放課後レイプ/真月零


「もしもし、***さん?」
「ああ、どうしたの。珍しいね。」
「お話があるんです。明日の放課後、時間ありますか。」

 真月に呼び出された。しかも他のみんなには内密にって一体どういうことなんだろう。私は言われた通りに旧美術室で、埃の被った机に腰かけて待っていた。言われた時刻には少し早いが掃除当番の仕事がさっさと終わってしまって暇になったから、どこかをうろついて時間に遅れるよりはこうして待っている方がいいと思った。手持無沙汰にDパッドをいじっていたら突然画面に砂嵐が起きた。

「あっ、あれ、……やだ、どうしよ。」

 もしも真月が遅れるとなったときに連絡が取れない。それだけではなく、家族に遅くなるかどうかも言っていないからもしも話が長引くようならば心配してメールが来るかもしれない。

「あーあ、修理めんどくさいなあ…。」

 砂嵐の画面がうるさいので電源を落としてしまうと、完全にすることがなくなった。ごろりと机に横たわっていると睡魔が襲ってきた。真月が来たら起こしてくれるだろうし、それまで少々うたたねしていようと目を閉じた。

 動けない、そんな違和感を感じて目を覚ましたら、目の前には人のよさそうな笑顔をした真月がいた。

「お目覚めですか。」

 にこにこと何が楽しいのか、いつも浮かべるのとまったく同じ笑顔でこちらを見つめている。しかしなぜ私は両手を後ろ手に縛られているのか。動きにくさの原因はこれか。

「真月……。」
「はい。」
「これ、お前が…。」
「ええ。よかれと思って。」
「……ほどいて。」
「ダメですよお、せっかく縛ったのに。いやー、寝ていてくれて助かりました。もし起きていたら一苦労でしたでしょうね。」

 苛立ちと同時に肌が粟立つのを感じた。真月は笑った表情を張り付けているだけで心から笑ってはいない。なにより自ら縛ったことを認めてこの落ち着き様、おかしい。これから何をされるのかという恐怖がじわじわと全身に広がっていった。あのとき寝入ってしまわなかったらこの状況は回避できたかもしれない。が、仮定をいくら考えても埒が明かない。落ち着いて。逃げなければ。連絡が取れないことを心配した誰かが探してくれるかもしれない。遊馬とか。

「遊馬くんなら、鉄男くんたちと街の広場でデュエルしていますよ。」

 心臓がどきりとした。焦りを読んだのかつらつらと話を言葉を続ける。

「皆さんに***さんは掃除当番だってこと知らせましたし。それにこの旧教室の一帯は誰も来ませんよ。さっき先生方が門を施錠していました。つい先日からなんですよ、施錠するようになったの。準備室を使う関係で昼間は開けていますけど、授業の用具を仕舞ったら鍵をかけるようになったんです。人が来ないところだし、いたずら防止ですね。」

 今が何時なのかわからないが、恐らく待ち合わせの時刻とほぼ変わらないだろう。家族が連絡の取れない私を心配して探してくれるという望みは薄い。

「なんで僕がこんなことしたかわかりますか。」
「…………………。」
「よかれと思ってお教えしましょう。」
「…………………。」
「***さん、最近はいつも遊馬くんと一緒にいますよね。登下校も授業中もデュエルだっていつも遊馬くんとじゃないですか。」
「…………………。」
「僕、遊馬くんも***さんも好きです。でも、***さんはいつも遊馬くんのことばっかり。だから、あなたより先に遊馬くんに引っ付いていれば遊馬くんにあなたを独り占めされないかなって思ったんです。でもダメでしたね。それじゃ不十分でした。だから、今度は遊馬くんがあなたから遠ざかるようにすればいいかなって思ったんです。気付いているかわかりませんが……遊馬くんはあなたのことを好きですよ、女の子として。多分、遊馬くん自身も気づいてないんでしょうけれど。……それで、ですね。すでにあなたが遊馬くん以外の人と何かしらの関係を結んでいれば遊馬くんは今までのようにあなたに接することは出来ないはずです。」

 ぎろりと眼光を向けても真月はひょうひょうとした態度を崩さない。今の私の状態では悔しいが何ら抵抗も出来ない。この余裕ぶった態度からするに本当にここは施錠されて人は来ないのだろう。ぎゃあぎゃあと叫んでは返って弱さを露呈することになるだろう。

「怖いですか。……傷つける気はありません。血は出るかもしれませんが。」

 ぞわり。腹を撫ぜる手のひらに感じたのは、強烈な嘔吐。胃がひっくり返りそうだ。幸いに吐かなかったが、吐いてしまえば真月を遠ざけられただろうか。何をされるかなんて話が進むにつれてだんだんと予想できたが認めたくなかった。首筋をつうとなぞる指先がナイフのように冷えていた。派手に机が軋み、真月が腹の上に跨った。制服の下から右手が滑り込む。

「や、め…!」
「よかれと思って、あなたと僕のためですよ。」

 下から胸を持ち上げられぎゅうと握られる。この年にしては発達しすぎた胸が恨めしい。手加減する気はないようで胸の奥のしこりにまで指の感触が伝わる、痛い。

「***さん、したことないですよね…? 僕も初めてなんですけど、なるべく痛くないようにしますから。」

 貞操の危機とプライドが錯綜して目元が熱くなってくる。状況的に誰も助けに来ない。絶望的だ。泣き叫んでみじめな姿だけは晒したくない。隙をついてどうにか…そう考えているうちに制服は胸元まで完全にたくし上げられ下着がカーテンの隙間から射す陽光に照らされていた。

「ふざけんな、真月!」
「ふざけてなんていませんよお、冗談を言う顔に見えますか。」

 普段ならば、見える、と一蹴するやり取りだがこんな状況でとぼけた答えを返してくる余裕が一層恐ろしかった。

「離せ、なんで、くっ…。」
「理由ならさっきの通りです。僕、あなたのこと好きだったんですよ。ずうっと。遊馬くんよりも好きです。」

 手は止められることなくぐいぐいと胸を圧迫する。胴をひねって跳ね除けようとすると真月の体が覆い被さってしっかりと机に押し付けてきた。

「ああダメですよ。おとなしくしてください。痛くなくなるように準備してるんですから。」
「ふざけるな! いま痛いんだよ!」
「あ、ごめんなさい。じゃあ…こうした方がいいでしょうか。」
「んっ!」

 ふに、と胸の先端部に直接指が触れた。泣き叫ぶことも我慢していたのに、こんな事で声が出てしまったことに酷い罪悪感を感じた。

「きもちいーですか?」

 嬉しそうな顔で聞いてくる真月の顔を引っ叩いてやりたい、それも両手がこの有様では叶わないが。

「んな訳、やあッ…。」
「ここ好き、ですか…?すぐ気持ち良くしてさしあげますね。」

 ずっと外れなかった目線がふいに逸れて気を抜いたら、胸に唇が押し付けられた。

「ん……ッ!」
「我慢しないで声、聞かせて下さい。はっ、あ」
「やめ、やだやだ、……んあっ!」
「はぁっ、ん、***さん、やっぱり可愛いです。僕、毎晩あなたのこと思って一人で…慰めてたんですよ、こんなあなたの姿を想像して。」
「い、や、んん。」
「脚もぞもぞしてますけど…***さん興奮してますか。」

 馬鹿なことを聞く。屈辱で更に目が潤む。胸から顔を上げた真月と目が合う。今までに見たことのない、目尻が下がってうっとりとした表情だった。芸術品を観て恍惚とする人間に似ている。

「ちゃんと、こっちもしますからね。」

 左手を腰のゴムに引っ掛けて、ずる、ずる、と下着を降ろしていく。太ももをばたつかせて抵抗するが、真月は跨ったまま膝頭にまで下がり私の脚を押さえつけてついに下着を剥ぎ取った。それを理解したら一拍置いて、誰にも触らせたことのないところにぬるりとした感覚。

「ひいっ、…!」
「一応、勉強はしてきましたから。」
「あン、ん、んんっ」
「…声、もっと出して下さい。気持ちいいんですよね。」

 唾液のまとわりついた指で秘所をくるくると撫でている。肉粒を押したり擦ったり、突いたりとあらゆる方法で快楽を押しつける。頭に靄がかかったようになり、そこに断続的に与えられる刺激に理性が飛びそうになる。

「う、ああ、はーっ、はーっ、あふ…。」
「***さん、すごく可愛いです。熱いですよ。もうこんなにとろとろに濡れてます。」

 ぐちゅりと指が差し込まれた。感じたのは痛みだけでなくて、足りないものが埋まったような不可思議な感覚だった。

「あ゛、ひいっ! ああ、んっんっ」
「ああ! そうです、これです! 僕の頭の中の***さんがちゃんと目の前にいて、僕がそういう風にさせてる…! 好きです好き、好き。」
「熱い……ひ、あはっ」
「イキたい、ですか?」
「………。」
「じゃあここで終わりにしましょうか。」
「………ッ!」
「ふふ、もっとしたいですよね?」

 酷薄に目を薄めて、一度止めた指で再び快感を呼び起こす一点を刺激する。

「はーっ、はーっ、し、んげつゥ…」
「はい、***さん。」
「なんで、わたし、ン」
「可愛いからに決まってるじゃないですか。何度も言ってますけど。…最初は遊馬くんたちと仲がいいから同じように仲良くしよう、そう思っただけでした。…でも、勝っても負けても凛として佇むあなたを見ているうちに、もやもやした感情が生まれて…。最近じゃあなたがいない場所にいることさえ辛いんです。あなたを視界に入れていたい、出来たらあなたの視界に僕が居たい……。」

 そこで言葉を区切って、唇が押し付けられた。

「んふ、あ、ンッ」
「はっ、***さ、ん……口の中、美味しいですよっ」

 舌と舌が絡み合って、無理矢理に呼吸をすればだらしなく開いた口角からどちらの物ともしれない唾液がだらりと溢れた。口づけしながらも指はぐにぐにと動いていた。

「も、むり、いく…。」
「はい…! ちゃんと見てますから…」

 指が速くなったと思った途端、今まで感じたことのない衝撃が全身を駆け抜けていった。まるで電気ショックに当てられたようだった。終わった、けれど股の間がびくびくと痙攣を続けていた。淫乱になったような気分で泣きたくなった。

「……すみませんでした。」
「え……。」
「良くないとは分かってましたけど、抑えられなくて…終わってからじゃ遅いですけど…本当に……嫌いになりますよね、謝って済むことではないでしょう……。」
「怖かった。驚いた。真月が別人みたいになったから。」
「……ッ!」
「でも、その真月の気持ちが強くて、それが伝わったから、いい。許す。…私も途中から承諾したようなものだし。」
「***さん…!」
「あは…なんか意識飛びそうだから、暫くしたら起こして…ふぅ……。」

 気怠さから意識を手放す一瞬前に見えた真月の笑みが、また別人のように感じた。最初から、この状況まで読んでの行動だったのか。それを考える間もなく、私は意識を手放した。





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