5、夜毎昼毎
あんたまるで、それしかしらない子供だな。
心底うんざりした声でネズミが言った。
「だって、愛を伝える表現が、こんなに素敵な事だなんて、授業で習っただけでは解らなかったんだよ」
「こんなことばかりやってたら、そのよく出来た頭が腐るぞ」
「そんなの迷信だよ。それとも、ネズミは僕が相手じゃ不服なの? 満たされない?」
真顔で問えば、ネズミはふいと横を向いてしまった。僕の下で体をよじらせるネズミはいつだって淫らで、プライドを保てないくらい行為に浸っている。けれど、もっと深い悦楽があるのなら、僕がそれを与えたい。
ネズミの過去のひとつひとつを、僕のものに変えて行きたい。
僕は、僕という人間の欲を知らずにいた。まさかこれほど何かを求めることが出来るだなんて、思ってもいなかった。
ネズミの応えがあるから、僕は貪欲になれる。ネズミが僕を捨てたりはしないと、たかをくくっていられる。
だから、僕は夜毎、昼毎、ネズミを求める。
体も、心も、僕と共にありますように。
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