ちゅーされる黒猫





「さっきも言ったよぉに偽造というよりか、全く他人の身分を奪う方法だから。一応ってか絶対にこれハンザーイ。ってことは理解してるよねぇ?クロチャン?」

 試したような目で俺を見てきた。俺が頷くと次は表情変えずに源吉を見る。

「今更聞く事かいな。聞く意味わからんわアホ。」

 源吉は頭をわしわしと掻きながら溜息を吐いた。CHU-RINはにへらと笑い「だよねぇ〜」と緊張感のない返事を返す。

「次は、ターゲットを決める。ターゲットはこの写真に載ってるやつね。条件は性別が同じであること。同じくらいの年齢にみえること。コイツ19ね。あれ?クロチャンて、じゅ〜…はち……?」
「翼は17や。見た目やとわからへんわ。」

 源吉がそう言うとCHU-RINは「あ、ごめ〜ん」とへらへら返答。

「氏名、生年月日、現住所、電話番号を入手は完了。社会保険じゃなく国民健康保険証を利用していること。ってかコイツ無職だから国保けって〜い。一人暮らし中。因みに彼女なし。にひひだぁっせー」

 一人で言って一人で笑ってやがる。なんなんだよ。

「ち…CHU-RIN、お前、彼女おんのか?」

 おい源吉。

「いるよ〜俺ねぇ、こーみえても結構モテるんだよぉ」
「ぼ…ボインか?っいだ!!」
「…話。」

 ムカついて思わず源吉の足を踏んでしまった、踵で。空かさず源吉が謝ってきた。

「にひゃははは!!あーああ、オモロ。さて、コイツ無免許ね。家に車もバイクもないから。監視してたけど友人のを乗ったり、借りたりとかもなし。コイツはクロチャンの顔を知らないってか知らないで当たり前だけど。いや寧ろ引きこもりだから知るのも無理か。ターゲット…山田孝行の印鑑は用意済み。一応、信用度を深めるため…というか、地方によって三文判じゃあ印鑑登録を受け付けないことがあるんだよねぇ。けど大丈夫。役所に電話して、確認しといたから。受付オッケーだってさ。…ふぅ。」
「なんか頼むか?口渇いたやろ」

 両頬を膨らましわざとらしく溜息を吐くCHU-RINを気遣う源吉。こんだけ話せば嫌でも渇くだろうな。
 チュパも俺にじゃなくて自分で食べればよかったのに。
 コロリと口内で飴を転がせば、ふとCHU-RINがこちらを見た。視線がかち合い数秒。なんだと思い、また俺は飴を転がした。
 瞬間、ゾワリと背中になにかが走る感覚がした。目がヤバい。
 誰のって変態のがだ。捕食者の目だ。先程、この変態がモテるといういらない知識を得たがわかった気がする。
 多分女はこの目にヤられるんだ。というか何故俺を見る?

「クロチャンてさぁ…、おいしそぉだね…」
「源吉。」
「な、なんや。」
「ケーキ4つ。なんでもいい。甘いの。早く。」

 でないと俺が喰われそうだ。
 慌てて源吉は店員を呼び、適当に甘いケーキ4つとコーヒー、コーラとココアを頼んだ。
 コイツは多分糖分を採らないとキレるタイプだ。絶対そうだ。俺にあげた飴が最後だったんだ。早くしてくれ店員。

「…!!」
「げ。」

 CHU-RINは椅子から少し尻を浮かせ身を乗り出したと思えば、俺の口からチュッパチャップスを奪った。
 いきなり抜かれたせいか俺の唇とチュッパチャップスに銀糸が紡ぐ。
 ニヒルな笑みを浮かべたCHU-RINは見せ付けるかのようにソレに舌を這わし、口に含んだ。

「…おいしー」

 俺と源吉は、ただただ変態を見つめるだけだった。

「…と、とりあえずな、けケーキを食ってな!!休憩してからまた話聞こうな!!な!!」
「…源吉」




何故あんたが焦る。







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