『当機はまもなく離陸いたします。安全のためシートベルトをーーー』アナウンスのあと、ゴゴゴゴゴ……という音と共に傾く機体。重力に伴って背中が強くシートに押し付けられる。角の丸い窓の外をちらりと覗くと自分の住む街がみるみる小さくなっていった。
自分の家のものよりもずっと寝心地の良い布団の中で目を覚ました。ふかふかの布団と真っ白なシーツ。見慣れない照明と家具、そして隣に見覚えのない男性が寝ていることに気が付くと、心臓が一度大きく跳ねた。それから寝起きの頭をフル回転させて、昨日の出来事をなんとか思い出す。
千冬くんとは、多分身体の相性が良いんだと思う。あと、彼はなんかこう…上手い。元カレよりよっぽど。我ながら最低な思考だとは自覚している。普段なら1回したらもう1週間ぐらいしなくてもいいやって思うのに、この3日だけで一体何回したんだろう。はしたなく何回も求めて千冬くんに嫌われてしまわないかと心配なるぐらいだった。