ヒソカって危ないし変だし…変態?まさか話相手がつとまるとは思わなかった。


A person one yearns for #05


10年前。

そこがどこだったかなんて興味もない。

ただ、自分の欲望を満たすのみ。

ボクは飢えていた。



そう遠くない場所で、何か大きな力を感じたボクは歓喜に満ち溢れた。
こっちに強い奴がいる、と。

向かってほどなく、小さな村があった。

入口にいた見張りみたいなやつが何か言ってたけど、
構わずに殺した。

ゴミに邪魔される筋合いはない。

すると、上の方から鐘の音が聞こえてきた。

「敵襲だーーーーーー!!!」

うるさいから、足場から崩してやった。
落ちてくるゴミは恐ろしい目でボクを見た。
ニヤリ、と笑みがこぼれる。


さっきの鐘の音のせいで、ゴミ達が襲ってきた。
ボクが戦いたいのはゴミじゃない。
邪魔をしなければ殺さなかったかもしれないのにね。

ククク。それはボクの気分次第だけど。

あの感じた力と戦えれば、良かった。
それなのに、ゴミはどこからか沸いてくる。
ゴミの言うことは皆同じ。

「この村から出ていけ!」

力の差は歴然としているのに向かってくる。
ボクはこういうゴミが一番嫌い。

始末しながら目的地へ向かうと、感じた力は薄くなっていた。

最後に、目的地の付近でボクに向かってきた幾つかのゴミを始末すると、
その様子を一人の少女が固唾を飲んでこちらを見ていた。

目を見開いて。

どうやら、少女はそれ以前に返り血を浴び、涙を流していた。

状況がよくつかめなかったが、さほど気にしない。
それよりもボクは現状にガッカリした。
求めていた獲物は、精神的にも脆そうな、この幼い少女だったのだ。

落胆の色を隠せずに、はぁ…とため息をついて少女に近寄る。
相変わらず少女は泣いたままでこちらを見ている。

そしてその一瞬。一撃。

少女はボクの攻撃を受け止めた。
攻撃をとめられるような筋力もなさそうなのに。

いや…。

なんだこの感触は。
肌であって肌でない。

最初に感じた力が一瞬にしてよみがえった。
間違いなく少女から。

殺気。

時間にして数秒。
あっけなくも少女は倒れた。

ボクは何もしていない…。
どうやら力を使いすぎて倒れたようだ。

あの力は一体…?

倒れた少女を目の前に考え込むが、答えは見つからない。

おそらく、少女が万全に回復して再戦したところで、ボクが勝つだろう。
だけどあの力の正体がわからない。

戦闘中に気絶するなんて、死に値するし、何より興味も失せる。

今までだって殺してきた。
だが…。

「クックック…あっはっはーーーーー!」

自分の心境に笑うしかなかった。
ボクはこの時初めて、獲物を殺すのが惜しいと思った。














今思えばネコはあの時から念を使えたことになる。
無意識だとしても、すごい才能だ。

ボクの判断は間違っていなかった…。

しかし、1つだけ誤算があったようだ。

目の前に、あの時の少女がいる。
自分の村を壊した張本人だとも知らずに過去を話す。
面白くてしょうがない。

強くなったキミが、ボクのことを探している…。
ボクのことを殺したいんだろう?
そう考えるだけでゾクゾクとした。

なのに、キミときたら。
少し困ったように笑って、目を輝かせて言った言葉はこれだ。

『ただ、もう一度会いたいだけなの』

そこには、怒りも恨みもなく、
純粋に会いたいという気持ちが汲み取れる。

ああ、本当にキミは…。

全身に鳥肌が立った後、いつものところではなくて、なぜか心臓が跳ねた。







…?
急にヒソカは黙ってしまった。
相変わらず笑っているけど、表情が読めない。

「そういえば、ヒソカは何で試験受けてるの?」

話を繋げようと、逆に質問してみる。

「知りたいかい?」

そう言われると、別に知りたいわけじゃ…。
なんだか私のほうばっかりしゃべってずるいなって思っただけで。
いや、勝手にしゃべったのは私のほうだけど。

「うーん…うん、一応…ね」

「ククク…秘密」

…ムカっときた。
語尾にハートマークつけて可愛く断った。
全然可愛くないんですけど。
むしろ憎たらしさが増しましたよ、ヒソカさん。

あー、会場のほうが騒がしいな。
試験終わったのかな?

と思ってると、人が飛んできた。
うわ、酷い顔。
でも今はそんなことどーでもいい。

ぶすっとした顔で会場の方へ向かおうとすると、ヒソカに腕を掴まれた。
離してといわんばかりに睨みつけたけど、全然気にせずに飄々とヒソカは言った。

「ネコに会うためさ」

人のいい笑顔で、ニコリと。
恥ずかしげもなく言うヒソカ。

理解するのに数秒遅れた後、私の顔は熱に支配されていった。

「クックック、探し人、見つかるといいねぇ」

いつもの意地の悪い顔になった後、腕は離された。
冗談だってわかってる。
からかわれたのもわかってる。うん。

戦ってもいないのに、なんだか、私は敗北感でいっぱいだった。

(顔の熱が引かない…!)





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2012.06.11 絡めるソース。

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