すれ違いに気付けない


「硝子、最近姉さん治したかい?」
「名前?んー呪霊弾けた時が最後だなぁ」
「見かけもしないんだけどアイツ生きてんの?」

何事もなかったかのように平和だった。
名前って存在してんの?あれ夢なの?くらい会わないし、傑も硝子も不思議に思っているみたいだ。
しょうがないと溜め息を吐いて傑は携帯を開いた。

「姉さん来るって」
「早くない?何て言ったの」
「呪霊取り込むって言ったらすぐ行くってさ」
「夏油愛されてんなぁ」
「…弟だからね」

机の上に転がしている呪霊を眺めながらぼそりと呟いた。葬式かよ。
んな顔するくらいなら弟なんか辞めろ。
名前が姿見せないのも傑が悩んでるの気付いてるからじゃねぇの。
あーこの姉弟をどうするべきか。

「ーーお待たせ。その三つ?」
「姉さん、最近忙しいの?大丈夫?」
「また怪我雑に治してるんじゃないよね?」
「んー別に普通に生活してるよ」
「オマエ、何か雰囲気違くない?」
「あ、タイツに変えた。似合う?」
「え…まぁ、似合ってんじゃね」
「は?五条…お前、後で顔貸せよ」

硝子にじとりと睨まれた。
傑は良くて俺は駄目なのかよ。
まぁ隠す気もないし別にバレたところでどうでもいいけど。
それにしても今日も綺麗だ。黒ストッキング?タイツ?も真っ直ぐで長細い足の輪郭を際立たせていて最高。
でもそれだけじゃないんだよなぁ。
元気ないような?何か別の違和感を覚えた。

ふわりと名前の呪力が放出される。
呪霊を両手で包んで瞳を閉じた。
すげぇ。俺以外でこんな繊細な呪力コントロール出来る奴初めて見た。
六眼も無しに此処までになるにはどれだけの努力をしたのだろうかと思うとやはり傑はもう少し褒めてあげてもいい気がする。

「はい、これで味しないと思う」
「…姉さん何か隠し事してないかい?」
「…ちゃんとするから嫌いにならないで」
「ちゃんと?何を?私が姉さんを嫌いになる訳ないだろう?」
「あ…うん。そうだよね。なら私戻る」

まるで傑に触れるのを避けるように小さくなった呪霊を机にそっと置いて教室から出て行った。

「夏油なんかあったの?名前らしくないじゃん」
「…分からない。でも避けられているね」
「それ私もだよ。今だってこっち見もしなかったわ。名前怪我隠してたりしないよな?」
「俺が見た感じ怪我とかしてないと思うけどなー」

反転術式を使った感じもしなかったし怪我はしてないと思うけどあのよそよそしい感じ何なの?傑の前じゃいつも瞳キラッキラで笑ってたじゃん。
それにちゃんとするって何を?怪我しない様に気をつける?んーそんなんじゃないか。
しゅんと眉を下げて泣きそうな顔はこの前と同じ様だけど何かが違った。

「…本当に味がしない」
「それ出来た時さ、笑ってくれるかなってアイツ浮かれてたよ」
「そうか…もっと、弟らしく甘えないとね」
「てかさっきから何なの?夏油が今更弟とかキモい」
「…は?硝子、何が言いたい」
「お前が名前を姉として接してるとこ一回も見た事ない。それは名前も同じだよ。だから喧嘩でもしたのかって聞いてんの」

ごもっともだった。
初めて見たときから普通に付き合ってる様に見えたもんなぁ。
あーこれ俺に勝ち目ないだろ。
でも気持ち伝えるくらいはいいかな。きっと恋なんて最初で最後になるんだろうし。

「俺、名前に告白する」
「はあ?!五条今の話し聞いてた?てか本気なの?」
「もー本気も本気!傑がそんなんなら俺が貰うけど良いわけ?」
「…姉さんがそれでいいならいい。私は姉さんの大切な弟だからね」
「はぁ。もう付き合ってらんないわ」

窓の外に目線を移した傑と携帯を弄り出した硝子を置いて教室を出た。
俺がフラれたら傑も考え直すだろう。
結局は傑と名前が笑ってくれるのが一番だ。そう思える自分は嫌いではない。
恋ってゆーかこれは最早愛じゃね?
玉砕しに行くというのに足取りは軽かった。


「は?!え?今なんて?」
「ん?聞こえなかった?」
「え…まじ?」
「この前の事も蛇の事も分かって言ってくれてるんでしょ?いいよ」


どういう事か、あっさりと俺の初恋は実ったらしい。



  
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