07
「マナト‥絶対領域ヤバいな。」
「…………あっそ。」
「ツンデレ!!谷本君はツンデレを分かってるね!!ちょっと照れ気味に冷たい態度を取るのはポイントが高いよ!!!」
横でウルサく解説する長谷を見てコスプレをした事を後悔した。
むさ苦しい男子生徒の中、一人だけメイド服を着た俺と興奮気味に騒ぐ長谷は嫌でも目立つ。
皆の視線が痛すぎて涙が出そうだ。
取り敢えず立ってても落ち着かないので近くの椅子に座った。
「…長谷、喉渇いた。」
「只今買ってきます!!」
長谷は元気よく言うと教室を走って出て行く。
オタクの癖によくあんな走れるよな。
「愛斗君…女王様みたい。」
「はぁ?」
野口の言葉に一瞬眉を寄せる。
しかしよくよく考えてみれば今の状況は異様な光景だっただろう。
奉仕する筈のメイドが笑顔のオタクをパシリにするなんて‥そんな話聞いた事がない。
俺は苦笑いしてから「アイツはドエムだから喜んでやってるんだよ」と適当に返した。
「にしても萌え萌えだな。マナトってちっちゃいから何か可愛いわ。見た目だけ癒し系。」
「見た目だけってどういう事かな?」
「さーせんでした、中身も可愛い癒し系です。」
不満げに池内を睨めば、面白そうにニヤニヤと笑われた。
…俺の周りはニヤケる奴が多いのか、そうなのか。
「てかグッチー、さっきからマナトの足見過ぎだろー。」
「…いや、見てた事は否定しない。愛斗君の絶対領域のエロさにクラクラしてる最中だ。」
どんな表現だよ。
仮でも良いから否定してくれ。
今も野口…や山口、その他の視線は俺の絶対領域という場所に注目されている。
池内、お前を見直した!
池内だけだ!!
俺の目を見てくれる奴は!
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