みしらぬばしょに


空は曇天。
海は軟風。







ぬるり、と湿気が肌を舐めるようで。ドロリとした風が背筋を伝う。時計の秒針はカチリとも先を示す事はない。短針は4。長針は44。つまりは4時44分。なんとも日本人には不吉な時間で止まっていた。


「ここは、」

時計に気をとられていたら、周りがガヤガヤとしてきた。ぼつりぼつりと自分以外の人が居るのだろう、目を覚ます。確信はないが、推測するならば知り合いなんて言葉で済ますのは軽々しくてどうかとも思うけれど。

それすらもわからない。


「目が覚めましたか」

あてずっぽうになんとなく人の気配がする方にそう言って声を掛ければ、起きて困惑していた人たちはびく、と肩を上げてビクつかせたような気配。


「っ!…おま、く、黒子?」

「はい。」

暗がりで見えなかったが、やはり今の声は海常の笠松さんであっているだろう。

え、黒子っち!?
テツヤ?
ちょ、ぎゃ!だれ!いま誰か俺の足踏んだ!
高尾うるせぇ!

など聞き覚えのある方々の声が聞こえた。
聴こえ方に違いがある事から恐らく此処は広い部屋なのだと推測出来る。そこでふとここに来る前は、友人との待ち合わせを兼ねて、何時ものように部活で疲れた身体を休ませるご褒美に、マジバで休憩していた事を思い出す。だがしかしここはマジバなんかではない。ここは何処か、ペタペタと壁を触ろうとしてもそのままぺたんと地面に着いてしまうので近くに壁はないようだ。


「ここに、誰かいるのか?」

暗がりの中ですっと透き通る力強い声がした。中学の時には最早恐怖の対象でしかなかった彼の声が、ここまで安心するとは思わなかった。


「赤司くん」

「その声は、やはりテツヤか」

少し離れたところで声がする。
赤司くんとは距離があるようだ。


「黒子もいんのか?」

近くで相棒の声が聞こえた。
視界が0のこの空間で聴覚のみというのは意外と神経を使うが、ただなんとなく、彼らがいるだけで落ち着くのは、やはり自分だけではないらしい。


「火神くん、」

「よかった、俺だけかと・・・、あ、いや、すまん、そういう事じゃねぇよな、」

「大丈夫です。ボクも君が居てくれて心強いです」

見えないけれど、火神くんが申し訳なさそうにしているのがわかる。正直で純粋過ぎる彼にはこんな場所似つかわしくない。


「すまない、俺の声は聞こえるかい?」

暗がりのただっ広い空間に赤司くんの声が響く。すると火神くんは赤司のヤローもいるのか、と少し引いた様な声で聞いてきたので、はい。とだけ答えた。


「今この状態を整理したい。
暗がりでよく見えないから、ここに居るのが誰か、名前だけでも言ってくれないか」

相変わらずの指導者っぷりだ。
しかし視覚が機能できないうちはそれげ最善だろう事は明らかだ。しかし、その提案は直ぐ様却下された。


「そんなんまどろっこしい事せんとええで」

そう聴こえたと思ったらぱ、ぱち、と真っ暗だった空間に明かりが灯る。


「ほらな?」

と桐皇の今吉さんがこの空間の明かりをつけてニヤリと笑った。

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