なんで俺ここにいんだろ……。
いや、まあオッサンどものせいなんだけど。

途中の水道でメガネを掛けた、桃ちゃんとは違うこれまた美人な人がスクイズボトルが10本近く入った男子バレー部と書かれたカゴとジャグとタオルを用意していたので声をかける。

「これ、第2体育館に持っていくんスか?」

「えっ、あ、うん……」

「両方?」

「うん、バレー部に町内会の人たちが来てくれるらしくってその人たちの分もあるから……」

「あ、俺それで連れてこられたのか。じゃあそのジャグとボトル持ってきますよ。タオルお願いします」

「あ、うん、ありがとう。先行っててもらっていいですか?」

はーい、なんて言ってジャグとボトルが入ったカゴを持つ。おお、なかなかの重さ。こんなん女の子が持ってくの大変だよなぁと思いながら第2体育館まで持っていく。

……持ってきたはいいけどどこに置いておけばいいのやら。とりあえず入り口に置いとく。


「くっそー、やっぱ平日のこの時間に全員は無理か……」

「繋心ー来たぞー」

うぃーッスと手を挙げて滝ノ上さんが繋心にそう言うと、嶋田さんは体育館を見ながらなつかしー!とちょっとテンションが上がっている。それを見ながらあはは!と笑って森さんや内沢さんがシューズを履いて体育館に入る。

いや、昨日も来たし。
現役の俺としては懐かしさの欠片もない。

「悪ぃなお前ら!急に来てもらって!」

「おー、気にすんな。ついでにコイツも連れてきた!」

ぐいっと引っ張られるように体育館に入らされ繋心のもとに連れてこられる。引っ張る滝ノ上さんは物の見事に素晴らしいドヤ顔だ。

くっそ腹立つ。

「お?大和じゃねーか。ついにお前バレーする気になったか!」

やはりお前のせいか繋心。

「いやなってねぇよ。なに、ついに繋心武ちゃんに落とされたかww」

バシバシと背中を叩かれて嬉しそうな繋心にイラッとして言い返す。それに照れたのか落とされてねぇよ!とバチーン!といい音がして背中がじんじんとする。おのれ繋心……めいっぱい叩きやがって。

それを見ていたのかバレー部の金髪メガネくんが、町内会って言うからもっとオッサンかと思ってた、と言っている。嶋田さんはまあともかく滝ノ上さんはオッサンで十分だ。

まあ俺も学校指定のジャージじゃねぇし。
市販のスポーツウェアだからといって俺を入れんじゃねぇよ。

の意味も込めて見つめると、若干肩を揺らした。自分でもガン付けると怖いの自覚してます。ごめんね金髪メガネくん。でも八つ当たりだお

「よーし!そろそろ始めるぞー!」

と繋心の声掛けでオース!とバレー部の元気のいい掛け声が聞こえる。

「試合だー!って、シロ!」

おっと。めんどくせぇ奴に見つかっちゃった

「翔陽やっほー」

声をかけるとまるで犬の様に近寄ってきた。
oh......翔陽から尻尾が生えてる。

「シロだ!えっ!?シロ町内会チームだったの?!いつから!?バレー強い!?ポジションどこ?!」

「日向、どうどう。」

「翔陽……そんな一気にこられてもわかんないよー。とりあえず落ち着けー」

「うん!で!?」

バレー部のそばかすくんが翔陽を宥める。

が、落ち着いてない。
まあ、はふはふと鼻息を荒くして興奮しているコイツを宥めるのも一苦労。

「あー、とりあえず俺は町内会入ってないよ」

「あれっ!そうなの?!」

「そうなのー。あの茶髪の、滝ノ上さんって人に連れてこられたのー」

正確には嶋田さんだけど。

待て、の状態で今にも遊んで構ってご主人様ー!と尻尾をブンブン振っているワンコな翔陽に思わず笑ってしまう。よく出来ました、の意味も込めて頭を撫でてやる。おお、硬いかと思ったら思いの外ふわっふわだ。

「俺バレーやったこと無いって前言ったじゃーん。もう忘れちゃったー?」

「忘れちゃった!」

ドーン!と胸を張って言われてしまった。
ヤバいwww翔陽www
逆に堂々として言うもんだから、つい俺もそっかー!としか言いようがない。ここが体育館じゃなければ腹抱えて爆笑したのに。

そばかすくんも日向……、となんとも言いようがないようにしてるから余計ウケる。もー!


「まあ着いてきたからにはねー。やるだけやるけど、とりあえずみんなの見てルールとか技とか覚えるよー」

多分そっちのベンチ組あたりから何人か借りると思うよー、と言うとそっかぁ、と目に見えて残念そうにする。スマン笑

まあ、体を動かすのは好きなので後はバレー部を見て決めよう。覚えるのは得意ですし。

それよりも、さっきから窓の外をちょろちょろと視界の端に映る黒。第2体育館は男バレしか使用してないから……バレー部が気になんの?

「翔陽、外の人知ってる?」

ほら、あれ。あの人。
と指差すと翔陽はアサヒさんだ!と声を上げた。格子戸の外には烏野高校排球部の真っ黒いジャージを着た旭さんとやらが。翔陽の顔みてげっ、コイツ!とか言われてるけど、翔陽何したの笑。嵌め殺しの格子にへばりついてアサヒさーん!と叫ぶ翔陽の後ろから旭さぁーん!?と坊主頭の人や泣きボクロくんがキラキラとした目でこっちを見ていた。

「なんだ遅刻かナメてんのかポジションどこだ!」

バレー部員の様子から旭さんも部員と判断した繋心に入り口からキレ気味に囃し立てられた旭さんとやらは、戸惑いながらウィングスパイカーだと言うとさらに繋心にキレられる。

……ウィングスパイカーとは。
ポジション……?
どこのポジション笑
ポイントガードとかそういうのかなー
スパイカーってことはアタッカーか
やー、バレー初心者の俺場違いじゃねー?

とか思っていると、繋心が外にいる旭さんに早く入れ!と急かしている。シューズを持って体育館に入ってきた旭さんと大器晩成のTシャツを着たチビちゃんがピリつく。泣きボクロくんや坊主頭が心配そうに見てる……、ところを見ると、俺らが来る前に何かあったか?

「あとはセッターか……俺やりてぇけど外から見てなきゃだしな。大和やるか?」

「アホか。お前らが連れてきといてポジション名もわかんねぇ経験値0のド素人にやらすなよ。」


思わず溜息。
そんくらい許して。

事情も素性も知らないバレー部はきょとんとするが残念ながら俺の味方は皆無らしい。マジか。


「だよなー。まぁいい、お前はとりあえず外から見とけ」

「へいへい」

1回見れば容量は掴めてやれるし。
来たからには腹くくってやるだけだ。
こういう時バスケやってて良かったと思う。

ちょうど女マネさんが体育館に入ってきたのでペコリと頭下げとく。持っていくっつって入り口まででごめんなさい。

「まあ1試合分くらいは見学させてもらうわー。ぶっつけ本番も嫌いじゃないけど、翔陽がどんなバレーすんのか見たいしねー」

といえば繋心は了承して、バレー部からセッターとやらを借りることにしたらしい。

最初からそうしろ。



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