捕まる黒猫



 俺は無我夢中で糞餓鬼を追い掛けた。
 アイツはここいらの地図は頭にないらしい。大体同じ道を行ったり来たり。このままほっといても同じ道を走り回るんだろうな。
 でもまぐれで逃げられて見失っても困るから上手いこと一本道に誘導してやった。いつ気付くのか楽しみにしてたら案外気付かなかったらしく壁に打ち当たるまで気付くことはなかった。

「…残念やったなぁ糞餓鬼が」

 多少息は上がってるがまだまだ走れる。目の前の餓鬼は肩で息してやがる。なんだ意外と体力ねぇんだな。
 数歩、餓鬼に近付き右手を差し出した。財布を返せと言うと途端に体を微かにびくつかせた。何時まで経っても応答がないためもう一、二回声を掛けた。が、結果は同じ。

「なんや。今更ビビっとんのかぁ?」

 今も尚動かない餓鬼に溜息一つ吐きしゃあなしで財布の中の一万やるから返せと言ってやった。俺も鬼じゃねぇからよ。優しいだろ?
 すると餓鬼は、俯いていた顔をゆっくりと俺の方に持ち上げた。その時だった。

「…っぅおあ?!!」

 いきなり餓鬼が俺に飛び掛かって来やがった。勢いよく肩を押された為その場に倒れ込む。
 こりゃああれだ。やべぇ。なんでかって?そんなん餓鬼の眼を見りゃ分かる。こいつ人を殺した事があるな絶対。俺の上に馬乗りなんざ一億年早ぇんだよ。
 俺の首に手を巻き付けるもんだから自然とこっちは慌ててしまう。体勢が最悪だ。

「…っが…ッ…!!」

 うわぁやべぇやべぇ。すんげー力。どうしたもんかと考える内に自分の手の力が抜けパタリと地面に落ちた。
 餓鬼は後少しとラストスパートを掛けるべく更に力を込めやがる。何勝った気でいんだよ。
 手元の砂利を握り締め嫌味の如く餓鬼の顔にぶっかけてやった。一瞬怯んだ餓鬼の胸倉を掴み力一杯横にスライング。自然と転がり立場逆転。
 次は俺が餓鬼に馬乗りだ。餓鬼は未だ目の中の砂利が痛いらしく両手で目を擦っていた。今のうちにと咄嗟に自分のベルトを引き抜き餓鬼の両手を掴みベルトで締め上げた。
 ギリリと肌とベルトが軋む音が妙に鮮明に聞こえた。

「はっは…っはぁ…ハハ。俺の勝ちや。残念やったなぁ。糞餓鬼が。」




俺の上に馬乗りなんざ、
一億年早ぇんだよ。








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