2,誰に対しても公平であれ
「くーろりーん」
「だから変な名前で呼ぶんじゃねぇっ」
ファイが呼べば、極度なほどの怒りを露にする黒鋼。
「父さん、母さんを泣かすなんてひどいよ!」
「誰が父さんだ!!泣いてねぇし!!!」
モコナが小狼の声真似をして言っても、同じく怒る。
「黒鋼さん、そんなに怒らなくても…」
「し、小狼くん」
「これで怒らねぇほうがおかしいだろうが!」
小狼が諌めても、そして諌めようとする小狼をサクラが諌めても、やっぱり怒った。
「ほらほら、雅ちゃんも」
面白がったファイが私にも何か言うことを催促し、何を言おうか考える。
だが。
「……」
言ったら覚えとけ、そんな頂点の怒りに達した厳しい視線で言葉なき念押しをされ、何も言えなかった可哀想な私。
3,決断力のある男であれ
「どっちにしようかなー」
ある買い物の時のこと。
「さっさと決めろ、だりぃ」
何で迷っているかと言えば、皆で食べるミカンのことである。
目の前にずらりと並ぶミカンの集団、安いものから高いもの、少ないものから多いもの、小さめのものから大きめのものまで様々だ。
その上ミカンはよくよく見なければ下のほうが痛んでいたりカビが生えていたり、なんてことも少なくない。
家事を任される女はいろいろ大変なのだと説きながらなお迷っていると、痺れを切らしたらしい黒鋼が一番安いミカンを一袋乱暴に掴み、かごに入れた。
「これでいいだろ。帰ろうぜ」
のっしのっしと、「先に出てるから会計終わったら呼べ」と歩いていく彼の背中を見送って、かごの中に入れられたミカンの袋を見た。
「……」
上から下から斜めから見れば、それは案の定見えにくいが中のほうにあるミカンの一部がじゃっかん傷んでいる。
「パス」
黒鋼には悪いが、新しいのを選び直すことに。
結局、会計が終わり彼を呼べば、「遅ェ」と怒られてしまった私でした。
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