しりあいばかり


「ありがとうございます」

と赤司くんが素直に礼をいうのはなんだか昔の彼を知っているだけに、何だかムズ痒い。

礼をいわれた今吉さんはええでーと気にした様子はなさそうだ。


しかし今吉さんが明かりを点けてわかったのは、ここにいる全員がバスケ部で尚且つキセキの世代を獲得した高校である、ということだ。

つまり何が言いたいかというと、


「何でこんなに、」

である。
洛山5名 陽泉5名
桐皇5名 秀徳5名
海常5名 誠凛5名。

計30名。
それぞれのバスケ部スタメンて。
おおすぎませんか、


「…さて、見たところ此処は何処かの会議室みたいだね」

誰かここに見覚えがある人はいないか?

という赤司くんの質問にあまりの人数の多さにびっくりしていた僕は意識を部屋にうつす。

最後の記憶がマジバだっただけに、なんとも言えない。体育館かとも思ったが完全に見当違いだったようだ。

この部屋の高さはあの紫原くんが立っても幾らか余裕のある事から3m以上。のっぺりとした色合いの少し黄ばんだ白の壁で窓はなく、この部屋唯一の出入口は右手奥の観音開きの大きなもので、所詮大会議室と呼ばれても遜色ない広さの部屋だった。入口近くの左端の方に長机とパイプ椅子が畳まれて置いてある。その反対側は、あれは、ドア、でしょうか。給湯室か何かだろうか。


「広いっスね!紫原っちが全然余裕っスよ」

「ねー。他のもこんくらい高ければいいのに」

などと言っている黄瀬は、紫原が立っても余裕な高さにびっくりしている。中学の時には同じクラスだった彼らは案外にも仲がいい故だろう。成長期故に体の感覚というものが急激に変わったせいで紫原は事あるごとに頭を入口などで打っていたからだ。黄瀬はそれの付き添いでよく保健室に行っていた記憶がある。

妖精さんとワンコの戯れは本当に癒しで。
そこに桃井さんも加わっての大中小組はもうホント、

あ、いや、話がずれますね。
そんなワケでこの大会議室は誰も見たことがなかったみたいで、今後どうするか、という話し合いになった。


「その前に、皆がここに来る前に何をしていたか聞いてもいいか?」

何か共通点があるかもしれない、と秀徳の主将の大坪さんから提案があった。


「いいですよ。僕らは部活終わりで部室にいました。着替えて帰ろうとしたらここに」

うんうん、と洛山の葉山さんと根武谷さん、そして実渕さんが頷く。


「あ、俺は図書室にいた。」

と黛が手を挙げていった。
なんでもWCが終わり受験に向けて勉強をしていたそうだ。その手に持っているラノベはなんだ、と問いただしたいところだが。


「俺らもそうやで。諏佐と受験勉強しとったな」

「ああ。」

妖怪サトリ、曰く特に変わったことは無かったらしい。おっと目をつけられそうだ。


「俺と桜井は部活終りで部室にいたな」

「は、はい!」

「青峰のヤローは知らねぇよ」

「あん?」

「す、すみません、すみません!」

と若松さんと桜井くんは正反対の態度でいた。
問題児の青峰くんはというとマイちゃんのグラビア見ながら寝てたらしい。君という人は学習しないんですね、脳内猿ですか、なんて言ったらお猿さんのが可哀想ですのでやめておきます。ただ軽蔑するくらいはしますけど。


「俺はシュート練をしていたのだよ。
1日100本は自分でノルマにしているからな」

人事は尽くしているのだよ、と。

「オレも真ちゃんと一緒に残り練だったね」

ねー、真ちゃん!
とあの堅物に和やかに声を掛ける高尾にこのHSKめ!末長く爆発しろ!と思ったのは僕だけじゃない筈です。ほら、現に彼らの先輩の宮地さんがパイナップルを投げ付けようとしている。宮地さん、それ非常食になりそうですのでぜひ保管を。

そんな彼らは大坪さん、木村さん、宮地さんの3人で残り練をしている2人に差し入れをしてやろうとしていたらしい。体育館を開けたらここにいたとか。どんなツンデレ。


「俺は撮影終わって笠松先輩とストバスしてたらっスね」

部活行けなかったんで笠松先輩に相手してもらってました!なんてキラキラしていうものだから笠松先輩は調子に乗るな、と黄瀬くんを締め上げていたが、いけ!もっとやれ!と思ったのはここだけの話です。


「俺と森山もストバスにいたな。」

「ん?うん、そうだな!」

受験勉強で鈍った体動かしたくてな、でも黄瀬と笠松は一緒じゃなかったぞ、と教えてくれた小堀さんは中村さんにお前は?と尋ねると、中村さんは早川と部室にいました、とのこと。ならなぜ早川さんは此処にいないのだろうか。いや、居ない事が良いことなのか。


「じゃあ最後。誠凛さんやな」

今吉さんの言葉に皆がこちらに注目する。
僕は注目されなれていないのでミスディレクションしようかとも思いましたが、それでは話も進みそうにも無かったので諦めました。


「俺らも大体同じだな。部活終りで部室から出たらここでぶっ倒れてた」

木吉と伊月も一緒だったと告げた。


「僕は人に会う約束でしたので火神くんとマジバにいました。」

ね、と火神くんに同意を求めればおう、と返事が帰ってきた。ご褒美にいたというのは黙っておこう。こうしてここに来る前に何をしていたかを聞いても、部活終わりで部室にいた、くらいしか共通点はなかった。着の身着のまま連れてこられた様で所持品は皆特にないのも共通点としては上げられる。


「あんまり共通点っつーもんもないみたいだな」

笠松さんがはぁ、と溜め息を吐きながらそう言った。何かしら期待があった分落胆はある。まあでも、真面目に部活やってる男子高校生ですのでね。それもそうなるものかなと思います。


「とりあえず出る前にこの部屋を探ってから出ようと思うが、いいかい?」

赤司くんの質問に是、と答えながら座っていた床から立ち上がる。お尻についた埃を叩きながら何処を見るかざっと周りをみわたす。

この部屋に明かりが灯った時に見た机とパイプ椅子の山。入口近くのドア。ロッカーや棚一つないこの部屋では探すところなんてこの2つくらいだ。

だが自分は壊滅的に体力がない。
いや、これでは語弊がある。
これでも男子高校生の平均的な体力くらいはある。だがここにいるのは全国常連の男子バスケ部員で。それに比べたら、という意味合いでとって欲しい。自分もバスケ部員じゃないか、なんてのはお口チャック。

そんなワケで机とパイプ椅子の山の掘削は体力バカ共にやらせるとしましょう。

探すとしても30人も同じ所を見なくてもいいだろう、と僕含め何人かは見学である。

と言いたいところだが、何故かみんな入口近くのドアには一向に行かない。

ドアに気づいていない?

まあ、あの山に気が向けば其方に気がつかないのだろう、でもあんなにあからさまないかにも怪しいです、と言わんばかりのドアを見過ごせるだろうか。それなら、とばかりにドアを開けようとした時。


「何か見つかったかい?」

そしてそれはまさに
赤司くんがそう聞いたときだった。


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