を閉じてふいと視線を逸らしてしまうから。
だから私は怖くなる
もし彼の口から謝罪の言葉がでたら、と。

彼は決まって、キスの後にまた曖昧な線を引いた。
それはか弱くて直ぐに消えてしまいそうな線だけれど、臆病な私には踏み込む事が出来なくて。

そしてまたいつも通りの朝を迎えては、後悔するのだ。

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