ホグワーツ魔法魔術学校の新学期は九月一日。

話によると、今日は八月三十一日。ということは、明日から学校が始まるということだ。

明日からと言うがもう外は暗く、一日の終わりを告げている。

ホグワーツにハリーと一緒に入学させるつもりだったのであるのなら、なぜもっと早くに告げてくれなかったのかと思ったが、今さら言っても仕方がないだろう。

急であるがルシウスとシシー宛に、ホグワーツに入学する旨の手紙を書いて送った。

アルバスに入学時に必要なものの準備について尋ねれば、それはすべて揃えてくれるとのことだった。

身体が以前より成長しているので制服は新調しなければいけないが、それもしてくれるらしい。

新しいサイズの制服は明日の出発前までにこの邸に届けてくれるとのことだ。

私はとりあえず、明日の十一時までにキングズ・クロス駅の9と3/4番線に行きホグワーツ特急に乗ればいいらしい。

何でも用意してくれることに申し訳なくなり、私はいてもたってもいられなくなる。

そんな私の気持ちを察し、アルバスはせめてもの感謝の気持ちだと言ってくれた。

それから少しの間、彼らはこの邸にいてくれた。

アルバスは以前と変わらず、私のことを孫のようだと言い微笑んだ。

マクゴナガルは警戒した様子だったが徐々にそれを解いていった。

セブルスはずっと黙ったまま、複雑な表情で私を見つめていた。

彼らが帰ると、部屋には私とナギニが残された。

静かな空気に包まれ、私はゆっくりと息を吐く。

ナギニは視線をこちらに向け、細められた瞳孔の瞳で私を見た。



『いいのかい?』



ただ一言、ナギニは私に投げかけた。

それは私がホグワーツへ入学することを言っているのだろうか。

もう一度罪を滅ぼすかのように入学し、守護者としての道を進もうとしていることを。

その言葉に、私は小さく笑みを綻ばせた。

心配してくれているのだということを感じ、胸が自然と温かくなる。



『大丈夫ですよ。ちゃんと、考えて決めたことですから…。』



すべてを守るために、惜しまずに努力しようと。

私はまだ彼らの未来を覚えている。これから起こる、出来事も。

私は知っているという責任を果たさなければいけない。

ぎゅっと胸の前で手を握り、私は瞳を閉じた。

不安が欠片もないのかと聞かれれば、それには首を振る。

不安はある。いや、むしろ今の私は不安に押しつぶされてしまいそうだ。

けれどそれを決めたのは他でもない自分だ。目を背け逃げることは許されない。

瞳を開けナギニを見れば、ナギニはじっと真剣な瞳をしていた。

私はそんなナギニに微笑み、ベッドの上に横になる。

明日の今頃は、ホグワーツ城に到着し大広間に案内されている頃だろうか。

ぼんやりと考えて、私は口元を緩ませた。

不安はあるが、それでも楽しみでもあった。

それを感じる余裕は、きっと今日が最後な気がした。

学校が始まれば、また責任に押しつぶされそうな気分が襲ってくるに違いない。

私は身じろぎをして、顔を枕に埋めた。

すると、枕を掴んでいる腕の下を何かが這った。

ふと顔を向ければ、ナギニの姿がある。



『ナギニとも、今日でお別れなんですかね…。』

『どうだろうね。それはまだわからないさ。』

『…できれば、離れたくないです。』



クスクスと笑ったナギニに、きゅっと心臓が切なく縮まった。

離れがたい気持ちがわき上がってきて、私は腕にもぐり込んできたナギニに身体を寄せる。

そんな私にナギニは笑みを深めた。



『寂しいのかい?』

『ぅ、ん…。』

『甘えん坊だねぇ。』

『…うん。』



そう言いながらも、ナギニは抱きしめ返すように尾を私の背中に寄せた。

ひんやりとしたナギニの身体が頬にあたり、私は目を細める。

あやすようにナギニは私を受け止め、背中を撫でてくれた。

いつの間にか私のまぶたは下がっていて、そのまま眠ってしまった。

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