104/ベクター

冷たい石敷きの床にぴちゃぴちゃと下卑た音が反響する。
女は焦点の定まらない瞳を揺らし快楽に喘ぐことしか出来ない。人間の雌ってのはちっぽけで汚らしい。爪を髪に絡ませ、顔を近づける。


「フッ、フフフ、くひゃひゃひゃひゃ!おい?無理やり脚こじ開けられて突っ込まれて興奮してんのかあァ?ヒャッハハ、売女が、畜生、雌豚以下だなぁ、ヒャハッ、ハハハァ!」
「あ、う、やだやだ、ひぐう、やめ、おねが、あっ、あ、ーーッ!」
「あーあ、***ちゃんはこおんな風に犯されて感じる淫乱だったんだなあ。下の口がぐちぐち言ってんぜえ?聞こえてんだろ、アァ?興奮してんじゃねえぞ、締め付けすぎなんだよ」
「も、むり、やめて……お腹いたい……んんッ!」
「ちいっと突いたら締めてきやがってなァ?……きもちいいですかあ、***さん」
「……!や、め、て…その声……やだ…」
「はぁ?真月クンは嫌いになっちまったかなぁ?***さぁん?」
「ひッ、あ……も、むり……あっ、や、あああッ」
「オオ?!キタキタァ!5回目行くぜェッ?!はっ、ーーーッ!…ああ〜いいねえ、***ちゃんの膣ん中はよお!ごくごく精液飲んで、まぁだ足りませんかあ?きゅうきゅう鳴いて欲しがってなあ?いいぜぇ、もう要りませんって吐き出すまでやってやるよォ、ああ、もう溢れてんなあ、ククッ、……ほら強請ってくださいよォ、***さん僕のこと好きでしょう」


ぐちゃぐちゃに溶けた化粧ごと、涙を親指で拭い上げる。耳元に顔を寄せ、しゃくりあげる呼吸の喉が上下する音も漏らさないように耳を立てる。あっちの姿みてえに口があったらなァ、人間が思い描く恋人みてえに口付けってのが出来たんだ。だが、俺は俺。ベクターはこっちの姿なんだよ。人間の姿で繋がっても、それは到底満足いくモンじゃねえ。生殖なんざ必要ねえし、そもそも外性器だって付いてるわけじゃねえ。細胞をちぃっといじってわざわざ要らねえモンを生やしてんのは全部こいつのためだ。こいつの嗚咽が聞きたいが為。そうとうイかれてやがる。突き上げた拍子に***の右手が握り返してくる。そこに“真月”に向けられていた愛情の残滓を感じた。こいつが好きだったのは俺だった。だが、俺じゃあない。精液で膨らんだ下腹部を軽く撫ぜる。畜生、俺が、俺が人間だったらこんな無様な人間の真似事なんてしなくてよかったんだ。
***が一際大きく跳ねて濁った声を漏らした。締め付けが最高潮に達し、こっちの意識までも持って行かれそうになる。断続的に締め上げられ、最後の一滴まで絞りとられそうだ。


「ひぁ……ふ、ぐすっ……んあ……ァ………」
「お゛、あ……はぁッ、そォんなに欲しいのかよ、淫乱。この!ベクター様の精子注ぎ込んでやるよォ!クヒャヒャヒャ!イキすぎて死ぬんじゃねえぞォ?!死姦は趣味じゃねえからよォ!ヒャッハハハハ!」


最早俺の声なぞ聞こえてないだろう***の体を揺さぶり続ける。てめーが死んじまったら困るけどよォ、俺のモンで腹情死するなら本望だろォ。人間は生まれ変わりってのがあるんだったな。なら、死んだらバリアンに生まれ変わってくるかもしれねえなぁ。このまま首をへし折って殺してやろうか。
ぐにゃりと投げ出された腿を掴み、更に広げる。苛立ちを奥へ奥へとぶつける。腹の中に空しさばかりが広がっていく。







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