小説 | ナノ


▼ U

ユースタス=キッドは校則違反の常習犯である。
真っ赤な髪(本人は地毛だと言うが疑わしい)にチャラチャラとしたチェーンを巻き、他校ともイザコザが絶えない、模範的な不良である。
一方のトラファルガー=ローは、校内でも優秀な成績を残し、大人しい生徒だ。
敢えて言うならば両耳にピアスを二個ずつ着けていることだろうが、面倒を起こしたことは無いのでスルーされている。

こうした真反対に等しい二人が関係を持ったのはとある事件がきっかけだった。

「ラッキー、鍵空いてんじゃん」
適当な空き教室の扉を開け、埃まみれの机の上にキッドは荷物を降ろした。
ガラリとローは扉を閉めるなり、ペタリと床にうずくまった。

「トラファルガー!?」
「……っ、あー……ヤバか、った……ぁ!」

両腕でローは自分を抱きしめ、深呼吸をする。
心臓がドクドクと脈を打ち、身体に熱が灯る。

「お前さ……また薬盛られたのかよ」
「うっせー……俺が、悪いんじゃ、ねぇ……し…ッ」
「そうだけどよー、この前から一週間しか経ってねぇだろ」
「も、いいだろ……とっとと、抱け、よ」
「……わーったよ。早く終わらせてぇもんな」

小さく舌打ちを打ち、ローのシャツのボタンを外しはじめた。

――
数ヶ月前のことだ。
たまたま置き忘れてしまったケータイを取りに放課後の教室にキッドが入ると、同じクラスメイトのローが苦しそうに隅でうずくまっていた。
互いに属しているグループも違い、あまり話したことは無かったが、一応は声をかけた。
気にすんな、ほっといてくれ、と言っていたローだったが、明らかに様子がおかしいので問い詰めてみたところ、思いもよらない事実が告げられた。

ーー薬、入れられたんだよ。

何を言いだすんだとキッドが眉をひそめると、

「多分、家の奴……つっても心当たりは一人しかいねぇが……」
「へ、へぇ……。でも何で家族に」
「血、繋がってないから」

ぞわりと触れてはいけないものに触れてしまった気がし、それ以上、キッドは何も聞かなかった。
どうしようかと考えた矢先、ローがキッドの胸ぐらを掴んだ。
咄嗟に突き飛ばそうとしたキッドだったが、蒸気した頬に涙目で見上げたローの顔を見た途端、わずかに邪な心が生まれてしまう。それに気づいたのかどうかは分からないが、ローが言った。

――ヒマなら、ちょっと付き合えよ。


今思う。
あの時、俺は突き飛ばすべきだったのだと。

「ユー、ス…タス、屋……はや、く……」
「そんなにがっつくなよ」
「脱がす、の……遅えんだよ……バカ」
「テメェ、人が汚さないよう親切にしてやってんのにバカはねぇだろ、バカは」

キッドが丁寧にスボンとシャツを脱がし、ローの全身が露わになる。きめ細かい白い肌に、ぷっくりと膨らんだ乳頭が主張している。それを指でピンッと跳ねると、ローの口から甘い吐息が漏れた。

「男のくせに敏感なのな。ここ」
「う、ッ……あっ、やめ、ッ!」
「気持ちいいくせに」
「あッ、ンん……アぁあアっ!」

キッドがギリリと少し強く抓ると、苦しそうな顔でローが高い悲鳴をあげた。軽くイったらしく、はぁはぁと肩を上下して息を切らしている。
――薬の効果ってスゲえのな、と妙に感心してしまう。
普段のローは無表情で淡々とクールな態度でいるのだが、今自分の目の前に座っている男はあどけなく顔を傾け、火照った身体に潤んだ瞳で物欲しげにこちらを見つめている。
本人は無自覚なのだろうが、それがまた煽られるというか何というか。
どちらにせよ、凶悪なことに変わりない。
「俺はノーマルだっつうの……」
ポツリと小さな抵抗を呟くキッドだったが、欲望じわじわ広がっていくのは否定できない。

「は、や……く……ッ! ユース、タス、屋ぁ……っ!」
「後ろ慣らさなきゃ無理だろうが」
「ひ、ァ……ッあ、あっ、ン、ンンッ!」

つぷりと難なく受け入れていく後孔の奥にある一点を押すと、ローの背中がビクリと跳ねた。そのまま休むことなく、ぐちゅぐちゅと注出を続けると、喘ぎ声が高くなる。

「ヒ、いぁっ! アぁああアッ! ユース、タスッ屋っ! そこ、やぁっ!」
「うるせぇな……早くイけよ、淫乱」
「あ、違ッ……っあぁ!」
「後ろに指突っ込まれて感じてるくせにか?」
「これッ、……は、クス、リのせ…ぃ、でッ!」
「はん。そういうことにしといてやるよ。ほら、出せよ!」
「ッひ、ぁ、あぁあアぁあーーッ!!」

中指でくんっと強く前立腺を擦ると、足の爪先が針金が通ったかのようにピンと伸ばし、白濁の液体がピュルリと吐き出された。
手にかかったそれをキッドが舐めると、ローの身体がかぁっと更に赤く染まる。

「……汚ねえから、拭け、ばいい、だろッ!」
「めんどくせぇからいいんだよ。それよりまだ足りないんじゃねぇの?」

ほら、とローの首筋に噛み付くとしょっぱい味がした。
ヌルリと這う舌に、またしてもローの身体が疼きだす。

「も、挿れ……て、いい、から……」
「さっきからそればっかだな。――他の男にもそうやって強請ってんのか?」
「なっ……んなわけねぇだろッ! バカか、お前!」
「……どうだか」

意地の悪い言葉をローにかけると、どういうわけか次から次へと加虐心が湧き出てくる。

「俺が相手っていうのも偶々あの場所にいたからだもんな。別に誰だってよかったんだろ?」
「そ、いうわけ、じゃ、ねぇっ!」
「けど経験がねぇわけじゃないだろ? 現にお前から誘ってきたし」
「ーーな、んだよッ、それ……いま、関係ない、だろ」
「俺だってお前みたいなビッチに誘われてなけりゃ、今頃ゲーセンでシューティングのスコア更新してたんだけどなぁ」

ひでぇ嘘だな、と自分で言っておきながら心の中で思う。
それでも、辛そうに顔をくしゃくしゃにするローを見ると止まらない。
止められない。
ポロポロと遂に涙を零しながら、「それ、は、悪かったって……。な、……もう、いいだろっ? 」とローはキッドの目を覗き込んだ。

「ずっと、我慢してて、……辛いか、ら……ユー、ス、タス、屋……」

そう言って猫が甘えるかのように頭を押し付けてくる。
普段、無口で、クールで、優等生なこいつが。

「ーーたっくよぉ……ホント、マジで。お前卑怯だわ……」

大きくため息を吐いて、キッドはローを持ち上げると、自分のモノをローの中に突き立てた。

「アァっ、あ、あああぁッ!!」
「……ッ、やべ……中、熱……」
「いぁ、ッああぁ! アっぁあ!」

裏筋でグリッといいところを押し当てると、ローの中がキツく締まる。ぬるぬるとして熱い内部でキッドもあまり長くはもたない。

「あ、ユース、タス屋っ! も、イくッ!」
「……っイけよ、ほら」
「あ、ぁ……っあぁあアぁああッ!!」

ビクビクと痙攣し、一際高い嬌声をあげてドプリとローは射精した。そのままキッドもローの中に出す。
体内に広がる熱に震えながら、「中は、やめろっつうの……」とローは悪態をついた。


prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -