[jude side]
僕とファルスが頼んでいた物が届く。ミラさんのが来るのを待とうと二人で頷きあったが彼女が冷める前に食べなさいよ、勿体ないと小さく呟いたのでお言葉に甘えて。
「「いただきます」」
ちみちみと口に含みながらファルスの質問に答えていくことにした。僕がルドガーと出会った経緯を。列車内で初めて分史世界へ入ったこと。初めてということでルドガーが多額の借金を背負わされてしまったこと。エルがカナンの地を目指していること。
順々に話していくことに頷きを返していた彼女はフォークを持った手を止める。
「カナンの地?」
彼女にとって聞き覚えのないワード。たどたどしく紡がれたその疑問にも順序よく返していくことにした。
その間にミラさんの昼食も届き、ウェイトレスさんがコップの中の少なくなった水を継ぎ足してくれる。
口先だけの説明でどれくらい伝わったのか自分では分からないけどファルスが理解しようと繰り返し唱えていた。
「なる程、そのカナンの道標ってのを全部手に入れたら行けるようになるってことわけね」
まるでおとぎ話。そう言ったファルスの皿はもう空に近かった。僕は説明含め喋ることに徹していたからまだ半分も食べていない。なるべくはやく胃に収めようと行動にでたが消化に悪いからやめなさいと止められる。
「そもそもエルがお父さんを探しているなら旅の途中で手がかりの一つ見つかっていてもおかしくないじゃない?」
リーゼ・マクシアもエレンピオスも色々足を運んでいたんでしょう?と疑問を口にしてミラさんもそれに同意した。
そうだ、そう言えばエルにも親戚の一人や二人居たっておかしくない。誰か彼かは彼女を知っているはずなのにそう言ったことは一度もなかった。いつも一緒にいるわけではないけれど自分の父の情報を手に入れたらきっと皆に教えてくれることだろう。
「……そう言えばエル、ディールに行ったときここ知ってる気がするって言ってなかった?」
「あー……、あの時は状況を読むので必死だったから曖昧だけどそれっぽいこと言っていたかもね」
ミラさんの言葉にすぐ返答するファルス。確かにそんな感じのことを言ってたが、その後すぐに魚の話へずれてしまった記憶がある。ディールでの一件は僕と二人は離れて行動していたこともあり、中々話にはいることができない。ファルスはミラさんがディールでの話を持ち出したころから素っ気ない態度をみせている。いや、素っ気ないというか、墓穴を掘ったことに後悔している時のような顔。
一体分史世界で何があったのか。その事を聞こうと口の中の物を飲み込んで一息ついたときヴーヴーとGHSが震えた。
「あれ、ルドガーからだ」
「ミラのこと心配して電話してきたのかも」
「バカね。そんなことあるわけないじゃない」
なんでそう言いきっちゃうかな。と二人の会話が続く中僕は電話にでる。確かにミラさんのことではない。が、僕たちが今まで話題にだしたことの話だった。
「えっ、最後の道標が?」
その言葉にぴたりと二人の声も静まる。
ルドガーの声が聞こえるようにスピーカーにして、会話を続けた。
最後の道標への進入点は見つけたけれどなにかしらの事情があって今は入ることができないらしいのだ。そのことでクランスピア社へ来てほしいと言われたらしく、時間があるようなら僕やファルスにも来てほしい、そう言った話だった。
「わかった、丁度トリグラフに居るから今すぐ合流しよう」
空になったお皿に。
(バイバイと言ったのはいつのことだっただろうか)
2014.5/30
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