02


「運命だと思ったの」
 ポツリと唇から溢れ落ちる言葉。芹香が明るく染まった長い髪を掻き上げる。
「中3の運動会の打ち上げで同じテーブルになって盛り上がって、そこでアドレス交換したの。陽くんのことは前からカッコイイなって思ってて、」
「そのうち毎日メールする仲になって、クリスマスイブに遊園地でデートすることになったんでしょ」
 もう10回は聞いたよ。そう付け足しつつも、芹香は笑って先を促してくれる。姉御肌で面倒見の良い彼女は、中学時代からずっと世話を焼いてくれる良い友人だ。
「最後に乗った観覧車からは、夜景がとっても綺麗に見えて……頂上にきたときに陽くんが、陽くんが……」
 もうとっくに枯れたと思った涙が奥から溢れて眼球を覆う。あっという間に視界が潤んで弁当の中身が分からなくなった。
 きっといま、芹香が困っている。見えないけれどそれくらいは分かる。中学時代から、なにかあるたびにあたしは芹香に泣きついてきた。
 どうやってもこの起伏の激しい性格は落ち着く気配を見せないのだ。そう、これはもう仕方がない。
「マナミが好きだよ、愛してるよ、付き合おうよって言ったのおおー」
 とうとう情けない声をあげてあたしは泣き出した。はらはらと涙が頬を伝って、ぼやけていた視界がクリアになる。やはり芹香は困ったように笑っていた。
 教室のなかでどんなにあたしが泣き叫ぼうとクラスメートは動じない。高校入学時にあたしにはすでに陽くんという彼氏がいて、彼となにかあるたびに所構わず芹香にすがった。
 彼がメールを返してくれなかったとき。彼の口調が冷たかったとき。不安の波に呆気なく流されてあたしは泣いた。
 入学から半年も経った現在、いい加減クラスメートもこの状況に慣れてしまったのだ。
 教室のなかでどんなにあたしが泣き叫ぼうとクラスメートは動じない。高校入学時にあたしにはすでに陽くんという彼氏がいて、彼となにかあるたびに所構わず芹香にすがった。
 彼がメールを返してくれなかったとき。彼の口調が冷たかったとき。不安の波に呆気なく流されてあたしは泣いた。
 あたしの生活は自分でもびっくりするくらい、恋愛を中心に回っている。




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