以前の日記に載せていた妄想文の一部です。パラレルとエロ多め。

こぎつね妄想 【完】

2006/11/26

呂布が死を覚悟したとき、

「だんなさま…旦那さま!」

声に目を開くと、遼が呂布を揺さぶっています。しがみついていたのは遼の体でした。

「旦那さま、大丈夫ですか!?旦那さま…!」

ぼろぼろぼろぼろと、どこにそんな水分を抱えていたのか、遼はひっきりなしに涙を流しています。
呂布は辺りを見回しました。呪いの声も痛みも消え、相変わらず月はぽっかりと浮かび、少し涼しい夏の夜の風が吹いていました。

「俺は死ななかったのか?」

遼は何度も頷きました。泣きながらの笑顔が可愛くてくしゃくしゃと髪をなでてやると、ぎゅうと抱きついてきました。
ちくり、と額に痛み。そういえばさっきまで熱くてたまらなかったところです。
指で触れると、

「角が」
「つの…?」
「角がなくなっている」

髪に隠れてはいましたが、呂布には角がありました。ほんのわずか骨が隆起したようなものでしたが、それがなくなっていたのです。
呪いに引きずりだされた熱いものは、鬼の力だったのでしょうか。その力のおかげで呂布は死なずに済んだのかもしれません。

「遼、俺は」

人間になったのかも、と続けようとした呂布は、目を見張りました。
子供だったはずの遼が、大人になっていたからです。

「りょ、う?」
「あっ」

遼も自分の体を見て驚いています。

「遼、だよな?」
「は、はい」

相変わらず耳としっぽをぴくぴく動かしながら遼は戸惑うような声で答えました。

「…呪いの抑圧がなくなって、本来の姿に戻れたのかもな」

少し首をかしげたあと、そうかもしれません、と遼は小さく呟きました。なんだか不安気な顔をしています。

「どうした、遼」
「こんなに大きいの、変じゃありませんか?」

見慣れない自分に戸惑っているのでしょうか。
でも、大人になった遼は、とても魅力的でした。よく見ると遼は何も身に着けておらず、触れたところから体の熱が伝わってきます。

「…確かに、変な気分にはなるな」

変、のところで遼が悲しそうな顔をしたので、誤解を解くために強く抱きしめました。ゆっくりと口付けを落とし、唇を柔らかく食みながら緊張で強張った背を撫で上げてやると、ようやく理解したのか唇を離すころにはその頬はまっかに染まっていました。

「そういう意味だ」
「もう、ばか…」

ふたりは顔を見合わせ笑い合うと、どちらからともなく再び唇を重ね合わせました。


村人たちは呂布を呪い殺そうとしたことを告白しにきましたが、もともとは呂布が呪われても仕方のないことをしたのが発端だったので、呂布も行った非道を心から詫びました。
それに、彼らにもう敵意がないことは、呪いの壷を命がけで呂布から遠ざけようとした村人の存在でわかっていました。


秋になりました。
村は、一面の黄金色に包まれています。
ふたりは山のうえからそれを眺めていました。
稲穂を揺らした風が、遼の髪を柔らかく揺らします。
西にかたむきはじめた太陽が全てを燃えるような色に染め上げるころ、

「来年もまた、一緒に見ましょうね」

稲穂の海を見つめたまま、遼が言いました。

「ああ、来年も、再来年も、ずっと、ずっと見せてやる」

嬉しそうに微笑んだ遼を後ろからしっかりと抱きしめると、遼はふわふわの耳ごと頭をすり寄せてきました。

その毛並みは、稲穂の海に似ていました。瞳の黒は、星空に、唇の赤は、花に。
りょう、とその名を想い描いたときに浮かぶ情景は、遼そのものなのかもしれません。

ふたりはそのいのちが尽きるまで共にありました。


むかしむかしのお話です。





終わっ、た…!
こぎつね妄想の「こ」には"仔"と"蠱"のふたつの意味があったのですひとりよがり!
こんなあほな話をここまでひっぱるとはおもわなかったです自分でも。
でも楽しかった!楽しかったよ!ここまでひとりよがりな萌えはないけど!
張遼が「もうばか」なんて言うはずないのですがこぎつねちゃんだから言っちゃうんですフッフー。

実際に妄想していた時は『呂布殿が大きくなったきつね遼にエロエロなことをする』場面が主で、そのシーンを盛り上げる為の設定として遼が蠱だとか呪いだとかということも考えていたのですが、簡単な設定のつもりだったのに書き出すとこんなボリュームになっちゃうのか…!(それでも色々カットした)
エロエロシーンのために前後を考えて盛り上げるなんて、中学生男子のようでとても微笑ましい。

えと、お付き合い下さってありがとうございましたー!
画像はおとなぎつね遼。またらくがきですが。
おおお、縮小したらすごい劣化ばい…!




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