■ 告げた想いは空気に溶けて

悲恋注意







雨の音が聞こえる
確か今日は1日雨だと天気予報が言っていたような気がする。
自信はないけれど。

ちらりと隣を見やると、依然お酒のせいか少し頬の紅いヒカリが眠ったままで。
数時間前に店に来て、凄く嬉しそうに
「私、魔法使いさんと付き合うことになったの」
そう言った君。
一瞬場の空気が凍ったのは、きっと僕がいたからだろう。
キャシーは鋭いから僕の気持ちに気づいていた筈だ。
そこから何だかんだお酒を飲んで騒いで、キャシーとマスターは酔い潰れてしまった客を送ると言って出ていってしまい、今。
横で眠る彼女と二人きりで、キャシー達の帰りを待っている。

ずっとこのままでいい。まだ君の隣にいさせて欲しい。
我が儘だとか、自分らしくないだとか そんな感情を今だけは忘れてしまって。
明日には僕じゃない誰かの隣に行ってしまう君を感じさせて。

もやもやとした感情が行き場をなくしてぐるぐるまわる

「ずるいよね、君は」

僕の心をぐしゃぐしゃにして、たくさんの嬉しさとか悲しさとかを植え付けて、そして消えるんだ

今だって君は僕の隣で。
好きでもない男の隣で、静かに寝息をたてている。

無防備すぎない?
僕はそんなに男として見られてないの?
君にとって僕はなんだったの?
悔しい。
僕は、少なくとも僕は。
君のことを大切な一人の女の子として見ていたんだよ。
気づいてた?
…そんなわけないか。
鈍感な君のことだから きっと仲の良いお友達程度だったんだろうね
全く、酷い話だ。
でもそんな君が好きだ
…好きなんだ。

「なんで、こうなるかなぁ」

君の笑顔が好きでした。
君の頑張ってる姿が好きでした。
君の傍にいたかった。
ずっとずっと永遠に、君の隣にいたかったよ。

雨の音が強くなる
もうじきキャシー達が帰ってくる頃だろうか。
せめて、帰ってくるまでの間だけ。その間だけでいいから、僕たちを恋人同士にして。
最後の我が儘にするから、どうか。

「好きだよ、ヒカリ」

こんなにも君のことが

告げた想いは誰にも聞かれずに消えた

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