なんてこっけい


最早それは、無条件での反射に近い。
刷り込みだと言われればその通りかもしれないが今はそれを議論する気はない。

中学の頃はこの絶対的な支配力と指示、判断力で全国連覇を勝ち取ったのだから。


それでも、肩を組まれていた黒子だけは白神からは逃れられなかった。


「えー、なに?何でみんな逃げんのよー」

へらり、と目尻を下げて拗ねた様に唇を尖ら せる様は本当に白神にそっくりだ。

反射的に白神と距離をとったキセキの世代も。
白神と同じ高校の奴らも。
白神を知らない奴らも。
白神と思しき人物も。
怪訝そうに此方を見ている。


黒子以外は。

まあ妥当だろう。
いきなり警戒心剥き出しで離れろ、と言ったのだから。むしろそれ位してもらわないと後後が不安だ。

黄瀬や青峰、紫原がぶーぶー文句を言っているようだが総無視。緑間も怪訝そうに見ている。いやいや、調教の賜物か。流石僕、と中学の頃の僕を褒めて言いたい。ぶーぶー文句を言うくらいなら白神にくっ付いていればいいのに、それでもちきんと僕の命令をきくあたり実に優秀である。

さて、本題だ。


「白神、黒子を離してくれないか」

「どうして?」

がっちりと肩を組んで、離す気はないようだ。

さてどうするか。
自分の中であの白神は偽物だと訴えているあたり、十中八九あの白神炯至は偽物だろう。あの違和感は間違いないのだから。しかし何をもって偽物と断定するかは、みんなに分かり易くカマでも掛けるか。

恐らく同意見の黒子は奴の腕の中だ。
刺激して黒子にもしもの事があれば・・・。

しかもアイツは唯一の出入り口を背にしている。万が一逃げられでもしたら面倒な事この上なさそうだ。


「いや、お前は僕の性格を知っているだろう」

「まぁね。・・・用心深いのも知ってるよ」

「なら、解るだろう。」

目を細めて睨む様に白神擬きを見つめればふは!と耐えきれなかった様に笑った。

後ろの空気が張るのがわかる。
状況が理解できていなくても、僕と白神との間で探り合いをしている位はわかるだろう。それが何を意味するかも自ずと導き出される。

勘のいい緑間や疑り深い今吉さん辺りは先程の僕の命令も、今この状態も全ての原因に行きつく筈だ。


「あかしが疑り深いのも用心深いのも知ってるけど、だからと言って別に黒子を離す必要はないよね」

本物とは似てもにつかない瞳の奥に薄暗い濁り。よくもまあそれで本物と言い切ろうとしたものだ。


「お前は、いつまで僕の事をあかし、と呼ぶんだ?」

「は?」


その質問でキセキの世代は気付いたのか、完全に白神擬きを敵視する。

火神が青峰にどういうことだ、なんて聞いているけれど、中学の頃から白神だけは僕を征ちゃん、と呼んでいた。白神はひとり一人きちんと名を呼ぶ。それなのに先程の会話に白神は青峰にも黄瀬にも名を呼ばなかった。


それに


「お前はいつから、黒子のことを『黒子』と呼ぶ様になった?」

「ーっ!」

はい、ダウト。

これには火神も、誠凛の生徒も気付いたのか顔を青くする。最も、黒子第一の白神なら黒子を見つけた瞬間に飛びついてくる筈だろうという意見は、またの機会にとっておこう。いや、こんなのが二度はないと思うが。



ーさて、ほらどうする?
30人に囲まれてはさっさと黒子を離すしかないだろ?

- 6 -

[*前] | [次#]
ページ:


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -