「そういや烏野はGW合宿はしないのか?」

今日も今日とて病院の室内競技場に向い、じいちゃんと一繋さんの指導を受ける。まだ慣れないレシーブに腕は青痣だらけでむしろウケる!

レシーブは全ての起点。
バレーの基本と言っていい。

じいちゃんのサーブとったり一繋さんのスパイクとったり。キレイに上がった時はやっぱり嬉しい。

とりあえず5分休憩してサーブ練をしようとした所、一繋さんからそう聞かれた。

そうか、元監督ならGW合宿の事も知ってんのか。

「あ、GW合宿はあります」

今日の放課後学校を出る前に武ちゃんに呼ばれてみれば合宿の話で。

学校終わってすぐにその日から合宿所を借りてほぼ丸1日バレー漬け。かろうじて自由時間はあるが、課題で潰されるんだろうなぁと考えている。

「丸1日バレー漬けだなぁ」

「そっすねぇ、体力的なのは心配してないンすけどね」

「と言うかばあちゃんが心配だなぁ。俺も居ないし大和も合宿でいないとかー!」

そういう事だ。
帝光時代に長期や短期合宿は嫌という程やってきたのでそこまで心配してないが、強いて言うなら家のことが心配である。ばあちゃんだからってじいちゃん程は心配してないけど。

「まあばあちゃんなんで、じいちゃん程は心配してないです。大丈夫って言ってるんで大丈夫です」

「まあ、そうだな」

「えー」


閑話休題。

「で、サーブなんですけど昨日言われたので観てきました。ネットにアップされてるので宮城県内で言えば白鳥沢の牛島はパワー系でコントロールはあまり無く入れば強烈って印象です。ただ、“左”がどのくらいなのかってのは気になりますね」

昨日見た宮城県高校バレーの動画の感想。

「“左”、なぁ。まあそれは置いとけ。
ただ、分からない事をわかっとけよ」

「うっス。牛島サーブは俺パワー系じゃないんでフツーのサーブになりますね。で、誰のサーブをやればイケるか、と総合的に考えた結果」

“青葉城西高校の及川徹”
超攻撃型のセッターで“叩くなら、折れるまで”という素敵な座右の銘を掲げるイケメン様だ。

「イイ所に眼ぇつけたな」

「あざっす。俺はもともとスピード&テクニック派なんで、及川徹のサーブは真似しやすいっスね」

動画の及川徹を頭の中で再生してみる。

「高さと速さで全くのイーブン…けど、使いどころとかの経験値とパワーで負けてますね」

「まあそうだな」

「となるとパワー系は切り捨てます。
ここからは俺の考えなんスけど、じいちゃんのジャンプサーブを軸に及川徹のをやれればいいかな、と考えてるんですけどどうですか」

俺の言葉がそんなに意外だったのだろうか
じいちゃんと一繋さんは2人して顔を見合わせる。

「俺のパワーはこの身長に対してとても平均的です。卑下してる訳ではなく事実です。無いわけじゃないですけど牛島若利も及川徹も能力パラメータカンストしてるでしょアレ。俺の能力はスピード&テクニック。withパワーは追々でいいです。あと2年で伸ばします。」

ぐっと両手の拳を握る。
目を閉じて悔しさを口惜しさを噛み締めろ。
無い物ねだりだ。
焦るな、目の前を見据えろ。
今出来ることをやるしかないのだから。
下手くそで上等だ。
上しかないのなら上だけを見るまでだ。

「じいちゃんのサーブはジャンプサーブってヤツですよね」

「そうだ」

「及川徹もやってたけどじいちゃんのはなんて言うかな、感覚的な話になっちゃうんですけど静かなんですよね」

実際の及川徹を見たことがないから何とも言えないが、動画の及川徹と今ここにいるじいちゃんのジャンプサーブ。何処だろう、何かが違う。

「大和、その及川ってヤツの動画何回見た」

「アップされてるのを見たので2年半分を1回ずつです。」

じいちゃんの質問にデータを思い返しながら答える。

若干寝不足なのは黙っとこ。

結構ガッツリアップされてて、しかも2年半は多かったなぁとしみじみしてしまう。
まあ今の3年と2年の過去のデータはとれたので良しとしよう。

「……ほぅ、やるな」

「俺の孫だぜ」

答えたら答えたでうちのじいちゃんがドヤ顔してたなぜ。




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