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 最近、以前よりも調子が悪いと感じることが多くなった。そういうときは決まって腕時計を外しているときなので、私は腕時計を常に身に着けるようになった。相変わらず見知らぬ男の贈り物を着けるのはちょっと不満だが、背に腹は代えられない。そう考えて着け続けていたら、先日長期休暇で日本に滞在していた入江君が、

「それ、宮間さん、自分で選んだの?」
「いや、貰い物」
「…まさか彼氏?」
「独り身だよ」
「…………」
「?」

何を思ったのか私の時計をじろじろと観察していった。そして、彼がアメリカに帰った後、万年筆と比較的小さなインクボトルが届いた。ペン先は細めでノートにも手帳にも使いやすく、デザインもクラシカルで私の好みによく合っている。インクの色はおしゃれな青。これもまたいい色だ。だが、これが本星ではなかったらしい。
 ふわり、と万年筆を走らせたノートらしからぬ香りが広がる。

「え?」

 ノートに鼻を近づける。ラベンダーの香りがする。万年筆の蓋を取り、ペン先を扇いでみる。ラベンダーの香りがする。インクボトルのラベルを見る。ラベンダーの香りって書いてある。

「えっ」

 入江君らしからぬお洒落っぷりに時が止まる。

 えええええ、入江君、あなたそんなお洒落なことできる人だったの?どうしよう、私のセンスが圧倒的に負けている。勝てない。なんでこんなもの知ってるの?どうして?私のセンスが(以下略

「返礼品どうしよう……」

 数日の間全力で悩み、木でできたメガネケースを贈ることにした。理由としてはちょっと珍しいから。使わないときは折りたたんで平たくできるし、黒檀でできた高級品だからこれで許してほしい、私のセンスの限界だ。

 国際便で彼に送る手続きを完了し、ふらふらと自宅へ戻る。大学生になってからはベッドを使うようになった。部屋着に着替えてベッドへ飛び込むと、プツリと意識が途絶える。



――――ああ、私は夢を"見ている"。

『――の僕たちで、―――――』

 入江君と、黒髪のお兄さん、茶髪のお兄さんが話をしている。黒髪は雲雀恭弥、茶髪は沢田綱吉というらしい。
 内容は何となくつかめた。知らないことも何故か分かるようになるのだから、"見る"とは不思議なことである。

 場面が変わる。何時ぞやの日に、『見てはいけない』と言われたあの場所だ。
 私はやはり、白い制服を着ている。右手に氷のような冷たい指輪をはめて、何故かハンドガンを一丁、ジャケットの下に隠し持っている。
 入江君に呼ばれる。まさか、同じ格好をしている。彼のほうが少しいい格好をしているから、偉くなったのだろう。
 彼が画面越しに会議か何かに参加している。妹の姿が映る。私とは真逆の、黒い服を着ている。しかし、そこに妹はいない。…どうやら、"飛んでいる"らしい。身体が在るということは無事なのだから、とりあえず心配はしない。ああ見えて、私より何倍もあの子は強いから。

 また、場面が変わる。
 帽子を被り、ローブを纏う。そして、胸元に輝くおしゃぶり。妹の炎に加え、私のなけなしの炎で光を放つそれは、トゥリニセッテによって課せられた私たち一族の呪い。
 温かいのだろうか、冷たいのだろうか。優しいのだろうか、痛いのだろうか。実際に触れていない今では分からないが、これはきっと、近い将来解る。

 前に進んでいく彼ら。私に手を伸ばしてくれる入江君。

 私はその手を――――

『君は誰だい?』

「――――っ!」

 飛び起きる。息が苦しくて、目からは涙がボロボロ零れ、手が震える。身体を抱きしめる。慎重に呼吸をして、徐々に落ち着きを取り返して、涙が収まるのを待つ。

「…………『見てはいけない』って、こういうことか」

 最後、白い、底の知れぬ狂気を見た。それはいつぞやの、天使のように真っ白な姿で、悪魔のように真っ黒なことをする男の形をしていた。狂気の名は、白蘭。
 全てが白いその狂気は、おそらく私を"見た"のだ。
 
 彼はこれからどうするのだろう。私を血眼になって探すだろうか。放置するだろうか。
 私のことはどれだけ見抜かれたのだろう。私の「存在価値」までを見られてはいないだろうか。

 自分の意思で"見る"ことが出来れば分かるのだろうが、生憎、"中途半端"なので妹の様に自由には覗けない。私はあの子の様に運命を使いこなして運命に翻弄されるのではなく、運命に道を標されて運命を生きるしかないのだから。




始まりません終わるまでは