掴み取った光


彼女と出会って二週間がたった。
初めのうちはよそよそしかったが、三日もすれば僕の軽口をスルーするくらいには馴染んでいた。

あれだけ垂れ流しだったフェロモンも呪骸を使った特訓によって今ではピタリと止んでいる。
一か月はかかると思っていたから驚いた。名前は凄く要領が良い。
呪力のコントロールもそうだが、家事も一通り卒無くこなす。初日に必要な物を買いに行く事になり、勿論僕が全額持つつもりだったが、預金は海外に移してますので、引き出しても追跡される事はあり得ません。と言って驚かせてくれた。そんな彼女が何でクズ野郎に捕まっていたのか疑問で仕方ない。


「五条さんお帰りなさい。」
「ただいま〜!ねぇめちゃくちゃ良い匂いするんだけど!」
「分かる?」
「ロールキャベツでしょ!?」
「昨日テレビ見て美味しそうって言ってたから」

ふふっと笑う彼女は出会った時には想像出来ないくらい穏やかに笑う様になって、可愛い。可愛い?
うん、まぁ見た目はもともとタイプではあるけど。うん。そうか、可愛いか〜。

僕が早く帰れそうな時はこうやって二人で食事をするようになった。
名前はお酒が好きらしくほとんど食べずに僕が食べるのをゆっくりお酒を飲みながら、にこにこと眺めている。その時間が案外心地良い。
一泊くらいの案件なら秒で終わらせて家に帰って来てしまう程に。

「さて、呪力のコントロールも出来るようになったし、名前はこれからどうしたい?」
「私に選択権あるの?五条さんは見えてると思うんだけど、……私呪われてる」
「へぇ。何でそう思った?」
「夢を見るの。力を使え、あの男を殺せって。」
「残念ながら、それは呪いじゃないよ」
「え?」
「何と!君のご先祖様の平将門でした〜!」
「え??なんて?」
「いや〜本当そこまで辿るの本当大変だったよ(伊地知が)。異性に執着されるようになって君を守ろうと例の呪力が溢れたんだろうね。まぁクソ野郎には逆効果だったけど。」
「…呪霊に引き寄せられたのは?」
「あの時、助けて逃げたいって思ったんでしょ?それがトリガーになって名前がトんだんだよ。呪霊に引っ張られたんじゃなくて、最強の僕を助けに選んだって訳」
「そ、うなんですか」
「まぁ〜ここ二週間は信じられない事ばかりだっただろうけど、これが事実だよ」

名前は驚いているような納得しているような様子だ。
三代怨霊の子孫なんて驚くよねぇ。
でも呪力の量もコントロールもこれで説明が着く。呪力のせいで見え辛かった術式も分かって来たし、あとは彼女がどうしたいか。

「少し、考えたい。」
「うん。僕は先に寝るから、ゆっくり考えるといいよ」

久しぶりに一人でベッドに横になる。
あ、勿論いやらしい事は何もしてないし、互いがソファーに寝るのを譲らなかったから一緒に寝てただけだけど。僕の身長に合わせてあつらえたこのベッドはこんなにも広かったっけなあー。
彼女の人生は彼女が決めるべきだ。
僕は気付き始めた気持ちに蓋をして目を閉じる。

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