周りの目がなんかやたら気になるのは…気のせいだよね…?


A person one yearns for #08


再試験も無事に終わり、43名が残りました。
無事に、終わりました。

大事なことなので2回言いました。


過去は振り返らないに限るよね。

責任者も試験官も皆を乗せて、飛行船で次の目的地へ。
ちょうど12時間ぐらい自由時間らしい。

さて、どうしようかな。
とりあえず、散歩してみようかな。



…ヒソヒソ



…ヒソヒソ



あれ…?
なんだかいろんな方向から視線を感じては、内緒話が聞こえる。
…なんか感じ悪いなぁ。

疲れている人も多いらしく、座っている人には会っても滅多にすれ違うこともない。
歩いていると格好の世間話のネタになるようだ。
っていっても、ネタになるほど目立ってないんだけどなぁ…。

しばらく歩いていると、キルアとゴンの姿があった。
うーん、仲良いなぁ。


殺し屋とかなんとか物騒な話が聞こえてきたので、Uターンしようとしたその時。


「そういえばネコって女、ヒソカとぜってー付き合ってるよなー」

「え!そうなの!?」

「…お前再試験の時見てねーの?」



「……な…何の話、それ?」


バッ!!!


話に入るつもりはなかったのに…。
ついつい気配を消して近づいて話しかけてしまった。
二人が驚いて私を見る。

(いつのまに!?…つかやべっ)

「ネコ!」

「ねぇキルア。今の話ってどういうこと?」

噂話は本人がいないところでするのが楽しいのであって。
本人がいると気まずいものだ。

「あ、いや…」

先ほどとは違い、言葉を濁すキルア。
聞き捨てならない。…絶対吐かせる。

「ねぇ、ネコがヒソカと付き合ってるってホント!?」

キルアに詰め寄ろうとすると、ゴンが私に質問してきた。
あまりにもゴンの目が、言葉がストレートすぎて、一瞬何を言われたかわからなかった。

「…ゴン、それ、誰から聞いたの?」

少し震えた声でゴンに尋ねる。

「キルアだよ」

ケロリと応えるゴンの隣で、キルアがあちゃーって顔をしていたのが見えた。
諦めたような顔で、キルアが話す。

「…言っとくけど、そう思ってるのはオレだけじゃないぜ?」

どうやら…噂になったのは、再試験の時のアレが原因らしい…。
なるべく思い出さないように、慎重に話を聞く。

1.あのヒソカが殺し以外で人と戯れているのがありえない。
2.あのヒソカに食べさせた。
3.どうみても親密にしか見えない。
4.女も変人に違いない。

ちょっと待った!
変人に違いないって何。
人のいないところで、あることないこと言いたい放題じゃない!
全然親密でもないし。

「全部オレが言ったんじゃないぜ。あくまでウワサだよウ、ワ、サ」

キルアは話し始めた時から、もうすでに楽しそうだ。
反対に私の機嫌はだんだんと悪くなっていく。

「ねぇ、やっぱり付き合ってるの!?」

……。

ゴンの目には好奇心という文字しか見えない。

こういう時、悪意のない質問が一番悪意があると思う。
ゴンの問いに、キルアも少々驚いている。

「ゴン…はっきり言っとくけど……付き合ってないよ」

ヒソカに初めて会ったのは、ゴンと会った時と一緒だというと、
納得するゴンと、残念そうなキルア。

「あーあ、おもしろくねーの」

面白くなくて結構です。
…こうしてはいられない。

まったく迷惑な話だわ。
一刻も早く誤解を解くべく、ヒソカの元へ向かう。







「ネコは慌ててどこに行ったのかな」

「ヒソカのとこに誤解を解きにいったんじゃね?」

「そっか」

さっきは慌てたぜ…。
周りを警戒していなかったわけではない。

それなのに、いとも簡単にオレとゴンの後ろをとった。
得体のしれない女。
兄貴みたいに嫌な感じはなかったが、それでもすげー圧迫感だった。

「考えてもみろよ。周りからヒソカと恋人と思われてるなんて、本人からしたら最悪だろ?」

自分で言っといてよく言う…とは思わない。
どっちも事実なわけだし。

「う…たしかに」

何を想像したのか、ゴンは苦い顔をした。

「誤解とけるといいね」

「ま、無理だろーな」

「え?」

なんで?と聞いてくるゴンに説明する。

傍から見て、明らかにネコはヒソカに気にいられている。
その時点でもう、ネコがどうこうできる話じゃない。
誤解も何も、『ヒソカに気にいられた女』って肩書きだけで十分危険人物だからな。

火に油を注ぎにいったようなもんだ。
ネコにとっては悪い方にしか進まないだろう。

ちょっと考えればわかりそうなものだけど、
なんというか直球型というか…

(ゴンと少し似てんのかな)

「ねぇキルア」

「ん?」

途中から考えこんでいたら、ゴンがもっともなことを言ってきた。

「それ、ネコに教えてあげればよかったんじゃない?」

まぁ…な。
それはそーだけど。

「だって、こっちのほうが話が面白くなるだろ」

それはまるで、猫のような好奇心。







「ヒソカ」

ヒソカには近づくまいと思ったけど、前言撤回。
一人でトランプ遊びをしているヒソカの元へ向かう。

「やぁネコ。おかえり」

(お、おい…ヒソカがおかえりだってよ!!)
(やっぱり噂は本当だったんだな!)

噂を知ってか知らずか、ヒソカが適当なことを言い出した。
それを聞いた周りがざわめく。

ちがう!おかえりって何よ!!

叫びたいのを我慢して、冷静に…極めて冷静にヒソカに話しかける。

「…ヒソカ」

「なんだい?」

呼びかけてから深呼吸を1つ。

「ヒソカと私が付き合ってるっていう噂があるみたいなんだけど」

なるべく周りにも聞こえるように少々大きめな声で言う。

「………へぇ。それは初耳だね」

ヒソカのオーラで、場が少しピリッとした雰囲気になった。
もしかして、ヒソカも怒っているのかな?

周りの人たちは動くに動けず、しゃべるにしゃべれずこの場を見守っている。

やっぱりヒソカも知らなかったんだ。
よしよし、これならうまく誤解がとけそう。

「でしょ!ヒソカからも言ってよ。誤解だって」

「そうだなァ…」

何かを考え込むヒソカ。
ビシッと一言もらえたら、私は十分なんだけどなぁ。

し…ん、と静まり返る部屋。
どれだけ居心地の悪くても、動く者はいない。
下手に動いてヒソカに何されるか…の恐怖も強いのかもしれない。

「…それは誤解だと言っておこうか」

やった。ヒソカに言わせた。
二人とも否定すれば、もう噂なんてないようなもの。


「ネコはボクのモノだからね」


先ほどとは違う意味で、凍りついた場。

「わ、私は誰かの物になった覚えはない!」

とりあえず反論する私。

「それに、ヒソカとはここで初めて会ったし…っ」

「時間なんて関係ない」

言いたいことが上手くまとまらない私の言葉を遮って、ヒソカは言う。

「ボクとキミは二次試験の時に、密度濃い時間を過ごした仲じゃないか」

「だから、そういう誤解のされるような言い方はやめて」

「クックック…一緒にいたのは事実だろ?」

や、それは事実だけど…。
すでに周りはざわめき出していた。

(そういえば、ヒソカは途中からいなかったよな)
(あの女も見かけなかったぞ)

(((やっぱり…)))

ど、どうしよう。
変な方向で話がまとまっていっている。

「確かに一緒にいたけど、密度なんて全然1ミリも濃くなかったわ!」

「じゃあ、今ここで同じ時間を過ごすかい?」

「絶ッ対に嫌!!」

「ククク…人前だからって恥ずかしがることないのに」


恥ずかしいじゃなくて嫌なのよ!

ああ言えばこう言う。
何を言ってもヒソカに返される。
こちらが言えば言うほど事態は悪くなる一方。

違うのに!

(((人前で恥ずかしいことって…?)))

周りは何か違う想像をしだした。

私、素直に『過ごす』と言えばよかったのに。
完全に乗せられた…。

そのヒソカの楽しそうな顔は、きっと、してやったり感でいっぱいだ。

…そうだ。
ヒソカはこんな奴だ。
人のこと、からかってばかりの嫌な奴だった。
今さら思い出してみても、もう後の祭り。

(ヒソカなんか…大っ嫌い)

心でつぶやいて、場全体に殺気を放つ。
再び、静寂が訪れる。

キッとヒソカを睨んだ私は、この場を後にした。






ネコが何しにきたかはわかっていた。
ボクのところへ自ら来るなんて、1つしか理由がなかったから。

おかえりというと、ものすごく嫌そうな顔をした。
噂を知らない素振りをすれば、キミは簡単に騙される。
ククク…本当、素直というか可愛い子だ。
嫌そうな顔もたまらない。

そして、ボクに言いくるめられたキミは、心地よい気を放った。
いい殺気だ。

大人しくしているつもりだったのに、キミのせいでおさまらなくなってきたよ。
戦うまいとも思ったが、ネコを怒らせて戦いに持っていくのも悪くないかもしれない。
戦って壊す…でもまだもったいない。

しばらくはトランプで我慢するとしよう…。

ヒソカの葛藤は続く。





そして、並ならぬ殺気を受けた一同は、やはり、ネコとヒソカはお似合いだという結論に達した。
ネコが去ったあとの、ヒソカの殺気はまた一段と酷かったらしい。
その場にいれない、いるだけで生きた心地がしないくらい。

ネコは一部の受験生から、危険人物確定となってしまった。




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2012.07.09
(ノ・ω・)ノ~[仕事]

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