賭博四天王編


第1章 犠牲となった子どもたち



目を覚ますと、まず耳に入るのは雨の音。
窓や床に水がぶつかり弾ける音が心地よく聞こえる。
まだ眠気眼になっている目を擦り、此処何日かずっと続いている雨空を見た。
外の景色を見て、しみじみと思う。
屋根のある場所で生活出来ると言う事が、どれ程幸せなことなのかと。


第9賭 雨の音


いくら毎日雨が降り続ける弥瀬地といえど、流石に傘をささずに歩く者は少ない。
湿気が多く、どちらかといえば温暖な気候の弥瀬地では、カレンダー上では既に年が暮れようとしている時期なのに、空気が生暖かい。
だからこそ、自分達のような子供が外で寝泊まりしていたとしても、生き延びられるのかもしれないが。

「不火架。朝だよ。」

隣で一枚の布に来るまって眠る不火架の肩を揺さぶると、うーん、と唸るような声を漏らす。
飽きれるように溜息をつくと、壊覇は伸びをしてから起き上がり、外の様子を伺う。
強く降り注ぐ雨で視界は不鮮明であったが、食べ物を買いに行かなくては今夜食べるものもない。
こんな雨では流石に外で眠る酔っ払いも少ないし、こんな幼子ではバーで酒注ぎも出来ないだろう。
どうしようかと悩んでいると、間抜けな欠伸を漏らしながら不火架が起き上がって来た。

「起きた?」
「起きた。」

まだ眠気眼な目をごしごしと擦る。
おぼつかない足取りで壊覇のもとまで歩くと、不火架も同じように窓の向こうを覗きこんだ。
何も見えないとわかるとすぐにそっぽを向き、うんと伸びをする。

「で、どーする?」
「今日は雨も降ってるしね…例の双子っていうのも探してみたいけど。」
「あ、俺も知りたいな。居るかなー?」
「わかんない。探してみる価値はあるかなぁ。」
「でも、こんな雨の中いるかね。」
「ばーか。こういう天気の時は俺達みたいな奴のがうろちょろしてんだよ。」
「それもそーだ。」

不火架はにっと、年相応の悪戯じみた笑みを浮かべると、壊覇とパシっと音を立ててお互いの手を合わせた。
ポツポツと、雨が降る。
その水音はまるで空から奏でられる演奏かのように何処か耳に心地良い。
目を閉じて、鋼屡と矩鬼は静かにその音を土管の中で聞いていた。
弥瀬地は通常の冬よりも暖かい。
けれどもそれはあくまでほんの少しであり、まだ幼い二人にとって、しかも薄着の状態では当然体温も奪われる。
二人はこれ以上体温が逃げないよう、寄り添っていた。

「ちょっと、寒いね。」
「ね。」
「どうしよっか。」
「おなか、すいたね。」
「ご飯、取りに行く?」
「行こうか。」

顔を見合わせて頷くと、土管の外へと出る。
降り注ぐ雨が冷たいが、心地良い。
雨は好きだ。
嫌なことも、苦しいことも、汚いことも、全部洗い流してくれるような気がするから。

「じゃぁ、行こうか。」
「うん、行こう。」

二人は顔を見合わせると、うんと頷いて裏路地から人の波へと潜って行く。
二人と二人が出会うまで、後少し。

 


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