もう限界よ…


A person one yearns for #11


第四次試験開始。

三次試験の通過時間によって、スタート時間がかわるらしい。
早く着いた人から順番に、2分ごとにスタート。

私はイルミよりも先に出たから2番。
ヒソカの次。

早く出発したくてうずうずしていた。

ヒソカが出発して2分後。
私は猛ダッシュでスタート。
…スタート人数が少ないうちにやることがあったから。

1番目がヒソカっていうのがちょっとやっかいだけど、
この際しょうがない。

私は島中を走りまわるくらいの勢いで走った。



…ここがいいかな。



時間にして、5分くらい。
まだ、私の後に2人しかスタートしていないはず。

目の前には、小さな湖と滝。
滝の裏側には人が入れるくらいの割れ目があり、中には多少落ち着けるスペースがある。
そして、何よりも暗い。
周りが良く見えないほどに。

手早くやろう。

……

……

よし、この半径10mくらいには誰もいない。
大丈夫。

念って本当便利だなぁ。
使いすぎると疲れるけど。

次に自分の気配を断つ。

これで準備完了。

滝の裏にあるスペースで、少々ためらいつつも私は服を脱いだ。
スペースからは湖に繋がっている。


パシャッ


冷たっ!!
でも、気持ちいい。

まるで温泉につかるかのように、湖に浸かった。

滝の裏まで少し水があるから、勢いのいい滝がちょうどカーテンとなる。
出すぎると明るい場所へ出てしまうので、あまり動けない。
全身を洗い流したかった私は、湖に潜った。

そうそう長居はしていられない。
1分ほど潜ってそのままスペースの方へ向かう。

ふー、気持ちよかった。
本当は服も洗いたいんだけどなぁ。

…!

スペースにあがろうとして、違和感を覚えた。
暗くて見えないが、ほんのわずかな違和感。

「…誰?」

誰もいないはずのスペースだけど、声を出してみる。

……

……

待っても返事はない。
気のせいかと思った瞬間。

「キミはこんなところで何をしているんだい?」

「なっ…」

なんで!!?
ヒソカ!?

驚いて、声が出ない。

「なんてね。キミがここに入っていくのを見たから来たんだけど」

まさか水浴びしているなんて、と笑うヒソカ。
ど、どうしよう。

「あがるんだろ?出てこないのかい?」

「あ…あがるけどっ」

ヒソカがそこいたらあがれない。

「大丈夫。ここは暗くて何も見えないから」

まるで私の心の声を聞いたかのような返し方。
いや、そういう問題じゃないから…!

「あがらないのなら…」

「…っ」

「キミの着替えを持って行くよ」

そ、それはだめーーー。

「あがる!あがるからそれはやめて!」

私の慌てっぷりに笑うヒソカ。

「…あの、ヒソカさんは向こうにいかないんですか…?」

「…3」

「2」

「1」

ザバッ!

ヒソカに対して後ろ向きで勢いよくあがる。
大丈夫…私も見えないし、ヒソカにだって見えない。

「イイコだ」

声が妙に近くに感じる。

見えないとわかっていても、ドキドキする。
外では、滝の勢いの良い音がザーーッと聞こえるのに、この空間だけが静かだ。

布が擦れる音が妙に大きい。
早く着替えたいけど、着替える音すら恥ずかしい。
慎重に、慎重に着替える。

心臓の音ってこんなに大きかったっけ…。

「クックック…そんなに警戒しなくても何もしないよ」

「…ホントに見えないよね?」

「見えてるといったら?」

ゴン!!

「い、痛ァ…」

服を持ってバッとヒソカの方を向くと、勢いよく後頭部を壁にぶつけてしまった。

「ククク、冗談だよ」

ヒソカのそれ、全然あてにならないから!
見えないヒソカを睨む。

…あ、やっぱり見えないか。
少し安心して、私は素早く着替えた。
全身濡れてて着替えにくかったけど…滝の風で多少は乾いた。





「ネコ…キミはハンターには向かないね」

着替え終わった頃に、ヒソカがしゃべりだした。
こんな状況になってしまってからじゃ、何も言えない…。

「警戒心ゼロだし、何も考えていない」

…私、用意周到に準備したつもりだったんだけどな。

「念の使い方にも、正直ガッカリだ」

なんでこんな、ヒソカに怒られているんだろう、私。
いや、呆れられてる?
それでも何も言い返せない。

その結果がこうなったわけだし。

おかしいくらいに真っ当な意見だ。
ヒソカなのに…。


「今すぐここでキミを壊そうか」


!!

危険を感じてすぐに移動しようとした私だったが、何故か両腕が動かない。

何…これ?

腕が勝手に動く。

闇の中で、ヒソカの顔が見えた。
それくらいに近い距離。

腕は両側に開かれたまま、何かに固定された。



「…さっきは」

耳元で、ヒソカが囁く。

「興奮したかい?」

「っ!」

人前で裸になった気分は、と問いながら、私の両腕に触れるヒソカ。
いや、身体全体がヒソカに触れている。
…これって、どういう状態?

水浴びしたしたからか、やけにヒソカの体温が熱い。
そのせいか、身体が、心がゾクゾクする。
ヒソカの言葉のせいで、さっきの恥ずかしい気持ちまで蘇ってきた。

なんか変だ私…。

体中が落ち着かない。




「離して…っ」

小さな抵抗を試みる。
それでも腕はビクともしない。

「ククク…無駄だよ。キミを壊すと言っただろう?」


…クチュ


「っ!?」

耳元に絡みつく感触と水音。

耳が、舌の感覚を敏感に伝えてくる。
恥ずかしくて頭がどうにかなりそう…。

反射的により一層力を込めたが、身動きがとれない。


クチュ…チュク


「ゃ…!」

自分でも驚くくらいの高い声。
でも、今はそれどころじゃない。

私は無我夢中で全身から念を放出した。


ドンッ!


ヒソカは向こうの壁にぶつかった。

「お見事…といいたいところだけど、キミは念の放出は苦手のようだ」

「はぁっ…はぁっ…」

まるで何事もなかったようにヒソカは言う。

「対人の経験不足…この試験でキミがどれだけ成長するか楽しみだよ」

まだ、息が整わない。

ヒソカは出口の方へ歩きながら、もし成長していなかったら、と続ける。



「次は本気で壊すよ…ネコ」



そう言うと、ヒソカは去っていった。
最後の言葉はいつになく、とても冷酷な声だった。



ヒソカのバカ…。
大っきらい…。

私は怒鳴る力もなく、その場に座り込んだ。




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2012.07.27
ヒソカは変態だけど、紳士で我慢強い子(´艸`)
変態だから変なことしてるけど。

試験関係ねーし(´ω`)テヘペロ

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