もしもハム子ちゃんがWHMに同行したら2


●さらに小ネタ

・デクくんが指名手配された
「みど……デクくんが!?」
「ああ。指名手配になったって」
「誤報?それとも、誰かに嵌められたとか」
「かもしれねぇ。どちらにせよ、ピンチなのに変わりはねぇな」
「焦凍くん」
「なんだ?」
「単独行動はダメだからね」
「……わかってる」
「(絶対わかってないやつだ、これ)」



・合流後
「っ、焦凍くん!!」
「……ああ、なまえさんか」
「ば、ばか!!本当おばか!!単独行動しちゃダメって、私、あれほど……!」
「ああ……だから、爆豪と動いてた……」
「そういうことじゃない!!学生だけで動かないでってこと!!なんで大人を頼らなかったのよ……!!」
「でも、プロだからこそ……動けなかった、だろ……」
「だからって子供が動くことはないの!」

 焦凍くんが無理をしてでも友達を助けに行くタイプだってことはわかってた。神野のとき、彼らが爆豪くんを救出しに行ったと担任のイレイザーヘッドから聞いていたし、普段の行動を見ればわかる事だった。結果的に助かり、かつ世界を救った功績は大きいが、何せ結果論だ。大怪我を負った彼──彼らを見て、無理やり手錠でもかけておくべきだったと後悔した。

「リカバリーガールがここまで来てくださるそうよ。それまで、動いちゃダメだからね」
「おう、……なまえさん」
「なぁに」
「俺のせいだって、わかっちゃいるが……泣かないでくれ……」

 焦凍くんはそういうと、私の目尻に溜まった涙を指で掬い取った。包帯まみれの腕が痛々しい。動きがいつもより遅いあたり、よほど無茶をしたのだろう。

「……わかってるなら言わない!!」
「ああ」
「あと動いちゃダメって言ったでしょう!」
「……なまえさん、やっぱ、手厳しいな……」

 控えめに笑う焦凍くんを見たら、怒る気なんて無くなってしまった。けど絶対許してなんかあげないんだからね。



●帰るまでが遠足(後日談)
「ルミちゃん、ただいまー」
「……」
「あれ?……ただいまー」

 オセオンから家に帰ると、ルミちゃんが不貞腐れていた。彼女はソファーの上で寝たふりをしており、表情はこちらからではわからない。フリだとわかるのは、微かに耳が動いているからだった。都合の悪い事があると寝たフリをするのは、ルミちゃんにとっていつものことである。

「これお土産。あとエンデヴァーとか、他のヒーローからもチームアップ要請いただいたから。リストまとめておくから時間ある時に見てね」
「……」
「本当はお昼頃帰ってくる予定だったんだけど……向こうでいろいろあってね。焦凍くんたちを雄英に送り届けてから来たの」
「……」
「だから遅くなっちゃった。夜ご飯食べてないでしょ?ごめん、うどんでもいい?」

 そう言うと、ルミちゃんは小さな声で何かを呟いた。常に溌剌と話す彼女にしては珍しいボソボソとした声。なぁに、と聞き返せば、ルミちゃんはのっそりと起き上がる。でも決してこちらを向いてはくれなかった。

「……そんなに楽しかったか」
「うん?まあ楽しいこともあったけど……結構ゴタついたし、どっちかっていうと肝が冷えたことの方が多かったかなぁ」
「そーかよ」
「うん……あ、冷凍庫の作り置き全部食べた?」
「ん」

 私のいない間にルミちゃんが家に来ても良いように、少しだが作り置き……お手製の冷凍食品を置いていったのだ。チンして食べてね、と書き置きまで残しておいたのだから、食べてくれないと困る。「どれが美味しかった?」と聞けば、これまた小さい声で「にんじんのやつ。あと魚のやつは味薄かった」と言われた。実は私も、あれは失敗だったと思っていた。味が薄いだけなら何かかければ良いかと思ってそのままにしておいたが、ルミちゃんは調味料をわざわざかけて食べるタイプでもない。次はもうちょっと塩足すか、と頭の中でレシピを組み立て直す。うどんのつゆは作り慣れているから、考え事をしていても失敗することはないだろう。

「オセオンの料理も美味しかったけど……やっぱり日本食の方が性に合ってるなぁ」
「……」
「2日目の時点で醤油と出汁が恋しかったもん。帰ったらうどんは食べるって心に決めてたの」

 はい、できたよ、と机の上に二人分のうどんを置いた。ルミちゃんは「いただきます」と小さく言って、ズルズルと掻き込むようにして食べる。お腹すいてたのかなぁ、と横目で見ながら私もうどんを口にする。口にして、少し止まった。

「……味、ちょっと濃いね」

 明らかに味がいつもと違う。うどんのつゆで失敗なんて今までなかったのに、きっとオセオンでの味付けが抜けてなかったのだろう。向こうの濃い味に慣れてしまったせいだ、きっとそう。
 ルミちゃんは私の言葉に「ちょっとな」と言って、それでもつゆまで飲み干して完食した。気持ちの良い食べっぷりに、やっぱりお腹すいてたのかなぁと考える。

「ごっそさん」
「はーい」

 その割におかわりもせず、いつもなら机に放置していくお皿をシンクの中へと入れていた。

「なあ、なまえ」
「なにー?」
「風呂入ろうぜ」
「え?一緒に?」
「おう」

 普段、ルミちゃんが私をお風呂に誘うことなんてない。私が大体先に入って、「風呂ってめんどくせ」と言ってぐだぐだしているルミちゃんが私よりだいぶ遅れて入ることが多い。たまーに会敵してドロドロになった時は、私が無理やり風呂場に直行させている。それでも今日みたいに、彼女が自分から私を誘うこともある。……だいたい、喧嘩の後が多いのだが、今日の場合は──。

「ルミちゃん」
「ん」
「次はちゃんと直接言うようにする。ごめんね」
「おう」

 私も悪かった、とルミちゃんが呟いた。……明日のご飯はにんじんの炊き込みご飯にしてあげよう、仲直りの印ってことで。



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