交点/紫雲院素良

 
なんだかんだで素良くんを半分預かることになってしまっていた。
どうせうちのデュエル塾では門下生を下宿させているのだから、ひとり増えたところで構わない。
むしろ彼は母上にお得意の営業スマイルでにっこり笑って、且つお手伝いでライフポイントを稼ぐのだ。
もう1万くらい貯まっているんじゃないだろうか。つよい。

そのくせ遊矢の家に勝手にお邪魔してひょっこり戻って来る。
何処に行ったと探して、振り回されるこちらの身にもなってほしい。

また、いまも彼は勝手にお菓子売り場へと歩を進めようとする。
じとりとぴょこぴょこ跳ねる毛先に視線を落として彼の名を呼ぶ。

「素良くん。」
「ねー、いいじゃんー。おつかいのお駄賃ってことでー。」
「だめだめ。ってゆーか先週に箱で買ったロリポップどうしたの。30本くらいあったでしょう。」
「ええー、あんなのあっという間になくなっちゃったよお。それにほら! これ新製品だよ! なんと小さいサイズが4本入り!」
「ワオ。ヘビースモーカーもびっくりだね。そのうち棒から煙が出てくるんじゃない。あー、わかったわかった。その代わり、荷物持ってよね。」
「やったあ! もー、ボク最初っから持つつもりだったよ。女の子に重い荷物持たせたりなんてスマートじゃないしー。へへっ、今度はタワーになってるやつがいいなあ。」
「黒ひげ危機一髪みたいなやつ? そんなのお小遣いでなんとかしてよ。」
「んー、じゃあボクの誕生日プレゼントがいいなあ。***からのさ。」
「誕生日、あるの。」
「あるに決まってるじゃん。人をおばけみたいに、失礼だなあ。」
「……だって、何も知らない。君はすぐどこかへ行っちゃいそう。」
「ボクは***と一緒だよ。約束だ。だから祝ってよね。」

夕陽が家路にむかうふたりの影を長く伸ばして、電信柱と交差した。
青猫がその黒い影を踏み去って空き地の土管へと姿を消した。

君と私の交点は一瞬で、君は私の心に鮮烈な青色を残して消えた。
君と歩いたあの日と同じ時間、空き地の土管の上に座って私は君を待っている。
みゃあ、と鳴き声のした足元を見下ろすと、土管の中にあの青猫が潜るところだった。
土管が君の居る世界へと繋がっているような気がして、猫を追ってくぐり抜けたが、穴の先には橙の空が空しく見えた。





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