4、切望

すらりとした長身が、後ろ手に髪を結わく姿を見ていた。
慣れた手つきで、きっちりとひとつにまとめていく。
彼の気性を表しているかのように、ネズミは真っ直ぐに立っていた。


黒い真珠のような瞳は嘘を許さない。初めて出会ったあの夜から、僕はありのままの姿を見せてきた。僕には偽りなんて必要がなかった。
だからきっと、命の借りなんて抜きにした後も、ネズミは僕を受け入れてくれたのだ。



ネズミがその手に持つのは両刃の剣だ。No.6に切り掛かっても、跳ね返ればネズミの肌を裂く。

だから僕は、君と、君の見えざる剣の間に入って君を守りたい。僕が出来るのは、そんな小さな事くらいなんだ。

君は僕がNo.6に組すると思ってるかもしれないけど、それは違う。僕は君を救いたいんだ。いまはまだ、その手段が解らないけれど。


君は自分自身しか信じない。他の人間は、敵か、それとも利用出来るか出来ないか。たった3つのカテゴリー。


僕は君に近付く事が出来ますか?
君が、信頼という新たなカテゴリーを儲けるなら、そこに僕を加えてくれますか?

切なくて、目の奥が熱くなる。


髪を結い終えたネズミが振り返り、怪訝そうに首を傾げた。


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