■ くるな

「?子供?」
「アレース!」
「あ、マッシュとカイエン。無事だったか」
「脇腹大丈夫でござるか!?」
「ああ、ポーション掛けといたし大丈夫だよ。きっと。それよりそんなに急いでどうした?」

どうやらさっきの子供を追いかけて来たらしい。
人間もだけど獣も追いかけられたら逃げたくなるってこと知らないのだろうか。
知らないだろうな、この二人だったら。

うーん……獣みたいな格好だったから本能も獣並みかもしれないとマッシュ達に伝えれば、食えそうな魔物狩って来るとマッシュは何処かに行ってしまった。
暫くして戻ってきた彼の手には1匹のシルバリオンが。
解体は今からしなければならないらしい。
武器とは別のナイフでマッシュと連携を取りながらバラしていけば、こういうのに慣れていないのかカイエンが死にそうになってた。
仕方ない、何もやってない彼には焦がさないように上手く焼くという重大任務を授けよう。

てかなんであの子を追ってたんだ?

「旨そうな匂い!くれ!」

表面が炙られて匂いが立ち込められた頃、案の定少年は釣られて来たので餌付けしておく。
こいつ、食べるスピード尋常じゃないくらい早いぞ。
すぐ食べて次を要求するようにこっちを見てくる。

「な、なんだよ」
「妙な奴でござる!!」
「ん、取り敢えず自己紹介しとけば?私はアレースね」
「拙者は、カイエンで、こっちがマッシュ」
「アレースにマッシュにカイエンか。もっと食い物くれ」
「もう、ねえよ」

あまりにもがっつく少年に呆れながらマッシュが言うが、じゃあ探してこいと少年は胸を張っていう。
あぁ、これじゃあ喧嘩になるだろうなとインターセプター用にスモークした肉を上げたのにも関わらず何故か二人はじゃれてた。
なんだか子狼と熊がじゃれあってるみたいだと思ったけどカイエンには年の離れた兄弟みたいに見えたらしい。
そう言われてみればそうかもしれない。

いい加減に止めなければと言うカイエンを仲裁に入れれば、少年はカイエンの口調、ござるが気に入ったみたいでござるを連呼していた。

さて、今のうちにこれ(丸焼きセット)を片付けとこう。

ドンッ。

いてっ。

「プレゼントする!ガウ、アレースにプレゼントする!肉のお礼忘れてた」
「どうせ、下らないものなんじゃないのか……?」
「マッシュに言ってない!ガウの宝だ。ピカピカの宝だ!」
「宝なんてもらえないよ」
「いい、くれてやる!アレースはガウの姉ちゃん!」

お、おおう……まだ片付け終わってないのに絡まれた。
どうやら丸焼きのお礼らしいけど、君を誘き出す為にやったものだから快くは受け取れないんだよね。
てか君、ガウって言うんだね。
今名前知ったよ。
なのに姉ちゃんとか……あれか。
私が食べようとせず、尚且つ追加で与えようとした行為を、野生の獣がやる子供が食べ終えるまで親は周囲の警戒にあたるっていうあの行為だと勘違いしたのか。

罪悪感でいっぱいだよ、私は。

「でも……」
「アレース殿、ここはガウ殿の御厚意に甘えては如何でござるか?」
「そうだぜアレース、もらえるもんはもらっとけって!」
「ガウっ!もらっとけ!」
「……ありがとね、ガウ」
「おん!こっちだアレース姉ちゃん!」

なんか子供を見るような暖かい目で見られながら私はガウに引っ張られた。
そのお宝がある場所に行く前にモブリスに寄って本格的に腕バラしたいんだが……これ、聞いてくれるかな?
ガウすっごい楽しそうだし物凄く言い出しにくいんだけど。

「懐いたな」
「懐いたでござるな」
「親父と兄ちゃんは高みの見物か。おい」
「アレース腕が違う!」
「凄いだろ」
「凄い!ガウもこれする!」
「……ガウはこのままが一番だよ」

親父と兄ちゃん呼びされた二人は感動してるのかなんかプルプル耐えてその場から動こうとしなかったから置いてきた。
マッシュは下がいなかったから兄ちゃん呼びされて感極まるのはわかるけど、どうしたカイエン。
親父呼びされたかったけどしてもらえなかったパターンか?

「ちなみにガウ、ここからその宝のある場所まではどれくらい掛かるのかな?」
「うーん……太陽が沈むのが二回くらい」
「……モブリスに、寄ってもらってもいいかい?美味しいもの食べれるよ」
「じゃあ寄る!モブリスは太陽が登ってからてっぺんに来るぐらい!」
「(六時間くらいか……)」

迷いの森から出てきた時に朝になってたから、今は大体昼前くらいだから夕方には着けるな……

手持ちがほぼない状態のまま2日歩くのは辛い。
二人に確認は取ってないけどジリ貧で2日間遮りのないこの平地で野宿するのは避けたいよね?

財布もそれなりに重いし、新しい服ぐらい買わせてくれ。

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