さてやって参りました烏野総合病院。
学校行ったら翔陽から絡まれるしジロちゃんは拗ねてるし大変だった。

閑話休題。
病院は何回か来てるけどそういえば学校帰りに寄るのはお初である。

「ちわーッス」

「おー、白瀧さんとこの!」

「兄ちゃんこの1ヶ月でまーた身長伸びてないかー?」

あははーそんなことねぇっすわー!
なんて絡んでくるじいちゃんと一繋さんと同室の谷さん(76)と田邊さん(53)をかわし部屋を見ると、目的の人物が居ない。

「すんません、うちのじいちゃんと一繋さんは何処にいるか知ってますか?」

「あー、多分繋さんと信さんなら2人で外に行ったんじゃねぇかな」

「ああ、あの2人喧嘩しつつ仲いいからなァ
中庭か屋上だと思うよ」

「あざっす」

ちなみに繋さんってのが一繋さんで、信さんが俺のじいちゃんの信繁。同じ【 繋 】って事でことある事に張り合ってるらしいが、同年代の悪友が出来た感覚なんだろうと勝手に解釈している。

中庭と屋上か……

この病室から近い中庭に行ってみるが居ない。となると屋上だ。煙とナントカは高い所が好き……と。


がチャリ、と少し錆び付いて重い扉を開ける。

目の前に遮るものがなく青空が何処までも続いている様で、少しワクワクして楽しくなるのはちっちゃい頃からだ。

「あ、居た。」

屋上に1つだけポツンとある3人掛けのデザイナーズチェアに腰掛けているのは、探していたじいちゃんと一繋さん。

「おう、大和!おかえり」

「じいちゃんただいま。一繋さんも久しぶりッス」

「元気に高校生やってんなァ」

ペコリと頭を下げてじいちゃんと一繋さんに挨拶をする。

2人ともここにいたのかーとか谷と田邊さんがどうのって他愛もない世間話を少し。一繋さんにバレーの話をするだけなのになんか緊張する。

2人とも俺の制服姿に気づいているし。
まあ学校帰りに寄ったことが無かったからこその違和感なんだろうけど、2人して今日はどうかしたのか、と聞いてくる。

うだうだと悩んでいてもしょうがない。

「今日は烏養さんにお願いがあってきました」

「お願い?」

「俺にか?信繁じゃなく?」

訝しがる一繋さんとじいちゃんにはい、とこたえる。

「昨日烏野のバレー部を見学させてもらいました」

そこで一繋さんがピクリとする。

「嶋田さんと滝ノ上さんに連れてかれて、町内会対バレー部の試合を見せてもらいました。俺、今までバスケばっかやっててバレーに興味もなくてした事もありませんでした」

じいちゃんも俺を見るけど、黙ってきいてくれる。

「けど、昨日見た翔陽たち烏野のバレーはすっげぇ楽しそうで生き生きしてました」

昨日見た翔陽たちを思い浮かべる。

「バスケばっかやってたからぶっちゃけ未練もありますが、そんでもバレーをやりたいと思いました。けど、バレーの事なんも知りません。初心者ッス。ルールとか名称とか学んでも本の中だけの知識です。なんで、俺にバレーの事、バレーでどう身体を動かせばいいのか教えて下さい」

お願いします、と頭を下げる。

ああ、もうそろそろ日も陰ってきている。
山極に沈む夕日が赤くコンクリートを焼く。

そんなに時間は経っていないのに。
どくんどくんと心臓が早鐘をうつ。

「大和、顔上げろや」

一繋さんは椅子からたって、ポンと肩を叩いてそう俺に促す。

「俺ァ信からお前の事を聞いとる。東京の強豪校でバスケやっとったことも、辞めたことも」

じいちゃんをみると少しバツの悪そうな顔をした。いや、別にいいけど。

「バスケは繋がなくても1人ででも出来る。
けどバレーは1人じゃできねぇ」

バスケは奪われなければ1人ででもゴールに走れる。極論だが、チームプレイなんて頭数さえ揃えば馬鹿みたいに上手いヤツが1人居れば勝てるって話だ。けどバレーはそうじゃない。

「バレーは繋ぐ競技だ。1人でじゃ絶対に勝てない。そういうルールだ。」

連続して同じ人間がボールに触れない
自コートから相手コートに返すのに3回まで

一繋さんの言葉に頷く。

「けどお前さんがやりたいと思うのなら全力でやれ。手を抜くな、後悔もするな。俺はお前にバレーを教えはするが、上手くなるかは知らん。お前が学べ」

カァー!と烏が飛び立つ。

ぞわりと鳥肌が立つ。

俺はありとあらゆる知識を得て、元々恵まれた運動能力を使い戦略的に効率よくバスケをやって勝ってきた。それを今度はバレーで。

考えて
使って
勝つのだ。

ぐあっと腹の底から湧き上がるナニカに身震いをしてしまう。ぐっと拳を握って湧き立つそれを押さえ込む。

「よろしくお願いします!」

再度そう言って一繋さんに頭下げた。

「うぁあ、もう俺の孫ちょうかわいい!」

「お前さっきからそればっかだぞ……」

びっくりしたが、じいちゃんから頭をぐしゃぐしゃに撫でられる。奥さんらぶ!子供らぶ!孫らぶ!のじいちゃんを知ってる俺としては一繋さんとの話にいつ割り込んでくるかとちょっとヒヤヒヤしたが。

流石に我慢したようだ。

「待っててね大和!じいちゃんもはやく退院して大和の練習手伝うから!」

ふんふん!とガッツポーズをするじいちゃんは御年67歳になるはずなのに時として俺よりアグレッシブだ。普段はのほほんぽやんとしているのに。おそろしい。

「さて、バレーを教えるのはいいんだが、大和、お前ルールとか知ってんのか」

「はい。昨日色々調べたんで頭に入ってます」

「ふーん、流石全中3連覇。帝光の黒狼か?仕事がはえぇな」

「……」

じいちゃん、おのれ
どこまで話したんじゃい



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