イノセンス


ゴウン……ゴウン……ゴウン……ゴウン……
ブーン………ゴウン……ゴウン……


巨大な鉄の拳が一切合切を押しつぶす。
機械の唸り声が脳を揺らす。

ここ、ハートランドシティの中央に鎮座するゴミ処理場はシティのすべての廃棄物の処分を担っている。完璧であるシティから価値がないもの――余剰、汚物――はここで消える。
***がMr.ハートランドに発見されたのは此処だった。

「こわい顔、ね。」

テラテラと光る硝子玉が視界を埋め、思わずのけぞった。
俺の顔を覗きこんできたのは、この「人でなし」の硝子製の眼だった。
きゃはは、あはは、と笑いながら首をぐるんと仰け反らせて俺を見上げる***という女は甚だ不愉快な存在だ。
だが、俺が今感じている不快感以上に、コイツの胸の内では黒い感情が渦巻いているのだろう。

コイツはこのゴミ処理場でMr.ハートランドに命を与えられ、役立たずと放り出された。
***は眉根を寄せる俺など意に介さず、げらげらと哄笑を響かせて手足を振り子にして歩く。
ゆうら、ゆうらと、華奢な作りの手足が鉄橋の上に長く影を引く。

この人形、いや今は***と名乗る女は人でなしだ。比喩や侮蔑でなしに、文字通りに人じゃない。
人形のような、人のような、その中間のような存在らしい。
このゴミ処理場で粉砕される寸前に、Mr.ハートランドに見いだされ、ナンバーズハンターとして第二の生を受けた。
しかし授けられた魂と身体の相性が悪く、人間でも人形でもない半端な存在になったという。

***が元とはいえ、ナンバーズハンターとして見出されたという事実を今も疑ってしまう。
こいつの中は確かに人間への憎しみに満ちているはずなのに、どこか抜けていて、さながら道化芝居の人形を思わせた。





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