最近の時間サイクルが鬼じゃないかと思う。

朝起きて弁当作って(サボったりばあちゃんが作ってくれたりとかするけど)学校行って授業受けて放課後病院行って練習して風呂入って飯食って、予習と復習と課題を軽くやってバレーのデータとって寝たらもう朝とか……

どうして朝は来るんだろう……
いや、ちょっと前まで平気だったのに、

とか思ってたら武ちゃんに心配されて小野ちゃん(英語教師)に授業中めっちゃ当てられた。

田川も寝てマース!
っていえばビクッ!として起きたけど。
えっ、あっ!寝てませんよ!なんて言ってたけど口元のヨダレが動かぬ証拠というヤツでヘッタクソな英文を読まされてた。ざまぁww

「白瀧疲れてんな」

「まあ、うん……。色々やってたらいつの間にか朝とかどうして朝は来るんだろう」

「ちょっとコレヤバいべ」

「シロ、これでも飲んどきなよ」

余りにもグッタリとしている俺に見かねたのか珍しく古賀ちゃんが話しかけてきた。前の休み時間にいなかったジロちゃんは俺の為にエナジードリンクを買ってきてくれた。

「ジロちゃん……っ!」

「160円ね」

あっ、金は取るのね。


4限終了の鐘がなる。
昼ごはんだが、俺はちょっと食欲よりも睡眠欲を欲している。ジロちゃんと田川は相変わらず購買にパン買いに行って、古賀ちゃんは隣のクラスの彼女と食べているのでここには久瀬しかいない。爆発しろ。

「久瀬、俺5限サボる。保健室で寝てるから6限目起こしに来て」

「おー。白瀧はサボってますって言っとく」

「素直か」

なんて憎まれ口をたたくが、久瀬は上手い事言ってくれるって信じてる。もうちょっと寝たい。

1階の南棟の1番陽の光が入ってくる保健室は、夏場は暑く冬場は寒いと評判だ。しかしそこは学校の保健室というべきか、エアコンで管理されている時間帯はまるでオアシス!

そんな訳でサボりもよく来るそうだが、保健医の中嶋はそういうヤツは目敏いらしくさっさと追い払われる。

「お?白瀧じゃん。どうした」

「なかじー無理。寝さして眠い」

上瞼と下瞼が今にもお手手繋いで夢の国に行きそうだ。

「仕方ねぇな。ほれ、保健室利用書書いとけ」

ベッド用意してくっから、
と言われバインダーを渡される。

おー、今日は寝てもいいらしい。やったー

ちょっとホッとしながら利用書に年組と番号、名前、症状をザッと書く。症状……寝不足?

「せんせーヤバいーーー!転んじゃったー!見てみて!血ィヤバい!バンソーコーちょーだい!」

「日向うるせぇ!」

バタバタと騒々しく入ってきたのは何日が前に仲良くなった翔陽。なかじーもうるさいよー。

「あれっ!シロじゃん!何?!どうかしたの?!」

「翔陽うるさい」

俺の顔見てキャンキャンと喚く翔陽の声が寝不足の頭の中で右往左往に撥ねてガンガンと響き、思わず顳かみを押さえて耐える。

「あっ、ごめん。顔色悪いな、具合悪い?」

さすがに2人から言われ、すぐに落ち着いた翔陽は怪我した足の事なんか忘れて俺の顔を覗き込む。

「ちょっと寝不足でなー、今中嶋先生がベッドの用意してる。翔陽は怪我?」

「うん。さっき体育でコケた。」

「うぇ、気ぃつけろよ。」

そういうと翔陽はうへへ、と笑って照れた。
照れんな。大事な商売道具だろうに。

「白瀧、俺ちょっと職員室行ってくっから日向の怪我治療しといて」

「えー」

「ベッド用意してやっただろ」

まさかそれを持ち出すとか。
なんという職務怠慢だろうか。
じゃあな、と面倒くさそうに書類を持って出ていった中嶋に拍子抜けしてしまう。

「あー……とりあえず翔陽、利用書書いてて」

「あ、うん」

新しい保健室利用書の用紙にしたバインダーを渡す。その間に俺は棚からラップとマイクロポアを取り出す。

「書いた?」

「うん」

バインダーを受け取って中嶋の机に置く。

「とりあえず怪我したトコ水道で流して」

「了解!」

備え付けの水道だと足を上げれないのでベランダについている外用の水道で患部を洗い流す。タオルを渡せば、ありがとう!と言って患部を避けて拭く。

とりあえず座らせてピンセットで綿をつかみ水をつけて細かい所のゴミを取り、乾いた綿で余分な水分をポンポンと吸い込ませていく。

用意しておいたラップで患部を覆うように切り、4辺をマイクロポアでしっかりと止めて終わり。見た目なんか可笑しいのでラップの上にガーゼをつけ、マジックで鳥の絵を描いて終了。ハトなのに真っ黒でカラスになっちゃった。

「翔陽終わったー」

「おー!シロすげぇ!パッパッ!ってやってかっけぇー!でもバンソーコーじゃないんだな!」

「そう?すぐ出来るよ。これは湿潤療法っていうやつ。擦り傷でそんな抉れても無いからすぐ治るよ。お風呂入ったら家のラップでここぐるってまけばテープ要らないし」

「すげぇ!すげぇ!シロ物知りだな!」

「絆創膏貼っとくより治り綺麗だし速いからね。翔ちゃんも覚えとくといいよ」

そういうと俺頭悪いから無理。と真顔で答えられた。素直でよろしい。

「そういえば!武田せんせーとコーチからきいたんだけど、GWの合宿来るんだよな!」

「ああ、うん。明日にでも武ちゃんに入部届け出して放課後練習に混ぜてもらおうかなって考えてる」

「マジで!!!!」

橙の大きな眼を輝かせて楽しみだな!という翔陽は、身振り手振り使って田中さんが、西谷さんが、とここ最近の出来事を嬉しそうに話す。坊主頭と金メッシュの人。そんな翔陽はやはりキラキラとしていて好きだなぁと思う。

「そういえばシロは放課後ドコ行ってんの?」

体育館連れてこうにも2組終わんの早いしさー!と言われ、さっさと行っていてよかったとホッとした。

「俺の知り合いにさ、バレーに詳しい人が居てその人に教えてもらってる」

「えー!いーなー!」

「まあでもある程度教えてもらったら基本俺1人で打ち込んでるだけだけど。」

「すげぇな」

ほー、と翔陽は俺の青痣の腕をみてそっか、と何か納得している。

「あ、翔陽昼休みあと15分。着替えもしなきゃだろ?」

「うわ!やべぇ!オレ飯食ってねぇし!」

ふと時計をみると5限目まで残り15分を差していたので翔陽に言えばまだご飯も食べていないという。ずっと喋ってたもんなー。

とりあえず飴ちゃん食っとけ。
と、上着に入れっぱなしのいちごミルクの飴を翔陽にやる。

「ありがとうシロ!また明日な!」

「おう、5限遅れんなよ」

わかってるよ!といいようやく保健室から出ていった。

……やっと寝れる……



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