ヒソカのことどう思うって?変態の殺人狂で、意外と話せて…でもやっぱりヤなやつ。


A person one yearns for #06


会場に戻ろうとすると、急に視界が暗くなる。

上を見上げると、飛行船から誰かの声が聞こえてきた。

「それにしても合格者ゼロはちとキビシすぎやせんか?」

…え?
あれ?
私、合格って言われなかったっけ?

ポカンと見上げていると、試験官2人も含め、会場から皆出てきた。

飛行戦がハンター協会のものだと知り、審査委員会だと認識するころに、
人が落ちてきた。

いや、降りてきた。飛行戦から。

見た目はおじいさん。
メンチいわく、ハンター試験の最高責任者のネテロ会長らしい。

ヒソカと話してる間に、いつのまにか合格者がゼロで試験終了となってしまい、
ネテロ会長が説得?しにきたらしい。

ということは、さー、はりきって再試験。
ははは…。

いつの間にか隣に来ているヒソカからの視線が痛い。

(本当に合格って言われたんだからね!)

ちょっと泣きそうになりながらキッと睨むと、ヒソカは楽しそうに笑った。

くやしい…。
試験放置したのがいけなかったのか。





再試験は山だった。

メンチも実践するのも条件だったので、
まずはメンチからのお手本。

山が二つに割れており、その間のがけに飛び降りたメンチ。
どうやら、目的のクモワシの卵はそこにあるらしい。



ゴン達は我先にと言わんばかりに飛び込んだ。

さて、私も行くか…。

せっかく降りたんだし、数個は持って帰りたい!!
と思ったんだけど、皆律義に1つずつしか持っていかない…。

うー。

この人数だし、1人1個でもクモワシからしたら結構な数だよね。
諦めよう。

ゆで卵大好きなんだけどなぁ。





さて、参戦組とリタイア組に分かれたところで、ゆで卵ターイム。
わざわざ市販の卵との食べ比べをさせてくれた。
もちろん、クモワシの卵からいただく。

お、お、お…おいしーーーーー!!!!!!!

やっぱりもっととってくればよかったよー!!


ゴンなんて、半分リタイアしてる人にあげてるし。
偉すぎ。

メンチが命かけてる理由、わかりました。

ああ、この山覚えとこう。
またいつかこっそり獲りにこよっと。

あ、そうだ!

…鍋の中をこっそりのぞくと、市販の卵だけ残っていた。
いつもならありがたくいただくところなんだけど。
このクモワシの卵の後には、とても食べられない。

一喜一憂してると、目の前に、綺麗に剥かれた卵が差し出された。

「!!」

思わず、手にとって食べたくなる衝動を抑えて、差出人の顔を見る。

…ヒソカだ。

「…何?食べないの?」

意図がわからなくて聞いてみると、ヒソカは少しがっかりしながら言った。

「そのままかぶりつくかと思ったのに…」

いやいやいや。
私そこまで意地汚くないし!!

「そこまで飢えてませんから!」

少々唾液が活発になった口で反論する。

「ククク…欲しいならあげようかと思ったんだけどね」

ううう…。

「た、食べないなら…もらっても…いいかなーなんて」

結局、食い意地がはっている私。

「クックック…どうぞ」

「あ、ありがと」

素直にくれるヒソカに警戒しながら、卵をもらう。

あ、でも。

「ヒソカは一口も食べてないんだよね?」

「食べてないよ(この試験ではね)」

こんなに美味しいものを食べ損ねるなんてもったいない。

「先に一口食べて」

いただいたばっかりの卵を逆に差し出す。
きょとん、としているヒソカを見るのはなかなかないかもしれないな。

「いいのかい?」

「うん、ていうかもともとヒソカのだし。これすごく美味しいよ!!」

私は丸1個食べたしね。
まだ食べれるなんて嬉しすぎる。

ヒソカがニヤリとした意味はその後すぐに、後悔、という形で気付くことになる。

「じゃあ…せっかくだからひとくちいただくよ」

そう言って、何故か卵を持ってる私の手を持つヒソカ。
え?と思う間もなく…。



パクリ



私の思考は手とともにフリーズした。

「おっと…危ない危ない」

力の抜けた手から落ちた食べかけの卵を、ヒソカがキャッチする。

「ネコ、食べないのかい?」

「……」

別に、食べさせる行為を恥ずかしいとは思わない。
いや本当は恥ずかしいのかもしれないけど。

ヒソカ、今何した?

私の手の中の卵を食べた。
そ、それだけ。
それだけよ、ネコ。

冷静になろうとするも、うまくいかず。

指に残るはやわらかい感触。
ヒソカの…唇の。

そこまで考えて、再びフリーズ。





「仕方ない…ボクが食べさせてあげるよ」

『食べさせてあげる』のフレーズにハッとする。

「い……いらない。もういらない、ヒソカが食べて」

遠慮することないよ、とか言われたって、もう食欲も味も何もかもわからない。
とにかく、ヒソカが近寄ってくるのだけは勘弁。

これ以上近寄るなオーラを出しつつ、警戒していると、
ヒソカは、残念、とつぶやいて、残りのゆで卵を食べた。

ご丁寧に、食べ終わったあと、卵を持っていた自分の指を………舐めた。

私を見てニヤリとしながら。



ボンッ



と頭の中が鳴った気がした。














物足りなさそうな顔。
閃いては落胆する顔。
探し求める顔。
あげると言ったら、嬉しそうな顔。

どのキミを見ても飽きない。
だから、ほんのお礼のつもりだったのに。

『これすごく美味しいよ』

またキミは、キラキラと目を輝かせてボクを見る。
たかが卵に。

卵にはあまり興味なかったんだけど、キミをいじめたくなった。
これは不可抗力さ。

卵よりもボクでいっぱいにしてあげる。
そして、もっとボクのことを意識させてあげよう。

ククク…油断大敵だよ、ネコ。





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2012.06.13
甘くなったかなー。

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