慎重に頷いてみせると、四條はカッと目を見開き忍をソファに押し倒した。

「ふざけんな!何なんだよお前!いきなり学校行くとか言い出すわ、休みの日もほっつき歩いてるわ。挙げ句に出ていく?絶対許さねぇ」
「し、じょうく……っ」

あまりの剣幕に忍は喉に突っかかって声がうまく出ない。
吐息にも近い声量で必死に四條を宥めようとするも男はまるで聞く耳を持たなかった。
そればかりか体を馬乗りで抑えつけているために身動きも取れない。
そうして四條は力任せに忍のシャツを脱がした。
それはほとんど破いたと言ってもいいほど乱暴で、ブチブチと音を立てボタンがいくつか飛び散った。
息を呑む忍を気にも留めず、四條は晒された肩口に齧り付く。

「いっ……痛、いよ……っ」
「黙れよ、誰が喋っていいって言った?」

そう凄まれてしまえば、忍は口を真一文字に結ぶしかなかった。
噛まれた痕はくっきり赤く腫れていた。
ズボンや下着も乱雑に取り払われ、照明の下、色素沈着の薄い小さな自身と慎ましやかな蕾が晒される。
恥ずかしさに顔を背ける間もなく、四條は忍の後孔に指を突き入れた。
固く閉ざされたそこをこじ開けるように奥まで無理矢理ねじ込まれる。
反射的に腰を引いたが、四條に引き寄せられ今度はがっちりと固定されてしまった。
まだ馴染まない内に指を二本に増やされ中をぐるりと掻き回された。
そうして四條はズボンの前を寛げ自身を取り出す。
反り立ったそれは今の忍には凶暴な凶器にしか見えなかった。
膝の裏を抑え込まれ脚を開かれると、お座成りにしか解されていないそこに一気に挿入した。

「い……っ!ぅっ……ん、っ」

忍は叫び出しそうになる激痛に必死に堪えた。
四條も流石に滑りがなく狭い内壁に動くことは辛いらしく、緩慢な抽挿を暫く繰り返す。
先走りで中が濡れてきた頃、激しい律動を開始した。
四條に圧し掛かられているため、その行為は繋がっているというよりか、忍が押し潰されているという方が正しい。

「ぅ……んっ……ん……ぅぅ」

一突きされる毎に忍からは苦悶の息が漏れ出る。
四條は内壁を抉るように強く腰を打ち付けた。
忍の自身はまるで反応せず、動きに合わせて揺さぶられている。
徐々に動きが速まり、室内はびたんびたんと乾いた音と苦しげな息に包まれる。そうして詰まった息と共に四條は忍の最奥に熱を放った。
ずるり、とまだ萎え切っていない自身を抜くと忍を担ぎ上げた。
寝室のベッドに投げ捨てると、髪を鷲掴みにし精液に塗れたそれを舐めろと命じた。
忍は恐る恐る口に含むと透かさず四條は根元まで押し込んだ。
むせながらも懸命に舐め取る忍にまだ気持ちが離れたわけではないと僅かな安堵感が湧いた時、鼻を啜る音が聞こえてきた。
体を離し見てみれば忍がぼろぼろ大粒の涙を零していた。

「今更泣いたって……許さねぇ」

台詞とは裏腹に随分弱々しい語気だった。

「ご、めっ……なさ、い」

しゃくり上げながら謝罪すると忍は子供のようにわんわん泣き始めた。
あまりの号泣っぷりに四條は違和感を覚える。

「落ち着け、一旦泣き止め。それでお前が何で泣いてるのか言ってみろ」

すんすんと鼻を鳴らしながらも必死に涙を塞き止めた忍は、胸の内を明かした。

「四條くんを怒らせちゃったから……僕が、僕のせいだよね」
「俺が何に怒ってるのかわかってんのか?」

四條はまさか、と思いながらも根本的な問題を尋ねた。
それに対し忍はより悲しげな表情を浮かべ震える唇で答える。

「ぼ、くがちゃんとできてなかった、から……料理だって、アルバイトだってちゃ、ちゃんとできてないのに……一人前になった気分でいた、から」
「は?……料理?一人前って……待て、お前の言っている意味がわかんねぇ」
「僕が大学を辞めたのは自分のせいだって、四條くん言ってたでしょ?だから責任感じて僕と一緒にいてくれたのかなって」
「はあ!?何だそれ!……つーか、お前もしかしてずっとそんな風に思ってたのか」
「ううん……実は最初の頃はね、もう一回四條くんが僕に償いをさせてくれるチャンスをくれたと思ってたんだ」

四條はこめかみを押さえ、嘘だろと吐き出す。

「でも多奈川くんに、何で一緒に暮らしているのかよく考えた方がいいって言われて……」
「多奈川って……岬か?岬と会ったのか?いつ?」
「あ、それは僕が風俗に行こうとしてるところをたまたま」
「あぁ!?風俗!?……おい、まず何でそんなとこに行こうとしたのか全部説明しろ」

ドスの利いた声に忍は青褪めながら、それまでの経緯を語った。
カフェで別れの際、多奈川は最後にと忍に言った。

「あの店に行くのはもう止めないよ。でもこれだけは言わせて。もう一度よく考えたら?何で蛍に一緒に住もうって言われたのか」

その言葉を受け、忍は結局例の店へ行かずに多奈川の言うとおりよく考えたのだ。

(確かに……どうして四條くんは僕なんかと一緒に住んでくれているんだろう?そう言えばわざわざ僕に謝りに来てくれた時……)

そこで忍ははっとした。
中途退学を気に病んでいる様子だったことを思い出したのだ。
本来なら忍は大学を卒業し、無難な会社に就職し働いていたことだろう。
しかし今となってはただの無職だ。
だからせめて忍が一人前になれるまで四條は世話をするつもりだったのではないか。
そう結論に至るまでを、忍はつっかえながらも全て話した。

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