exclusively/真月警部

 両腕の中にすっぽりと収まり頬をバラ色に染める***が愛おしい。時計がチッチッと触れ合っている時間を刻印していく。鼻孔をくすぐるはいつもよりも甘美な香り。この時間のために官能的なものに変えたのだと思うと、愛おしくて堪らない。そう、彼女の全てが私のもの。彼女の行動も全て私のため。髪を食み、首筋に吐息を吹きかけると、首をすくめて私の腕にしがみ付く。カーテンの合わせ目から夜が忍び込む。用済みとなったシーリングライトのリモコンを投げ捨てる。
***を横倒しにベッドに押し付け、唇に舌を這わせる。

「今日もいい子にして待っていたか?」
「…はい」
「あまり一緒にいられなくてすまないな…」

 自分で口にして置きながらその事実に不満が募り、***を掻き抱いた。背骨が軋む。***の口から呼気の塊がごぼりと漏れる。眉根を寄せ苦しげな顔は絶頂を迎えた顔によく似ている。赤いキャミソールをまくり上げ、白い胸を口に含む。***はひあ、と小さく声を上げ私の頭に手を回し、ぐいと胸に押し付ける。軽く噛みながら舌先で突くように舐める。頭上でああ、という呻き声が止まない。***の腕を解き、首を掴んでベッドに押し付ける。両腕は背中に回し、手首をひとつに纏め握った。痛い、と身をよじる様子が可哀そうで、しかし、それが可愛らしい。背骨から首までを下から、ずず、と舐め上げる。
 首筋にキスをしながらスカートの下に手を潜らせる。腰のあたりで蝶結びしたリボンが触れた。つるつると滑りのいい生地の上から膨らみを撫でる。脚の付け根に指を伸ばしたところで違和感を感じた。下着の生地が裂けている。つまり、性行為用の下着である。***が私との行為を心待ちにして準備していてくれた、という事実が明らかになる。実にいい気分だ。見えないまま刺激するというのは興奮する。力加減を時々謝るが、寧ろ気持ちを盛り立ててくれる。
 膣口をぐりぐりと押さえつけると***は腰を揺らして一層苦しげに眉を寄せた。あまり丁寧に慣らす余裕は無くなって、早々に陰茎を押し付けた。指先で行ったように膣口を刺激する。先程と違うのは、互いの分泌液が混じり合い、蒸れた匂いがするというところ。入口が開いたところで、いささか固い中に挿入する。肉を割り込み侵入を試みると、熱くなった肉が迫ってくる。数回の往復で膣内も表情も蕩けた。あア、いい、いい、と繰り返す。

「愛してる、…くっ、はァ」
「はい…!うん、あっ」
「こういう時は、何と言うのかな」
「け、けーぶ、が、好きです」
「そうだな、私のことが、…私だけが、」
「はいっ、けーぶが、けーぶだけがっ、すきです、すき、けーぶのです、あっ、あっ、いい、もっと!」
「いい子だ。」

 律動を再開する。先程までよりも強く、深く、捻じ込む。亀頭が残るくらいまで腰を引くと、先だけが肉壁にかかり、きゅっと締め付けられる。子宮口を突くまで腰を押し込めば、頭の横で握り合った手に力が込められた。長く、ゆっくりと肉壁を擦る。

「く、ふ、んあ…、あああ、けい、ぶ……すき、あっ、やあ、だめ、あっ、あん」
「ふ…、どちらかはっきりさせて貰いたいものだな。続けるのか?止めて欲しいのか?」
「ああ、う…、……」
「聞こえないな?」
「……もっと、…、」
「……」
「う…、っ、けーぶのください、気持ちいいのくださ、いっ?!あああッ」

 ずちゅ、と派手に音を立てて一気に突き上げると悲鳴が上がった。
もっと、もっと、と泣き叫ぶ***。快感にすっかり翻弄されてあられもない姿を晒してくれる。シーツに押し付けた胸が横に流れている。脇から左手を差し入れ胸の先端を捏ねる。触れる前からすっかり立ち上がっていたようで、かり、とひっかくと大きく息を吐いて身体を震わせた。そうだ、下もしてやらねば。胸から腹部、下腹部へとゆっくりと指を滑らす。***も何をされるか察しているようで脚を軽く開いた。勃ちあがった肉芽をつまみ、きゅうと指先で擦りあわせる。

「や、やああっ、こわ、こわい!あっ、ああッ、ダメえええっ!」
「欲しいのではなかったかな…?はあっ、…そろそろ出るぞ、***」
「えっ、あん、ああっ、は、はや、も、ゆっくり、ひん!ああ、ああ、いっちゃ、ふ」
「ふ、勿体ぶらずとも、何回でもする時間はある、く、はっ…、いいな…?」
「やあ!あ!だめだめだめっ!けーぶ、もう、い、あああッ、!」
「***、愛している」

 ひくひくと拍動する膣口の感触と、肩口の汗の味を同時に楽しむ。
 私の手の下には***の手、その下には皺だらけのシーツが重なる。ゆらゆらと焦点の合わない瞳の***。手の呪縛を解き、盲者が探るようにベッドの縁を片手に掴む。腕の力だけで這いずるように、私の下から抜け出そうとする。陰茎が抜けると同時に、じゅ、と精液が漏れ出る。瞬間、びくりと動きを止めるが、再び匍匐を開始する。全身ぐっしょりと濡れた肌と相まって蛞蝓か何かに思えた。匍匐する腕を抑え、背中全体に体重を掛けて抑え込む。

「なぜ逃げようとするんだ」
「あ、だって、もう、これ以上したら、おかしくなっちゃう…」
「ははっ、まだおかしくなっていないつもりだったのか?」
「ん、ひどい、けーぶ」
「私から逃げたところで何処へも行けないだろう。…ほう、少し指を入れただけで溢れてきたぞ」
「ああ、きもちいっ、ああ…、けーぶのください、はやくっ、お腹の中、いっぱいにしてください、んっ」
「ああ、しっかり受け取りたまえ、……くっ」
「ああんっ、すきすきすきっ、けいぶでいっぱいになりた、あんっ」

 ベッド端まで這った***を転がし、正面から挿入する。先程挿入した時よりも潤った中は寸分の隙もなく貪欲に私に吸い付く。入れっ放しになっていたD・ゲイザーの通信音が鳴る。二人分のランプが明滅する。***はもう目にも入らず、聞こえてもいないようだ。
 規則的な呼び出し音が熱くなった頭を少々ながら冷やした。熱が冷めたわけではないが。
 きゅうと鳴く膣内に搾り取られそうになる。出ていくのを拒むように締め付けが強くなり痛いくらいだ。少々の痛みと愛おしさを感じ、射精直前で抜き取った、はずだった。焦った為に***の秘所を濡らしてしまった。完全に抜き取る前に出してしまっていたかもしれない。軽く息を整える。放った白濁液と、***の粘液が混ざり合い、蜜溜まりがシーツの上に出来る。
 何のために膣外へ放とうとしたのか。ぜえぜえと肩で息をする***を見下ろすと、じわじわと心に染みのようなものが広がる。これでも耐えた方だと罪悪感に言い訳をする。***に無理をさせて自分のものだと確認するなど、みっともない。***は、私の恋人、私のもの。こうして肉体で繋がりを持つ、心だって私のものだ。君の心臓と私の心臓、二つで一つ。確認するまでもない。愛と呼ばれる糸で縛り上げて、私だけしか見えないようにその瞳に鍵を掛けてしまおう。目蓋にキスを落とすと糸が切れたように***は意識を手放した。
 寝乱れた髪を指に絡める。互いの汗を纏い、ぐったりと肢体を投げ出す***が淫靡で、寝ている間に犯してしまおうか、と至極卑怯な思いに気付く。邪な思いを抑え、***を起こさないようにゆっくりと体重を移動して顔を寄せる。
「…おやすみ。」
 濡れた感触を携えて緩く口付けをした。寝ているとばかり思っていた双眸がばちり、と開かれた。緋色に染まった頬が緩み、唇が笑みの形に綻ぶ。
「…もういっかい、ちゅう、してください」
 サイドボード上のグラスはすっかり汗をかいていた。温くなった水を含み、***の唇を舌でこじ開け注ぎ込む。キスを強請って、キスだけで済むはずがないだろう。いっそ本当に気絶するまでしようか。潤んだ瞳にずぶずぶと沈んでいく感情。柔らかな腿、呼吸のたびに揺れる胸、肉体も心も含めて彼女を手に入れたとばかり思っていた。捕縛されたのは私の方だったようだ。





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