狭い裏道を走った。
走って
走って
走って
祇園の裏道はまるで迷路だ。進んでるのか戻っているのか。もしかしたら同じ所をぐるぐる廻っているのかもしれない。暗くて道がよくわからない。
息が苦しい。脇腹が痛い。足が痛い。喉が痛い。でも逃げないと。逃げないと。
殺されそうで。
がむしゃらに走り続けた自分に今更後悔した。知らぬ間に一本道を走っていたらしい。目の前は行き止まりだ。
今ならまだ間に合う。道を戻ろう。早く。別の道を…
「…残念やなぁ糞餓鬼が。」
しまった。どうする?逃げる?どうやって?
「おら、早う財布返しい」
どうする?
「聞いとんのか?」
どうする?
「おいコラ。聞いとんのかっつっとるやろ」
殺す?
「なんや。今更ビビっとんのかぁ?」
殺される前に?
「あぁええよもう。一万やる。それ以外返し。な?」
そうだ。
殺される前に、殺せばいい。
お袋みたいに。
「…っぅおあ!??」
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