たとえそうでも
赤ちんやミドちんが用心深く白ちん擬きを見ている。
それは勿論、黒ちんをいつでも救えるようにというのもあるけれど、白ちん擬きの一挙一動を見逃さない意図も含まれているからだ。
バ火神は勿論のこと、元相棒の峰ちんも隙あらば、なんて考えているらしく。元帝光のブレーンな2人の赤ちんとミドちんから何やら伝言かなにかを伝えたらしいミドちんの相棒が2人を止めている。
よくとまったネ。
感心感心。
峰ちんと黄瀬ちん大人になったね!
まあそれとは別に隣のエレガントヤンキーもヤル気満々なのか薄ら笑みを浮かべている。
ちょっと、俺の周り沸点低いの多くない?
大丈夫?
というかまぁ、オレも若干イラッとしているわけで。
「ねぇ、早く黒ちん返してよ」
舐めていた飴を奥歯でガリ、と噛み砕いて白ちん擬きにいえばヤツはニヤニヤとイラつく顔をする。
『へぇ、やっぱコイツ大事なんだね。
さっきからみんな目が怖いよー?』
あぁ、もう、ほんと。
イラつく。
捻り潰してやろうかとぱきり、ぱきりと骨が鳴る。
「敦」
はっ、と赤ちんの方を見れば何時ぞやの冷たい眼。赤と金の眼が俺を射抜く。
『あはは!やっぱこの子凄いね!
君をコッチ側にできて良かったよ。アイツもだけど、コイツラも手出し出来ないとかもうサイコーじゃん!』
赤ちんと俺の会話や、他の奴らの雰囲気から察したのか白ちん擬きは黒ちんを最高の人質だと嬉しそうに語る。
「誰が手出し出来ないと言った?」
赤ちんがいつもとは違う、地を這うような雰囲気の中、白ちん擬きにそういった。
『ふぅん。まぁ、手ぇ出してもいいけど、俺逃げるよ』
だって唯一出入り口は俺の後ろだもんね!
なんて俺の知ってる白ちん(色違いだけど)と同じ顔で黒ちんにナイフを突き付けたまま愉快そうに笑った。
白ちん擬きがどう逃げるか分からないが、赤ちんから逃げようだなんて。赤ちんという人間を知らないからこその台詞だな、なんて考える。
それによくは知らないけれど、此処にいるのは全員全国区のバスケ部員である。早々逃げられるものでもない。
赤ちんやミドちん、その他諸々が何を考えるのか。
それは後々愉しそうだなぁ、なんて考えていると、何を思ったのか、白ちん擬きはジリジリと扉の外へと出ていく。
対象に、俺らは少しずつ距離を詰める。
30人対白ちん擬き(黒ちんのコブ付き)の鬼ごっこかな。
景品はお菓子がいいなぁ、なんて考えて、ポケットの中からチョコレートを取り出して口の中に入れる。
赤ちんがミドちん、峰ちん、黄瀬ちん、そして俺にアイコンタクトを取る。あぁ、はい。1番手は俺らね。面倒だなぁ。せめてバ火神も入れようよ赤ちん。あ、でもそうじゃないね。
『じゃあ、またねー』
「っ!炯至くん・・・!」
ほら、やっぱり。
黒ちんの中じゃ例えバケモノでも白ちんが何よりも大事なんだよ、赤ちん。
知ってたでしょ。
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