ルフラン


本編



イーファが願っていた未来は訪れなかった。
森から戻ったイーファはオルディオに全てを語った。
森で見つけた不思議な結晶のこと。そこで出会った少女のこと。そして自分の身体が、完全なる女になったこと。
しかし、オルディオにとって見た目は森に行く前のイーファと変わりなかった。
徐々に亡くなった妻に似ていくイーファを見ているのが辛くなったオルディオは、イーファが構ってほしくて嘘を言っているのだと、そう思った。

「違うのです、違うのです、お父様。見てくださいまし。見て、くださいまし。」
「そこまで言うのなら、服を脱げ。そしてお前が女になったという、その証を見せてみろ。」

オルディオがそう告げると、イーファは父に命じられるがままに服を脱いだ。
露わとなった白い肌。
年端も行かぬ幼い身体。
その肢体は未発達といえど、完全に、完全に女性のそれであった。

「…おお…なんと…なんということだ…」

オルディオは驚きを隠せず、声を漏らす。
そしてイーファの頬に優しく触れた。
初めてだった。父に、優しく触れてもらえたのは。
そしてイーファはその夜、実の父に、抱かれた。
ソレが何を意味する行為なのか、知る前に。
オルディオは言った、「愛している、リフィルグ」と。
リフィルグとは、オルディオの妻の名だった。

「…お、とう、さま……」

私の名前はイーファです。イーファと、私の名を、呼んでください。
そうイーファが呼びかけても、オルディオは答えることはなかった。


19 戦乙女の誕生。


オルディオに変化が起きたのは、イーファと身体を重ねた翌日だった。
手の甲には赤い痣が浮かび上がり、その傍らに、薄い桃色髪の少女が佇んでいたのだ。
一体どういうことなのだとイーファに問い詰めれば、当然、イーファにもわからない。
もしかしたらあの城に答えがあるのではと、今度は二人で城に訪れれば、先日同様あの少女が立っていた。
そして少女は語った。
これは契約だと。
イーファにはあの結晶に触れたと同時に、結晶に宿る異能の力を行使する力を授かったと。
そして、イーファの前に現れた使い魔である少女はその力を具現化した一部であるのだと。
イーファと第三者が身体を重ねることで、イーファの力を媒体し第三者も同じく異能の力を持つ使い魔を行使することが出来るのだと。

「なんだと…では、不老不死の能力、なんていうのもあるのか…?」
「え、えぇ、なくは…ない、ですが…」
「イーファ!」

オルディオに問い詰められ少女が答えれば、次にオルディオはイーファに迫る。
小さな肩を無理矢理掴み、ぐいと強引に身体を前後に揺らす。

「お前、バドルと契約をしろ。」
「え、お、お兄さまと…ですか…?」
「そうだ。そして、不老不死の力を、我が息子に…愛しい我が息子に、授けるのだ!!」
「お、父…さま…?」
「そうと決まればさっそくバドルを呼ばねば、だな。そしてこの私の使い魔という女の能力も、さっそく試してみたいしな…ははははは…」

その時のオルディオの笑みは本当に楽しそうで。
イーファはうれしかったのだ。
楽しそう笑う父の姿を見れるのが。
父に触れてもらい、身体と身体を重ねるのが。
イーファにとって、それが父からの「愛」だと思ったから。
他の誰もが「それは愛ではない」と言えることでも、イーファにとってそれは紛れもなく「愛」だったのだ。
そしてイーファは、バドルと身体を重ね、美と命の化身、イズを彼女の身体を媒体して契約した。
オルディオは使い魔の力を使ってみるみるうちに軍を広げ、勢力を拡大していき、力を付けた。

「この力があれば…お前という存在が在れば…きっと、きっと世界は我が手に…」

イーファは、ユグドラシルと呼ばれるようになった城の中に一人、閉じ込められるようになった。
その存在を隠されるように。
大事に大事に。
子供が他の人に見つからないようこっそり隠された宝物のように。
それ以降、彼女は二度と、外へと出ることはない。

「まずは周辺国だ。あの化け物を利用して、逆に力をつけさせて、肥え育ったところをつぶした方が、効率がいい。」

口元をにやぁ、と半月状に曲げる。
その笑みはまるで悪魔のようだった。

「ヨトゥン国のロキ=ウガトルド……あいつを、利用するか。」

そして、その時はぐるりと、現在にまで動き出す。

 


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