4、切望
すらりとした長身が、後ろ手に髪を結わく姿を見ていた。
慣れた手つきで、きっちりとひとつにまとめていく。
彼の気性を表しているかのように、ネズミは真っ直ぐに立っていた。
黒い真珠のような瞳は嘘を許さない。初めて出会ったあの夜から、僕はありのままの姿を見せてきた。僕には偽りなんて必要がなかった。
だからきっと、命の借りなんて抜きにした後も、ネズミは僕を受け入れてくれたのだ。
ネズミがその手に持つのは両刃の剣だ。No.6に切り掛かっても、跳ね返ればネズミの肌を裂く。
だから僕は、君と、君の見えざる剣の間に入って君を守りたい。僕が出来るのは、そんな小さな事くらいなんだ。
君は僕がNo.6に組すると思ってるかもしれないけど、それは違う。僕は君を救いたいんだ。いまはまだ、その手段が解らないけれど。
君は自分自身しか信じない。他の人間は、敵か、それとも利用出来るか出来ないか。たった3つのカテゴリー。
僕は君に近付く事が出来ますか?
君が、信頼という新たなカテゴリーを儲けるなら、そこに僕を加えてくれますか?
切なくて、目の奥が熱くなる。
髪を結い終えたネズミが振り返り、怪訝そうに首を傾げた。
[ 10/13 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]