私ヒルチャール


 かっこいい人だなぁ──遠巻きに、異国とこの国が融合したかのような服装を纏った男を見遣る。仮面の隙間から見ても見目麗しい男は、棒のようなものを手にして草原の中を歩いていた。
 そう言えば仲間から、最近妙に強い人間らが多くなったと聞いた。なんでも旅人とか呼ばれる人間が、各地に散らばった強い人間と交流を持つようになったとかで……なるほど、彼もその集められた一人なのだろう。

(あ、)

 ふと、金髪の男と目があった。私は目があった瞬間にどうしようもない気持ちに襲われる。居てもたってもいられなくなって、走り出したくなるような感覚だった。彼も私と同じだったのか、私を見て一目散に駆け寄ってくる。ああ、近づいてくる。足が止まらない。これは運命なのかもしれない。手足をばたつかせる私とは違う言語を彼は口走る。たぶん、異国の言語だろう。

「お─がま──るよ」

 彼は突然私に長い棒のようなものを突きつけ、私に迫る。え、待って、なんで、何して、なんでそんな目で見るのよ──言っても彼は聞いてくれなくて、肉体を切り裂く音と、何かが落ちる音がして、目の前が真っ暗になった。




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