犬も食わぬ話@





「もしもーし、名前?今夜何してるー??」
「予定ないけど」
「ご飯行かない?」
「行く〜。何時?」
「19時くらいに家に迎え行くよ」
「分かった。ありがと」
「じゃあ、夜にね」

やったぁぁ!!!悟に会える!!
嬉しいっ!!!
思わずスマホを抱きしめる。
はぁぁぁ〜声にこの嬉しさを出さなかった自分を褒めてあげたい。
よし!とりあえず半身浴してボディスクラブして、あ〜何着て行こうかなぁ。


お湯に浸かりながら考える。
悟に会うのは三週間?いや一ヶ月ぶりかな?
まぁ所詮セフレなのだから定期的に会ってくれるだけで有難いのだが。
私は高専卒業後フリーの呪術師として働いている。悟とは同い年だけど私は京都高専なので卒業するまで大した関わりは無かった。
まぁ連絡先くらいは知ってたけど。 

フリーになって暫く、関東の仕事の頻度が多い事に気付いて拠点を東京に移した頃だった。
祓呪の依頼が来た。
詳細には五条悟の補助と書かれていて呪術界最強の補助?必要か?と思ったけど、報酬に惹かれてOKを出してしまっていた。これが私の大きな間違いでした。
いやぁ、本当五条悟舐めてましたよね。
特級呪霊も気づいたら祓われてるし、私なんか一級二体祓っただけで、あとは眺めていたら、30分も掛からず終わっていた。
何故かそのままご飯に行く事になって朝起きたら悟のお家だったんだよね〜。
緊張で飲み過ぎたのまではいいんだけど、起きたら所々忘れちゃってて、でも悟は相性最高じゃない?とか言ってくるからまぁいいかと思って何も聞けてない。
記憶なんて中々飛ばさないのにどれだけ飲んだんだ。
まぁそんなこんなで食事からの悟の家パターンの出来上がり。
最初はそれでも良かったんだけど、楽しい食事の時間や善すぎるセックスを繰り返してると普通に好きになってしまいますよね。
いや、あれを好きにならない女子いないでしょ?ワタシワルクナイ。自然の摂理だと思う。うん。
という訳で悟に面倒臭い女だと思われないようにいつも平静を装っております。


「名前〜後五分で着くよ」
「りょーかい」

いつも着く前に電話くれるところも優しくて好きだなぁ。
オイルティントを塗り直してエントランスに降りる。

「悟〜お疲れ様」
「お疲れ様!今日は和食にしたけど大丈夫だった?」
「もしかして前に行った小料理屋さん?」
「せいか〜い!」
「また行きたいって思ってたの!流石悟!」
「僕は何でも出来ちゃうGLGだからねぇ」
「はいはーい」

つき出しから美しくて美味しい。上品な味付けにお酒も進む。雰囲気も堅苦しくなくて好きなんだよね。子持ち昆布最高。

「それで高専所属の件考えてくれた?」
「うーん。悟から聞く限りブラック過ぎてねぇ。まぁ報酬は今より数倍にはなりそうだけど」
「一応一級術師だからそれなり忙しいのは否定しないよ」
「一応は余計ですぅ」
「でも僕との時間は増えると思うけど、どうかな?」
「んぐっ!それ、は、嬉しいですね?」
「何で疑問系なの」

日本酒吹き出すところだった。危ない。
んーと?予定が合わせやすいって事かな?
抱いてくれるのは嬉しいんだけどね。
私のメンタル的に月一が丁度良い。これ以上会ってしまったら欲が出てきてしまいそう。

悟の家でシャワー浴びてる時にチラッと排水溝見てしまったり、洗面台にわざと忘れて帰ったコンタクトケースが捨てられてないか。
私以外のタバコの吸い殻がないか。とか。
他の女性の痕跡探してセフレは私だけなんだって安心している自分が酷く惨めでやるせない気持ちになる。
それが分かっていても会いたいと思ってしまうのだから愚かだよ。本当に。

「まぁ、でも。休みは欲しいから私にはフリーのほうが合ってるかな」
「休みは何とかしてやれるよ?けど名前が今に満足してるならしょうがないかぁ」
「うん。選べるくらいには依頼回ってくるしね。高専からもたまに来るよ」
「人手不足はどうしようも無いからね〜。さて!そろそろ僕は任務に行くから、送って行くよ」
「え?!今から?ブラックすぎない?」
「ははっ!本当人使い荒いよねぇ」

タクシーで帰ると言い張ったけど結局家まで送ってくれた。このパターンは初めてだった。抱いてくれなかった。
本当に任務なの?
私が高専の件を断ったからだろうか。最初から勧誘するつもりだった?もう飽きてしまった?好きって気持ちがバレた?
いや、理由なんて何でもいい。
悟がまたねって言わなかったのが全てだ。
終わっちゃったな。失恋すら出来ない関係だった事に失笑する。
タブレットを開いて来ていた依頼を見返す。
リゾートホテル建設予定地の調査と祓呪。
三泊四日程度かな。丁度いい。
こういう時は忙しくして忘れるのが一番だ。





「五条、その顔うざいんだけどやめてくれない?」
「はぁー?僕の御尊顔がうざい何てあり得ないでしょ」
「その如何にもイライラしてます!みたいな顔やめろって言ってんの」 

そんなに顔に出していたつもりは無かったんだけどな。
月一くらいしか会えないのに連絡もして来ないってどういう神経してんの?
そういう焦らしプレイなの?
名前も忙しいんだろうなって思ってたけど、休みは譲れないって言い方からしてもちゃんと休みを取れてるみたいだし、その休みくらいは僕に連絡くれても良いよね?

「えーだって名前ぜんっぜん連絡くれないんだもーん」
「はぁ。そんな事だと思ったよ。お前から連絡すれば良いだろ」
「硝子なんか僕の事聞いてないの?」
「特に。あ〜でも明後日、飲み行く約束はしてるよ」
「えーそれ代わってくれない?」
「嫌。殺されたくない」
「あ〜怒ったらヤバいもんね」


名前に出会ったのは交流会の時。
それこそ地形までもボッコボコにしてやってそろそろ終わりかなと思っていた時に銃弾が右頬を掠めて行った。あと少し気付くのが遅れてたら普通に死ぬところだった。無下限突き破って来たのだ。
頬から垂れた血をみて興奮し切った僕は銃弾の呪力を走りながら辿って見つけた女に蒼を放とうとした。
瞬間、黒髪に薄紫の瞳の女はにたりと笑い、閃光弾が目の前に急に現れて弾けた。
完璧に油断していた。閃光弾なんて僕の瞳には何の意味もないと目を瞑らなかった。
けど、ただの光じゃなく中に呪力で膨大な情報が仕込まれていた。あの女がさっき使ったであろうスナイパーライフルの歴史や構造から素材の成分まで。それにあの女が今日朝食に食べた物など、どうでもいい情報に満たされて一瞬、頭痛に目を瞑ると女はもう居なかった。
術式に興味を持ったのは勿論だか、にたりと笑った彼女の顔が忘れられない。
もうそれからは転がり落ちるように恋に落ちた。
硝子が仲良いって知って、何とか連絡先教えて貰うまでは行ったけど名前には絶えず彼氏がいたし、京都高専との交流も年一しかなくて彼女と関われる事がなくなっていった。

「キレると直ぐに銃だして来るからね」
「え、硝子に?」
「いや、しつこいナンパされた時に男のこめかみに銃突きつけてた」
「マフィア映画かよ」
「でも目はまじだったから。ウケるでしょ」
「ククッ!想像出来過ぎてウケる」
「でもまさか五条とね〜。いや、アイツ結構面食いだったか」
「ちょっと、それは初耳なんだけど」


彼女がフリーランスになった事を硝子から聞いた時、すぐ様依頼を出した。
相変わらず銃をぶっ放していたけど、気怠げに僕を見つめる薄紫の瞳に風に靡く艶やかな黒髪があの頃の気持ちを思い出させてくれた。
食事に誘うと意外にもOKを貰えたのでこれは脈ありなのでは?と期待したら期待以上だった。すんごいハイペースでワイン空けてたけど顔はちょっとピンクになったくらいで口調は変わらないしそれ程酔ってない様に見える。

「頬っぺ、すべすべだね〜」
「でしょ?全身すべすべなんだから」

彼女の滑らかな肌に我慢できなくなってつい頬に手を伸ばしてしまった。嫌がる様子もないのでそのまま頬を撫でる。

「全身脱毛済みだからね〜。下もツルツルだよ」
「…え?なんて?」
「ん?気になるの?」
「……気になるって言ったら?」
「ふふっ。悟ならいいよ」

あの時と同じ様ににたりと笑った彼女に理性がぐらりと揺らいだ。
家に連れて帰るなり名前に触れるだけのキスをすると、僕の首に手を回して口を開ける彼女。僅かに残っていた理性なんて一瞬で塵になった。

噛み付く様に口付けると舌を追いかけて絡ませてくる名前に背筋がゾクゾクとした。
下着だけを残した彼女を抱き上げて寝室に連れて行く。その間もキスをせがむ名前に下半身が悲鳴を上げる。

それからはもう控えめに言っても最高。
声も表情も身体も僕の為に存在してるんじゃないかってくらいに最高だった。
好きな女だからだろうか。
こんな幸福で強烈な快楽は初めてだった。
素肌のまま抱き締めて彼女の額に唇を落とす。

「ねぇ、名前。僕さ、高専の時からずっとお前の事好きだったんだよね。」
「え?知らなかったなぁ」
「シちゃった後に言うのもあれだけど、僕と付き合ってくれないかな」
「うん。いいよ」
「はぁ。ねぇ、もっかいシていい?」
「ぅんっ」

返事を飲み込む様にキスをした。








  
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