ルフラン


本編



ヨトゥン国にて、将軍ロキ=ウガトルドを含む、犠牲となった兵達の追悼儀式が行われた。
数多く並ぶ棺を前にすすり泣く声が辺りから聞こえる。
今回の戦争は、ヨトゥン国とアスルド国双方の将軍が相討ちとなったことで続行が困難になり、無期限の休戦協定を結んだ。
事実上の戦争終結だ。
今後この二国が争う事はないだろう。
そもそも、ヨトゥン国はまだしも、アスルド国は実質オルディオが統治していた国だ。
オルディオ亡き今、国の維持すらも困難かもしれない。
ヨトゥン国に支配されていた国も、突然解放され、戸惑っている。
全ての国がいずれ存在しなくなる日も、近いのだろう。

「憎らしい程、青い空だ。」

ユーリは青空を眺めながら、忌々し気に呟いた。


16 真実へ辿るために。


氷の森、そこに真実がある。
ウガトルドは死の間際確かに、そう言った。
そして二人はついに、ずっと疑問に思っていた全ての真相へ辿り着く為、氷の森へと入り込む。
森の中は眩しい程に輝いていて、全ての色を奪っていた。
氷で出来ている森なだけあり、はぁ、と息をつけば白い吐息が口から漏れる。
森の中を歩くユーリの手には巨大な剣が、そしてクロスの手には巨大な鎌が握られている。
どちらも使い魔の忘れ形見だ。
契約者ではない二人にとってこの武器は外見相応の重みではあるものの、元々それなりの訓練を受けている軍人なのだからこれくらいは大したことではない。
森の奥へ奥へと歩き進めば、巨大な水晶で出来た城が佇んでいる。
通称ユグドラシル。
ウガトルドの言う真実というのは、此処にあるということだろうか。
しかし目の前を巨大な氷で出来た茨が覆い尽くしているため、先へ進むことが出来ない。

「これじゃー進めないな。どうする?ユーリ。」
「任せろ。」

ユーリはそう一言言うと、手に持っていた巨大な剣を力強く握りしめる。
すると、その剣を包むように青白い炎が浮かび上がった。
青い炎で包まれた剣を振るえば、その炎は氷の茨を覆い尽くして氷を解かす。
みるみるうちに氷は解けて行き、茨で覆い塞がれていた橋が露わになった。
その光景を見て、クロスは思わず唖然とする。

「おい、ユーリ。お前の剣、そんな力あったのか?」
「いや…わからない。でも、あの使い魔が出していた炎は普通の、赤い炎だったような…」
「使用者によって変わるんじゃないのか?」

クロスの意見もあながち間違ってはいないのかもしれない。
しかしユーリには、予感があった。
この青白い炎の正体は、決して剣からもたらされるそれではない、と。

「とにかく進もう。強引なのは好きではないが、仕方ない。」

ユーリがそう言えば、クロスもう頷き橋を渡る。
橋を渡り終えれば、水晶で出来た巨大な扉が二人の行く手を再び遮る。
次は私が、とクロスが鎌を振りかぶった時だった。

「クロス!!上!!」

ユーリがそう叫び、クロスは慌てて鎌を扉ではなく上へと構え直す。
ぎぃん、と金属がぶつかり合う音が響き、鎌に重みがのしかかった。
見ると、鎌で受け止めた重みのあるそれは、とても巨大な槌だ。
槌を薙ぎ払えば、その使い手である少女の姿がゆらりと浮かび上がる。
薄い翡翠の髪に金色の瞳。髪は上で一つに縛っていて、お淑やかなドレス風のワンピースとは裏腹に活発そうな雰囲気を漂わせている。

「…っ」
「クロス?」

突然膝から崩れ落ちるクロスを不信に思いユーリはクロスへと寄り添う。
見ればクロスの身体を微弱な電気が包んでいて、その電気のせいで身体が痺れてしまったようだ。

「…直接攻撃するのは危険、ということか。」
「おい。私を見て分析するな。少しは心配したらどうだ。」
「してるしてる。すごくしてる。」

恨めしそうに睨むクロスに棒読みで答えると、ユーリはぶん、と剣を振るった。
少女はにこりと微笑むと、深々とお辞儀する。

「ハジメマシテ、僕はルート。イーファさまに仕える使い魔の一人。茨を解かし侵入したあなた方を処分しに参りました。」

にこりと笑みを浮かべて少女は答える。
まぁ、そう易々と城の中には入れてもらえない、ということだ。
ユーリは口元ににぃ、と笑みを浮かべ、剣を青白い炎で包む。

「クロス、お前は身体の痺れが取れるまで下がっていろ。コイツは…私がやる。」

剣を握れば、どくんどくんと、心臓の鼓動が熱くなる。
この鼓動は何なのだろう。

(興奮しているのか、私は。こんな戦いで。否、でも、これは。)

心の奥から湧き上がるものを感じながら、ユーリは剣を振るい、炎を放った。

 


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