SuperBloodMoon






「……?おかしいですね、完全に日が昇ったというのに魔力が制御できない……」


 そう言いながらガロットはステンドグラス越しに空を見上げた。薄暗かった空も今では青空に変わり、日は完全に現れているというのにガロットの姿は未だ悪魔のままだった。
 月が出ていなくとも悪魔の姿を取る事は出来るのだが、それは勿論女の姿をしている時同様に己の意思で成り変わるのだ。少なくとも今の状況は違っていた。まだ腕の中にいたベルホルトも今では視界を完全に取り戻しガロットと同じように空を見上げている。


「……やけに、月が大きい」
「月が?……何かあるのでしょうか」


 意識はどうやら普段の日常の時と変わらないようで、落ち着いた様子でふむとガロットが困ったように米神に指を沿える。できれば早くシャンが帰りを待っているであろう屋敷に戻りたい所でもあるし、今のこの状況がどういう事なのかも調べたいのだが下手に教会の外に出てこの姿を見られる訳にもいかない。ベルホルトもどうやら同じことを考えていたようでいつしか視線は空からガロットへと向けられていた。


「ガロットは暫くこの教会で待っていてくれ。私は騎士団を無断で抜け出してきたことを詫びに行かねばならないし、それと一緒にシャンへの説明やこの今日の不可思議な月の調べ物をしてくるよ」
「しかし……、………いえ、申し訳ありません。身体がお辛いでしょうにご迷惑をお掛けしてしまい……」


 止めようとしたがしかし今のガロットには何一つ手伝えることはなく、眉尻を下げながら謝罪する。するとベルホルトは柔らかな笑みを浮かべ気落ちする従者の肩をそっと叩いた。


「そんなに思い悩まないでくれ、言っただろう?君が出来ないことは私がすると」
「……はい。ですが、どうかご無理はなさらないで下さいね」


 そう言われてしまうと何も言えず、しかしどこかむず痒いような幸福感を感じながらガロットはベルホルトの身支度を手伝い、辛いであろう腰元を撫でながら教会を後にするのを見送った。






教会内の散策をしたり、仮眠を取るなどしながらベルホルトの帰りを大人しく待っていたガロットだったが、気が付けばもう日も落ち始めていた。また薄暗い夜が始まろうとしている。
念の為にとランプ代わりの腕輪にも魔力を改めて入れ直しベルホルトに渡してはいるが、どうにも不安である。夜が来ている事もあってかそわそわと落ち着くことが出来ない。教会の奥の部屋から出て祭壇のある場所に戻るともう月が出ており、月明かりがステンドグラス越しに落ちている。思わずその光を辿るようにガロットは視線を上へと向けた。
通常時よりも格段に良くなった聴力が、主のものであろう足音を微かに拾った。教会の扉を開き、こちらに走って来ている。


しかし視線を空から離す事が出来ない。
いつしか口元は緩やかに、そして無意識に弧を描いていた。



「ガロット、大丈夫か!?月の事を文献で調べてみたが、今日の月は通常より月明かりの強いスーパームーンと皆既月食が重なる日らしい…………、……?」













うっすらと己の主の姿が見えた気がした。



しかしそれから、ガロットの意思は完全に途絶えた。





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るる様宅ベルホルト様(@lelexmif)


お借りしました!



2015/09/29

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