02
池内とCDショップへ行った日のこと。
「あ、格好いい人だ。」
「ん?誰それ?」
その時もたまたま視界に入った野口を見て自然に「格好いい人」と言っていた。
俺の視線の先を見た池内は誰の事か分かった様で「グッチー!」と言いながら近付いていく。
それに俺も着いて行った。
俺達に気が付いた野口はCDを片手に手を振ってきて、遠目に見ても近くで見てもやっぱり格好良かった。
「何?CD買うの?」
「おう、新曲発売されたから。これ今から買う。」
「へぇ〜、‥てか俺知らねぇわ。その人。」
池内が知らないのも無理はない。
結構マイナーなバンドだし、相当音楽が好きじゃいと知らないと思う。
音楽…と言うかバンド好きな俺は、そのマイナーバンドを知っているんだけど、実は名前だけで曲は聞いた事が無かった。
「そのバンド好きなんだぁ‥俺も聞いてみたいな。」
「マナト知ってんの?」
「まぁ‥名前だけ。」
「え、このバンド知ってんの?俺、知ってる人に初めて会ったかも。」
驚いた様に言う野口が意外だった。
そんなに驚く事でもないだろうに‥
「でも曲は聞いた事ないんだよなぁ。…そだ、今度CD貸してよ!」
「マジか‥!いいよ!てか全部貸すし!」
「うん、ありがと!」
その時俺は初めて野口の笑顔を見た。
キラキラした笑顔。
貸してってお願いしただけで嬉しそうに笑うなんて、よっぽどそのバンドが好きなんだろうなぁ‥と思った。
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