思わぬ想い
ビター、ミルク、ブラック。
うん。色々迷ったけれど、やっぱりこれが一番彼に似合う気がする。
「んー…喜んでくれるかな?」
真っ白な紙に白のシルクのリボンで綺麗にラッピングして貰って。
にしし、と密かに笑い声を零しながら店を出ていく。
目指すは白い、綺麗な鏡の彼の店へ。
そっと瞳を閉じてアリアはその場からテレポートした。
さて、今日こそは驚かせてみせるんだ!
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ふわりと移動した先にいたのはお目当ての彼の背中で、アリアは目の前に見えた白に間髪入れずに飛びついた。この前は色々考えている間に悪戯が失敗したから、今度は素早く見つかる前に。
「…やっほ!トゥーヴェリテ!」
「んんっ?…あぁ、ふふふっ。アリア君か。」
しがみついた背中から一瞬驚いたように固まるような感覚が伝わった。しめた、とにんまり笑ってそのまま相手の顔を覗きこんでみるがその顔はまぁなんとも綺麗な笑顔で。むしろいつも以上に眩しく見える。どうやらまたも計画は失敗したようだ、ぱちりと合ったトゥーヴェリテの瞳がにこやかに細められる。今日は上手くいったと思ったのだけれど。
「うーん…まぁいいか、はいコレ。なんだかここではプレゼントを渡す習慣があるんでしょ?」
失敗したことは引きずらない。アリアは抱き付いていた背中から離れ、手に持っていた包みをトゥーヴェリテに差し出した。
「これを僕に?…ふふっ、丁度良かった。僕もアリア君に渡したい物があるんだよ。」
ありがとう、と渡した包みを受け取ったトゥーヴェリテがそれを丁寧に机の上に置けば、そのまま傍に置いていた何かを手に持ちアリアにそれを差し出して来た。綺麗な漆黒色の箱と、紫の蝶とリラを模した繊細な鍵。どきり、と僅かに鼓動が高鳴る。
いやいや、そんな、そんなこと。
脳裏によぎった言葉を振り払ってアリアはそれを受け取る。手に取って改めてその美しさに思わず息が零れる。綺麗。
「…開けてもいい?」
「うん、勿論。」
鍵を差し込みかちりと開いた音を聞き、蓋をそっと開く。
その瞬間に流れて来たものは、見えたものは。
大好きな音楽と、黒と、自分と、白い愛の言葉。
「アリア君。」
「あ、あ…え、えぇ…っ!?」
ぼっ、と顔に火がつくような感覚、いやおそらく顔は真っ赤で。心臓も先程とは比べ物にならない程に早鐘を打っていて。
目の前の彼の顔が、なんだか恥ずかしくて見れなくて。
思わずテレポートをして逃げ出した。
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「うううぅぅ…」
日も落ちてランプだけがちらちらと辺りを照らす。
逃げ帰った宿の一室でアリアはひとりベッドの上で膝を抱え、トゥーヴェリテから貰った箱を開きその愛らしい音色を聞いていた。未だに顔の熱が取れない。
__ 僕は君に恋をしています ___
中に入っていた白い紙を眺めながら深いため息を。胸がぎゅうっと握られてしまうようなこの感覚は、もう。
「あああぁもう…敵わないなぁ…」
どんなに悪戯をしようとも、いつもそれ以上に驚かされて。
いつでも余裕を含むようなその表情を崩したくて。
それでも余裕を奪われるのはこちらばかりで。
もっと色んな彼を知りたくて。
これは。
この気持ちはきっと。
「……ああぁっ!?」
ぱっと思い出したように顔を上げる。
そう彼はきっと花言葉を知っている。
いや、もしかしたら偶然だったのかもしれない。気が付かないかもしれない。
買った当初はそんなつもりで送ろうとした訳じゃなかったけれど、今となってはそっちの意味合いの方が大きいのかもしれない。
いや、だけれども。
「……私は次からどんな顔してトゥーヴェリテに会いに行けばいいのさ…!」
耳まで赤くなるのを感じれば、うわああぁと恥ずかしさに悶えるのを耐えるようにアリアは毛布に潜り込んだ。
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白い包み紙に白のシルクのリボン。
その中身は四葉のクローバーの形で作られた、ホワイトチョコレート。
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四葉のクローバー
「Be Mine」(私のものになって、私を想ってください)
「TrueLove」(真実の愛)
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レターズフェス中のお話。
みそさん宅、トゥーヴェリテさん(@misokikaku)
お借りしました。
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