とりあえず見学するにしてもだ。
柔軟だけでもしとこうと体を動かす。

その間にもバレー部の方では何か揉めているようだった。雰囲気的に泣きボクロくんと黒髪吊目くん。

セッターとやらを譲る譲らないっての。
あー、ポジション争いかー

みんな手も口も出さずに見守る。

「……俺は……影山が入ってきて……正セッター争いしてやるって思う反面、どっかでほっとしてた気がする」

何処ででもあるよね、ポジション争い。
俺はポイントガードで赤司とだからね。
もー泣きそうだったなー。
アイツおやつコロッケだったし。
あ、コロッケ食べたくなってきた。

「セッターはチームの攻撃の軸≠セ。
一番頑丈でなくちゃいけない。でも俺はトスを上げることにビビってた……」

ああ、この人は負けたんだ。

翔陽も吊目くんもそばかすくんも黙って泣きボクロくんの言葉を聞く。

「俺のトスでまたスパイカーが何度もブロックに捕まるのが恐くて……圧倒的な実力の影山の陰に隠れて……安心……してたんだ……!」

このチームは負けたんだ。
どこかのチームに。
圧倒的に。
屈辱的に。
負けたんだ。

「……スパイクがブロックに捕まる瞬間考えると、今も恐い」

でも、この泣きボクロくんは踏み出そうとしている。恐くて恐くて仕方の無い先へと行こうとしている。

俯いていた泣きボクロくんは小さく拳を握る。

けど、と。
旭さんを見つめながら。

「もう1回俺にトス、上げさせてくれ」

旭。

と力強く宣言した。

「だから俺はこっちに入るよ影山」

そういって負けないからな、という泣きボクロくんは先ほどまでの揺らめいた眼ではなく、しっかりとした眼をしていた。同じチームである大器晩成Tシャツくんにも西谷ナイスレシーブ頼むよ!と明るく言った。

Tシャツくんこと、西谷くんは力強く当然っスと頷くとチラリと戸惑っている旭さんを1目見てコートに入った。

「んじゃこれが町内会チーム+αとバレー部のスタメンな。」

「へー」

オーダー表を見ながら人と名前を一致させようとしたが、無理じゃね?表に載ってないベンチ組はまあ、後でってことで。

烏野高校

ミドルブロッカー(MB)
1年 日向 162cm
1年 月島 188cm
ウィングスパイカー(WS)
2年 縁下 175cm
2年 田中 177cm
3年 澤村 176cm
セッター(S)
1年 影山 180cm


烏野町内会+α

ミドルブロッカー(MB)
大学3年 森 183cm
滝ノ上電器店 185cm
ウィングスパイカー(WS)
3年 東峰 184cm
嶋田マート 177cm
内沢クリーニング 176cm
セッター(S)
3年 菅原 174cm
リベロ(L)
2年 西谷 159cm

店名とか!

ウィングスパイカーは攻撃
ミドルブロッカーは防御
……だとするとセッターとリベロとは。
うーん……なるほどわからん。
後で翔陽か繋心に教えてもらお。

……翔陽わかるんかな……

てか翔陽MBなの?ブロックするんでしょ?
え、大丈夫?足りる?主に背的に。

「あ、白瀧くん、僕ちょっと着替えてきますので」

「あ、武ちゃんスーツのまんまだもんねー。いいよ!いってらっしゃーい」

申し訳なさげに言わなくてもいーんだよー武ちゃん。バタバタと体育館から出ていく武ちゃん。試合に間に合うようにする気だな。無理だけど。

と見送っていると背後からバシン!と重たい音がする。そーいやバレー部のバレーって生で見たことなかったかも。なんてワクワクしながら邪魔にならないようにベンチの繋心の側に行く。

サーブから始まりそのサーブを取るサーブレシーブ。次にトスしてそこからのアタック。今までやってたバスケと違い、バレーはボールが床についてはいけない球技。

如何に落とさず繋ぐか。
単品が強くても意味の無い球技。

畑違いの球技に思わず空笑いしてしまう。

「……勝つことが当たり前。負けたら意味が無い。でも負けずにいるとその分脆くなるよー赤司」

中学時代仲の良かった嘗ての仲間にそう呟く
幸いに、誰にも聞かれずに消える。

ダンダン!

と少し違うボールの跳ねる音が心地いい。
ナイッサー!と掛け声が面白い。

「日向お前こっちだって!」

「あいたっ!」

噛み合わないチームが羨ましい。
けど、雰囲気は悪くない。
このチームは強くなる。いい雰囲気だ。

思わずウズウズしてしまうこの久しぶりの感じに口角が上がる。

「行け日向!!!!!!」

坊主頭の人が翔陽を呼ぶ。
黒髪吊目くんから上がったボールを翔陽は相手コートを叩き込む。

人より小柄なオレンジが羽ばたく。

『飛んだ』

森さんや嶋田さんが驚く。
繋心はポカーンとしている。
その後ろにジャージを着てきた武ちゃんがニヤニヤソワソワしながら繋心を見ていた。

可愛い教え子どや!な気分なんだろうなー

そうか、あの吊目くんえーと、影山くんはセッターで……セッターはアタッカーにボール出すのか。ふんふん。

あれ、ミドルブロッカーってアタックもしていいんだ!

わー、テンションがあがっちゃってるわー
俺ならもうちょい上かなー!あー、でも翔陽単純だからどこ行くかわかりそうだなー。アレ止めるのも楽しそー。なにこれー笑。俺も混ざりたーい

とか考えるけど、まずは見て覚えよう。
百聞は一見にしかずってね

と、コートを見ていると翔陽を見ていた旭さんが西谷くんに何か言っている。

「何回ブロックにぶつかっても
もう1回打ちたいと思うよ」

そう羨望の眼差しを翔陽に向けながら西谷くんに言ったのを聞いた。

「ー…それならいいです。それが聞ければ十分です」

西谷くんは静かに目を閉じて息を吐き出す。
いい集中力だなー

嶋田さんが取って森さんが繋ぐボール。
旭さんに託されると反対コートには坊主頭と金髪メガネくんと影山くん。

力強く飛び腕を振る。

ドガッ!と影山くんと金髪メガネくんにブロックされる。

旭さんが絶望的な顔をする。
なるほど、旭さんはひたすら守られ相手コートに落ちない恐怖を知っている、と。

でも、落ちてない。

スッと床とボールの間に西谷くんが入ってくる。背中の汗がタラリと落ちる。

ナイスフォローー!
チームメイトからの掛け声がかかる。

烏野高校側のコートの坊主頭も何かしら思う所があるのかブワッと涙を溜めている。

西谷くんは素早く立って旭さんを見た。

「だから!もう1回!トスを呼んでくれ!!
エース!!!」








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