小説 | ナノ


▼ U

ジメジメと湿った空気の肌寒さで目が覚めた。
時計で朝が来たというのは分かるものの、灰色の雲が空を覆っているためその実感が無い。
身支度を整えてフロアに向かう途中、ドフラミンゴに会った。

「よぉ、ロー」
「……おはよ」

昨日のアレが一瞬、ローの脳内をかすめたが気に留めることはない。
あんな情事は彼にとって日常茶飯事なのはよくよく理解している。
ドフラミンゴは廊下の窓を覗いて、
「今日は天気が悪いな」
と呟いた。
返事をするにもめんどくさいので無視をすると、今度は「こりゃヴェルゴの機嫌も最悪だな」と彼は下卑な笑みを浮かべた。

実際、そうだった。

雨は降らず、かといって快晴というわけでもない中途半端な天気に、肌にまとわりつく鬱陶しい湿度は人のフラストレーションを著しく上げるらしい。
おかげでこの日はいつもよりヴェルゴに『折檻』という名の暴力を散々くらわれた。
そのせいでヴェルゴからの最後の一発ーー「さん」付けしなかったためのーーを受けた時には、既に空が黒くなった後だった。
殴られて傷ついた箇所を自身の能力、オペオペの実の力で治療をし、書庫で昨夜の本の続きを読もうと重い身体を引きずって歩く。
だいぶ傷は治りかけてはいるものの、時折鋭い痛みが突き刺さる。

(ーークソッ! ヴェルゴの野郎……)

眉間にシワを寄せ、ローは書庫に入って昨日の本を手に取る。
重々しい表紙を開き、さあ読もうかと意識を集中させた時だった。
突然、自分を覆い隠す影が現れた。

「こんな時間まで勉強か? 感心するな」
「……別に。……なんでドフィがここにいんの?」

ドカドカとうるさい足音を立てながらドフラミンゴは本棚に寄りかかった。
「お前に用がある。ちょっとこっちに来い」
声をかけられてしまったので、仕方なくローは本から顔を上げた。

「なに」
「フッフッフ……。楽しいゲームをしようと思ってな」

そう言った次の瞬間、ドフラミンゴはローの肩に手を回した。
暖かい指先が首筋を撫で、思わず鳥肌がたった。

「勘のいいローなら分かるだろ?」

まさか、とローの脳内に一つの恐ろしい仮定が思い浮かぶ。

「…っ、俺は本が読みてぇ!」
「それは後にしろ。ついて来い」
「俺に命令するんじゃねぇ!」

ドフラミンゴの手を振り払い、ローは逃げようとしたものの、すぐに身体が硬直してピクリとも動けなくなる。
ドフラミンゴの能力ーーイトイトの実の力で、ローの身体はもう既に自由を奪われてしまった。

「ロー、お前に拒否権なんてねぇんだよ」
「…は、なせよ……!」
「フッフッフ…離せと頼まれて離す馬鹿がどこにいる?」

ニヤリと唇を大きく歪ませてながらドフラミンゴは片手でローを抱き、自室のドアを開けた。


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